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第48話 あなたの復活した大陸は、もはや地獄の釜となりました

 

 ――――王国国防省・地下戦略司令部。

 今ここに集っているのは、王国軍の頭脳たる参謀官。

 そして、旧魔王領を監視する西方方面軍の司令官だった。


「状況は一刻を争います、2日後の明朝には攻撃が開始されると思って良いでしょう」


 参謀官が長机に置かれた地図を叩く。

 そこには国境線に張り付く師団、航行中の艦隊、偵察のため飛んだ飛行船等が符号として描かれていた。


「遂に復活したか......元勇者、ジーク・ラインメタル少佐の言うとおりだったな」


 参謀次長が感慨深そうにヒゲを撫でる。


「いやはや、あの男が軍に入らなければ今度こそ王国は滅亡していただろう。ようやくこの時が来たというわけだ」


 西方方面軍司令官が葉巻を加えた。


「我らが王は本気だ、全軍に動員を命じられた」

「動きが早くて助かるな、西方方面軍のみでは数的に劣性だ」


 現在、国境線で新生魔王軍とにらみ合っているのは西方方面軍所属の5個師団だ。

 これはあくまで即応した応急の戦力であり、この瞬間も増援の編成は進んでいた。


「南方、東方方面軍より戦力を抽出し、さらに中央軍からも部隊を編成中だ」

「具体的な数はいくらになる?」

「南方、東方、中央......そして西方の本隊が集結すれば――――――およそ83個師団が増援として送られる」

「恐ろしい数だ、5年前の騎士団長が見たらさぞ驚くだろうな」


 目覚ましい速度での軍拡は、アルト・ストラトス王国を一気に軍事大国へと進化させていた。

 これも、魔王に襲われた過去から戦いに備えた結果だ。


共産主義者コミーの動きはどうだ?」

「今のところ条約を守る気はあるようだ。もっとも、いつまで続くかは知らんがね」

「そういえばミハイル連邦とは不可侵条約を結んでいたな。その秘密議定書とやらが切り札か」

「あぁ、笑えん冗談だよ、まさかアカ共を頼りにする日が来るとは......」


 連邦と結んだ条約はただの相互不可侵だが、裏では『王国、または連邦が魔王軍による再びの侵略を受けた場合、ただちに味方陣営として参戦する』という趣旨しゅしの文があった。


「唯一北方から軍を抽出していないのはそういうことか」


 西方軍司令は葉巻の煙を吐き出す。


「当たり前だろう? どこのバカがコミュニスト共を信頼する? 連中は不可侵条約など秒で破ってくるからな。ある軍の参謀がこう言ったらしい――――紙切れは破れても防衛線は簡単に破れないと」

「そのとおりだな、北方方面軍には引き続きミハイル連邦をにらんでもらおう」


 参謀次長は再び地図を見た。


「では鉄道課長、輸送の方はどうだ?」

「問題ありません、西方方面軍の展開はつつがなく進んでおり、鉄道ダイヤも昨日の時点で軍優先のものに」

「軍優先か......牛乳は毎朝届くのだろうな?」

「私の美しく清廉なダイヤにそのようなミスはありません、生鮮食品はこれまで通り王都に届きますよ」


 鉄道オタクは、しかしその腕も確かというわけか。

 あぁ、機動といえばあの部隊がいた。


「レーヴァテイン大隊は即日出撃可能と聞く、国境に近い街のロンドニアへ展開するのはどうだ? 本隊到着まで彼らがいれば街は安心だ」

「彼らは対テロ用の切り札でもあります、首都の守りはどうするので?」


 隣に立つ参謀官が口開いた。


「2個中隊をロンドニアに展開、残る1個中隊を王都防衛につければ支障ない。それに――――」


 机を勢いよく叩いた参謀次長は、興奮気味に叫んだ。


「"あの兵器"を魔王軍に見せつけるためには、それまで気を引く必要がある。彼らはこれから知るだろう――――この大陸が地獄の釜になっていたのだとな!」



【大隊】

これも戦力単位の1つで、通常は歩兵なら1000人くらいの部隊となる。


しかしレーヴァテイン大隊の場合は上記と異なり、300人上限で大隊となっている。

なので、300人中200人をロンドニアへ派遣し、残った100人で王都をテロから守ろうぜという感じ。

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