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第4話 試験の受付は冒険者ギルドで

 

 冒険者ギルドとは、民間から採取なり討伐なりのご要望をクエストとしてこなすことで報酬を得る、いわば冒険者の集う場所だ。

 俺はまだ行ったことがないのだけど、その雰囲気を想像するのは簡単だった。


「カンパ~イ!!」


 賑やかな酒場にも似たそこは、王国でも大手に入る冒険者ギルド。

 名を【オールドブレイズ】。

 討伐クエストを主に扱っているらしいここに、俺たちはやってきていた。


「よおラインメタルの旦那! アンタが来るなんて珍しいじゃねえか! 岩石竜ロックドラゴンでも来るんじゃねぇか!?」

「その時はまた我々に任せてくれたまえ、ギルドマスターは?」

「今ちょうど留守でしてよ、クエスト受けたいなら受付で済ましてくだせえ」

「ああ、ありがとう」


 さすがは元勇者、こういったところでは顔も広いらしい。

 だが、まさか王立魔法学院でも滅多に声が掛かることのない【オールドブレイズ】でのクエストとは……。


「ッ!?」


 突然袖を掴んでくるセリカ。

 慌てて振り向くと、そこには調子に乗ったさっきまでの彼女とは違う、なにかに恐れているようならしくない姿があった。


「おいセリカ……、どういうつもりだ?」

「別になんでもないッスよ……、人混みに紛れて迷子になられると困りますので」

「付き添いの親かお前は!」


 ここへ来る前、少佐にセリカは残っても良いと言われていたのだが、彼女はついてきた。

 ひょっとすると、何かあったりするのだろうか。


「ほら、さっさと進んでくださいよエルドさん。後ろつかえちゃってますよ」

「くっ、コイツは……! まあいい、牽引していってやるよ」


 とりあえず少佐の示すクエストが気になった俺は、未だ袖を離さないセリカを引っ張りながらボードの方へ近づく。


「あったあった! どうだいエルド君、これなんて良いんじゃないか?」


 意気揚々と見せられた依頼の紙には、赤く不気味な異形が描かれていた。


「おいおいラインメタルの旦那……! いくらなんでも初見で【ゴブリンロード】はキツすぎねえか?」

「げっ! ゴブリン……!?」


 冒険者の一言に、俺も思わず声が出てしまう。


【ゴブリンロード】。

 王国に広く分布するゴブリンの上位種で、その凶暴性から上位冒険者でも苦戦すると噂されている大物だ。


「……こいつを倒すのが入隊試験というわけですか」

「せっかくスキルも習得してもらったことだしね、ならレアモンスターをというわけだ」


 なるほど、これなら相手にとっても十分だろう。

 ゴブリンロードは希少種なので、経験値も多く得られそうだ。


「じゃあ君にはさっそくこれを使ってもらう」


 渡されたケースに入っていたのは、雑誌でしか見たことのない最新式の【ショットガン】と、【拳銃】だった。


「これは……」

「お察しの通り"銃"だ。武器の黎明期れいめいきたる我が国では、魔導士用のデータが不足していてね。ついでに協力してもらうよ」


 不敵に笑う少佐。


「ほわあぁぁ……! エルドさんいいなー! それ軍でもまだほとんど配備されていない"トレンチガン"じゃないッスか! わたしもまだ全然撃ったことないのに!」

「マジかよ! ホントに良いんですか少佐? 俺みたいな素人にこんなの渡して」


 恐ろしく無骨なそれは、持ってみると重くズッシリしていた。

 魔剣や魔法杖まほうじょうとは違う、圧倒的な威圧感は銃口をより恐ろしく見せる。


「なぁに、そのための『アーチャー職』というわけだ。そのスキルがあれば後期教育まですっ飛ばして、十分に運用できるだろう。さっそく森へ行こうか」


 アーチャースキル、そして魔剣に代わる新たな次世代武器と噂される銃をもって、俺たちはゴブリンロード討伐クエストへ向かった。


【トレンチガン】

ショットガンという分類の散弾をバラまく銃で、第一次世界大戦の時にその強さからドイツ軍に「条約違反だ!」と言われたりしたとか。

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― 新着の感想 ―
[気になる点] ゴブリンロードは他の小説などではスタンピードの前兆で選択できるクエストではないと思われます。そうでなくても大量のゴブリンが発生するので、D若しくはCランク以上はほぼ全員強制参加のレイド…
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