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第55話 近代国家という名の新たな魔王は、先代の魔王軍を喰い尽くすようです

 

「クソがッ! クソがッ!! クソがッ!!! 勇者の野郎――――絶対、絶対許さねえ......!!」


 部下の大半を失い、プライドも誇りも蹂躪されたギムは血にまみれながら泥を掴んでいた。

 楽勝のはずがどうだ、自分たちを待っていたのはあまりにも残酷な破滅。


 なにをどう誤ればここまで無様な結果になると、ギムは第1級将軍ギランはもとより、野戦司令官ヒューモラス、挙げ句に魔王ペンデュラムすらも心底より憎んだ。


 何が一番槍は一族の誉れだ、これではマヌケにライオンの口へ突っ込んだウサギではないか。


「ギム様! もうじき一緒に森へ入った仲間が到着します。さすれば反撃の機会も必ずあります! ですのでここは一度撤退しましょう! 第1梯団はもう......壊滅です」

「あぁ......わかってる」


 絶対に許さない、このような仕打ちをした勇者を――――その部下たち全員を地獄へ落とす。

 ギムは名誉と誇りを捨てし人間をこの世から根絶すると誓った。


 彼は魔族の中でも、騎士などが持つ敢闘精神は好きだった。

 女をいたぶることに躊躇ない彼でも、剣と肉体をぶつけあう本気の戦いは大好きなのだ。

 しかし――――――


「この音は......?」


 妙な揺れが近付いてくる。

 その音は、空から接近していると気づいた時には既に遅かった。


「あっ......、あれは!」


 集結した仲間と共に見上げた先には、森全体を影で包む巨大な飛行物体が居座っていた。


 彼はその物体から何かが落ちてきた時、初めて神への祈りを魔族でありながら唱える。


「主よ......どうか救いを......」


 ギム達を巻き込みながら、巨大な炎が森を走る。

 落とされた文明の炎に、祈りの言葉は焼き尽くされた......。


 ――――


「諸君! どうやら魔王軍は火と鉄の試練の前に屈したようだ! 祈りなど無意味!! 総力戦の前に騎士精神など塹壕に埋まった死体と変わらん!!!」


 少佐が火の粉を前に両手を広げる。

 森を見渡せる高台で、俺たちは次々と『ナパーム弾』を落とす飛行船を眺めていた。


 ワイバーンのいなくなった空で、王国陸軍の航空艦隊がゲリラ化寸前の魔王軍残党を燃やし尽くしているのだ。


 マジで思う、絵本にすら出てくる高貴な勇者様はどこへ行ったんだ......?

 いや有利なのは良いことである、現に俺たちの受けた被害はゼロだ。


 王国のこれまでの備えも称えるべきだろう。


「地上より爆撃効果確認、引き続き掃討せよ」


 爆撃誘導の兵士が指示し、飛行船は機関銃を火の海となった森へ撃ち下ろし始める。

 爆熱は、神をも呪う言葉となって森を喰い尽くし、魔王軍第1波の壊滅を決定づけた。


「5年前ならこちらも苦戦しただろうが......、いざこうなると一方的だな」


 俺は恐ろしいまでの火力を前にし、思わず汗をかいていた。

 冒険者と魔王軍がしのぎを削った時代から一転、近代国家という新たな魔王が彼らを食いつぶさんとしている。


 そして――――俺もその魔王の一部として......。


「エルドさん、ポケットのステータスカードが光ってますが確認しなくても?」


 横に立つセリカが、眼前の光景を前に俺とは違い表情1つ変えずに声を掛けてくる。


 全く動揺していないのか? この戦場に揉まれて、泥をかぶってもセリカはいつもどおりの様子を貫いている。


 一瞬違和感を覚えたが、セリカは前期・後期教育を終えてレンジャー課程まで修了した兵士。

 俺なんかよりよっぽど軍人として成熟しているのだろう。


「そういえばトロイメライからここまで、全然見てなかったっけな」

「なら新しいスキルかもしれませんね、見てみてはどうです?」


 久しぶりにカードのレベル欄を見た俺は、戦場にありながら思わず声を上げてしまった。

 最高幹部デスウイング、上位冒険者クロム、そして今回の魔王軍と戦ってきた俺のスキルレベルは尋常でない上がり方をしていたらしい......。


 ――――現在の『アーチャースキル』、そのレベルは実に"73"。

 よってレベル70到達によって覚えられる上位スキルの欄が、まばゆく光っていたのだ。


今回は同志から提案されたナパーム爆弾による殲滅案を参謀本部にて熟考した結果、採用に至り使用しました(/・ω・)/


引き続き、感想欄での同志諸君のリクエストは作戦担当官に分析させた後、積極的に使っていきたいとか思っておりますm(_ _)m

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― 新着の感想 ―
[一言] 王国軍の戦闘機ってどうなってるのかとっても知りたいです!同士。
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