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第50話 戦争ムードはとても大事なのです

 

 この日、王国と連邦で2つの似通ったラジオが放送された。


 《同志諸君、我らは再びの脅威に直面している。魔王軍の絶対的な破壊、圧倒的な力がすぐそこまでやって来ていると言っていいだろう、人民よ! 今こそ大社会主義革命の力が試されるのだ!!》


 北西に栄える極寒の連邦。

 そのラジオは猛々しく、扇動するような抑揚で発せられる。


 《私はミハイル連邦の書記長として、人民の――――ひいては連邦の平和を守らんがため、労働者階級のトップとして今日......決断を下した》


 赤色の旗が並べられた広場で、革命の銅像を前に溢れんばかりの人々がラジオに耳を傾ける。

 かつて私欲をむさぼった皇帝を倒したように、次は魔王を倒す番だと扇動は続いた。


 《本日、ミハイル社会主義共和国連邦は、愚かな覇権主義者たる新生魔王軍の侵略行為を阻止すべく、蒼国アルト・ストラトスと共同歩調を取ることとなった! 陸海軍の勇敢な同志たちよ、背後は我々が確保しよう。存分に戦うのだ!》


 飛行船の大艦隊が、【連邦首都モスカ】の上空を覆った。

 その圧倒的な光景は人々を熱狂させ、迫る侵略者に対して断固たる鉄槌を落とせと叫ぶ。


 《大祖国戦争の幕開けである、偉大なる同志の大革命記念と共に、今日という日は、永遠に人民の希望の星となるだろう!》


 ――――


 《全ての王国民へ告ぐ、今日をもって偽りの平和は終わった。我々は戦わねばならない!》


 大陸の東にある魔法王国アルト・ストラトス。

 その国境要塞線で、大量の兵士たちが塹壕に身を潜め、来たるべき時に備えて機関銃を握っていた。


 《かつて我々は屈辱を味わった、魔王に蹂躪され、為す術もなかった。――――だが! 今は違う! 王国は今日という日のために国力を費やしてきたのだ!》


 大砲の弾が運ばれ、陣地内で大量の木箱が開けられる。

 土嚢の隙間から、対戦車ライフルも顔をのぞかせた。


 《先のトロイメライ騒乱において、モンスターの脱走は工作されたものだと判明している。そして軍は首謀した新生魔王軍の幹部と交戦し、これに勝利した! もはや我々は――――無力ではないのだ!!》


 改造した斜面では回転式の要塞砲が旋回。

 あちこちに隣接する高射砲塔は、さながらハリネズミのように銃口を突き出す。


 《立ち上がれ国民諸君! 今度こそ我々は、守るべきものを守るのだ!!!》


 十二分な扇動の甲斐あり、両国は一気に戦争ムードへと突入。

 士気の上がったアルト・ストラトスへ、何も知らない新生魔王軍はとうとう――――その国境を超えた。


扇動、プロパガンダは戦争の必需品ですね!

次回、全面戦争の開幕です。

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