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第56話 豪胆な彼女は、しかし以外にも打たれ弱い

 

 これは何かの冗談か? 基地へ戻る装甲車内で俺はステータスカードを凝視していた。

 レベル73......、冒険者ならトップギルド待ったなし。

 学院時代にうわさで聞いたアルナ教会の聖騎士とやらにも、名を連ねることができるレベルだ。


 やたら上位モンスターやら上位冒険者、魔王軍幹部を相手してきたせいだろうが、凄まじい上がり方だ。


「で、そのレベル70突破特典のスキルってなんなんスか?」


 隣に座るセリカが顔を覗かせてくる。

 無骨で飾り気のない車内にあって、彼女は花のような可憐さを纏っていた。


「いや、なんか『貫通ショット』と同じで習得するまで何かわからないんだ」

「じゃあサッサと習得しちゃいましょうよ」

「おいおい焦るな、お前にはわからんか? この何が入ってるかわからんサプライズボックスを開ける前のドキドキ感が」

「全っ然!」

「おぉそうか! じゃあお前の見えないところで開けるかな!」


 開 戦。

 狭い車内で取っ組み合いがスタートした。


「いじわるしないで見せてくださいよぉ! エルドさんのケチ! 空薬莢! 折れた銃剣!」

「なんだその悪口は!? ってか全部いらないやつじゃねえか、もう決めた! お前の前では絶対開けねえ!」


 俺とセリカのくだらない喧嘩に、車内で他の兵士が大笑いしている。


「ラインメタル少佐殿の部下は、ずいぶん和気あいあいとしておられる」

「戦争中に笑いを失うのは好ましくないからね、これくらい騒がしくてちょうどいい」

「ハッハッハ、ですな!」


 まぁ確かに、こんなやりとりでストレスを和らげる手伝いができるのなら、お安いもんだが......。


「むぅ.....っ」

「ん?」


 見れば、急に静かになったセリカがそっぽを向いていた。


「おい......セリカ?」

「別にエルドさんのスキルなんか興味ないですし、見なくたって全然いいですし......」


 拗ねやがった!?

 さっきまで爆撃を至近で見てても全く動じなかったくせに、変なところで打たれ弱いヤツだな......。


「はいはい俺が悪かったよ、今は仕事中なんだから機嫌直せって」

「別にいいもん、好きなだけ仲間はずれにしたらいいじゃないッスか......」


 そうだった、こいつは元々冒険者ギルドを追い出されて現在の職に就いていたっけ。

 もしかしたら、仲間はずれとかそういうのがトラウマになってるのかもしれん。


 若干涙目のセリカの頭を、ポンポンと撫でた。


「仲間はずれになんかしないよ、どうせならオオミナトとも一緒に見たかっただけだ」

「それだけじゃ慰めとして足りないッス......」

「ほぉ――――いいだろう、なら記念すべき初給料日に何か好きなもん奢ってやるよ。これでどうだ?」

「......じゃあ許すッス」


 チョロいな。

 そう胸中で留め、あんまり高いものが要求されないよう祈っていた俺に、少佐が話し掛けてくる。


「2人共、お楽しみのところ悪いが急な仕事だ」

「何かあったので?」

「あぁ、前線へ物資を運搬し終わってロンドニアに戻っていた列車だが、この辺りで交信が途絶えたらしい。現場に近い我々に捜索せよとのご命令だ」


 なんとも人使いが荒いと息を吐く少佐。

 だが上の命令は絶対だ、なにがあったかはわからないが、装甲車は進路を変更して補給線へと向かった。



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