表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

57/380

第57話 ギラン将軍の憂鬱

 

 ――――新生魔王軍・第1軍団司令部。


「クソがッ!!!」


 2つの浮遊島に挟まれた神殿内、魔王軍復活に伴って浮上したこの前線拠点で、魔導モニターを見ていたギラン第1級将軍は机を蹴り砕いた。


 予定ではもうロンドニアの制圧を開始する頃合いだったのに、これはいったいどういうことだと髪を掻きむしる。

 あの妙な魔導具と戦術の前に、第1梯団は文字通り粉砕されてしまった。


 先見の部隊は7600もいた。それが朝には1体残らず全滅したという報告を受けた時、ギランは眼前の使い魔を消し飛ばしたくなった。

 だが、本当の地獄はそこからだった......。


 彼の束ねる第1軍団は4個梯団(魔族12万体)からなっているが、なんと4万3千体が今日の戦いだけで文字通り"溶けた"らしい。

 王国軍に歯が立たず撤退しようとしたところを、前衛と後衛が入り混じって互いに渋滞。


 そこを、爆裂魔法かなにかで吹き飛ばされ続けたとのことだった。


「第2次攻撃だけで我が軍団の3分の1以上が消滅......!? ありえん! なぜここまで一方的なのだ!!!」


 こぶしを握るギランに、ひっそりと影が近寄る。


「これはこれは不幸そうで......戦況はあまり芳しくないようですな、ギラン将軍?」

「ヒューモラス様......いえ! 我々は現在も優勢です!! あの程度の防衛線、我が軍団ならすぐにでも突破できるでしょう!!」


 情報が錯綜していて、ギランもまだ具体的なことは理解できていない。

 敵の戦力は未知数......、偵察すら全滅したこの状況では何もかもが闇に包まれている。


 だがまだ数の上で攻勢は掛けられる、援軍を含めれば今度こそ突破は可能だ。


 そう信じて止まないのは復活前、王の間にいた金髪の少女に言い放った言葉のせいだった。


『敗北主義』。


 あの時ぶつけたセリフが、そのままギランの肩に重圧としてのしかかっていたのだ。

 魔王様のためにも後には引けない、せめて【始まりの町】だけでも落とさねば......。

 ここまでの準備も犠牲も、何もかもが無駄になってしまう。


 せっかく第1級将軍に選ばれたのだ、ここで無能として去るわけにはいかない。


「ではギラン将軍、貴方に1つチャンスを与えましょう」

「チャンス......」


 最高幹部の一言に、思わず耳を傾ける。


「吸血鬼王の末裔――――彼女たちを向かわせました、王国にきっと不幸を撒き散らしてくれることでしょう」

「"アイツら"ですか......、制御できるので?」

「妹の方はもう先行していますね、姉の方も次期追いつくでしょう。連中の補給線を攻撃できれば突破のスキくらいは生まれるでしょうな」


 彼女たちが敵を叩いてくれるなら、勝機などいくらでもある。

 ギランは、新生魔王軍の最高戦力が掩護してくれることに喜んだ。


 なにせ、ドラゴンすら殴り倒すと噂の化け物たちだ。

 王国の命運尽きたりと笑ってやる。


「そういえばヒューモラス様、このあいだ冒険者を1人捕まえていたようですが......何をするおつもりで?」

「あぁ、あの不幸な追跡魔くんのことですか。彼にはこれから幸せになってもらうのですよ、美しき禁忌の術によって――――」


 不気味な笑い声がこだました後、黒い影はそのまま姿を消していった。

 ギランは一息つくと、来たるべき時に備えて第3次攻撃の準備を開始した。



「こんなに投資したんだ、もう後には絶対引けない......!」

っという状態ほど怖いもんはありませんね

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ