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【完結済み】外れスキルの不遇魔導士、ゴミ紋章が王国軍ではまさかのチート能力扱いだった〜国営パーティーの魔王攻略記〜  作者: たにどおり@漫画原作
第三章【冒険者ギルド研修編】

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第39話 クエストの合間にひとときを

 

「それッ!」

「ちょっ、セリカさんやりすぎー! ――――お返し!!」

「ぶはっ!?」


 バシャバシャと水を掛け合う2人の女子を尻目に、俺は岩へもたれながら弾倉マガジンへ弾を込めていた。

 空を見上げれば、透き通るような蒼空に薄く月まで見える。


 小川のせせらぎと共に、7.92ミリ弾を弾倉マガジンに込めるカチンッという甲高い音が響く。


 とても居心地の良い空間だ......、もう一生ここにいれるくらいに落ち着く。


「やっ! エルドさんは遊ばないんスか?」

「俺はいいよ、こうして弾込めながら空を見てるだけで満足だ」

「そういえば、魔法学院で出会ったあの日もこんな晴天でしたね」


 言うと、セリカは俺の横に腰掛けた。

 髪を濡らした彼女は、どことなく凛々しい雰囲気がある。


「わたし、こうやって仲間と楽しく冒険に行く日が夢だったんですよ......」

「冒険とは大げさだな、ただの採取クエストだろ?」

「わたしにとっては十分冒険ですよ、こんなの冒険者時代じゃありえませんでしたから」


 俺は持っていた弾倉マガジンを置き、もう一度空を見上げる。


「軍人が冒険者より冒険者らしいとは、面白い時代になったもんだな」

「えぇ......、ホント感慨深いです」


 振り向けば、彼女の瞳からは涙が一筋流れていた。

 こういう時に男が取る行動なんて知らない俺は、無言でそれを拭う。


「ひぐっ、すみません......。わたし冒険者だった頃は雑用ばっかで、囮にされては大怪我したりとかが普通だったから、こうやって仲間とクエスト行くなんて経験なくって......」


 辛い過去は誰もが持つものだ。

 だがそれを乗り越え、ここまで生きてきた人間は本当に尊敬する。

 そんなとっても強い女の子の頭を俺はソッと撫でた。


「そういや、最初は冒険者ギルドに行くのも怖がってたっけ。よく今朝ついてこれたもんだ、お前はそこらの上級職よりよっぽど強いよ」


 グシャグシャと濡れた髪を撫で回す。

 彼女は少し前まで冒険者ギルドを敬遠していた、だが今朝はなんの気なしに俺と同行した。

 十分な進歩だ。


「いっ、1番信頼できる人が......いてくれましたし、あのくらいよゆーデス」

「1番って、こんなミリオタがか?」

「ミリオタだからッスよ、戦車について語らえるのはエルドさんくらいですので」


 ニッと笑うセリカの顔にもう涙はなかった。


「そうか......ほら、オオミナトが呼んでるぞ、行ってやれ。んでもって遊んでこい」

「了解ッス!」


 立ち上がるセリカの背中を見ながら装填作業を続けようとした時、滝の上で何かが光った。

 魔力反応を同時に感じた俺は、とっさにセリカの腕を掴む。


「下がれッ!!!」


 引っ張ったセリカの前に立ち、防御魔法を展開。

 タッチの差で次々に『炸裂ブラスト』の付与された矢が、障壁に刺さり爆発した。


「エルドさんッ!?」

「ギリで防いだから心配すんな! それより来たぜ――――追跡魔ストーカーさんのお出ましだ」


 滝の上で魔弓を構えていたのは、冒険者クロム・グリーンフィールド。

 街で召喚獣を使って俺たちを襲った張本人であり、その照準はまっすぐ俺に向いていた。


「国家のあやつり人形風情が......! 消しとべッ!!!」


 さらに撃ち込まれる炸裂魔法付きの弓矢。

 防御魔法で防ぎながら、後ろのセリカへ叫ぶ。


「オオミナトさんを連れて隠れろ!! あのクソ野郎は俺が始末をつける!」

「......はいっ!」


 攻撃の合間にセリカが飛び出し、最低限の装備だけ持ってオオミナトと共に森へ退避。

 俺はショットガンに非殺傷弾を込めると、滝上のクロムと正対した。


「せっかくの楽しいひとときを奪ったんだ......。覚悟はできてるな?」

「知らないね、君のひとときなど奪われて然るべきものだ」

「ほぉ......」


 ショットガンを後ろに担ぎ、拳銃のスライドを引く。


「ならアーチャー対アーチャー。お前が魔弓なんていう前時代的な武器でどこまでやれるか――――――楽しみだよ!」


 弓が引かれ、戦いの撃鉄が起こされた。


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