第38話 遠征!
元魔王領エルキア山脈、そのふもとにあるという隕石湖を目指して俺たちはあまり深くない森を歩いていた。
場所的には、俺が入隊試験の時にゴブリンロードを倒した場所のさらに奥だ。
当然モンスターが生息しているので、それらを倒しながら進んでいた。
――――ダンッダンッダンッ――――――!!
進行方向にいたゴブリン群をアイアンサイトの中心に据え、アサルトライフルで撃ち抜いた。
乾いた音と同時に3匹が絶命する。
「今日はモンスターがやたらと多いな! 側面から回り込む、セリカ援護を!」
「お任せください!!」
残ったゴブリンは10体ほど、セリカの援護射撃でさらに4体が肉塊と化した。
俺が突っ込んできていることに気づいたゴブリンが、弓をこちらへ向けて引いた。
「オオミナトさん! 今だッ!!」
「はいっ! 『ウインド・シールド』!!」
風魔導士のオオミナトが足元に魔法陣を展開、俺の周囲へ風のカーテンを展開した。
放たれた弓矢はあさっての方向へ飛び、関係のない木へ突き刺さる。
俺の防御魔法は使用中その場から動けないので、機動しながら矢を避けれるこれは大変ありがたい。
「ゴギャッ!?」
アサルトライフルからショットガンへ切り替えた俺は、まず1体を至近距離からふっとばす。
残りは5体。2体が突っ込んでくるがポンプアクションショットガンの連続射撃の前に、ゴブリンは断末魔を上げながら弾き飛んだ。
最後の3体へ向け、俺は素早く12ゲージ散弾を放つ。
「『炸裂』」
地面ごとゴブリンは爆発、戦闘は数分足らずで終了した。
俺はゴブリンの全滅を確認すると、林道へ戻った。
「お疲れ様ッス、弾は大丈夫ですか?」
「まだ十分残ってるよ、オオミナトさんはどう?」
「わたしは全然大丈夫です! ってか銃と魔法の共闘ってマジやばくないですか!? 一応ゲームの支援職っぽいこともできたし、やっぱ魔導士って強いんですね」
目をランランと輝かせるオオミナト。
なんというか、やはりこの子は少し変わっているな......。
「さすがは黒髪の魔女!」
「その名前で呼ぶなぁッ! ったく......そんな異名できるくらいならもっとマシな格好が良かった」
「体操服でしたっけ? 良いじゃないッスかそれ、動きやすそうですし」
セリカがヒョイッと前へ出る。
「全然良くないですよ! わたし1人体育の授業みたいで嫌なんですよ。それに親が当時安いからって理由でSサイズを買ったばっかりに......ズボン短くてなんか子供みたいですし」
確かに黒髪は長くて顔つきも端正なのだが、その格好のせいで妙に子供っぽさが強調されている。
「これフィオーレにも子供っぽいって言われたんですよねー」
今回、クロムにボトルで殴られても引かなかったフィオーレという冒険者は同行していない。
いや......する予定だったのだが。
「フィオーレさん、今日はもう出るなって親に止められたんでしたっけ」
「うん、あの子――――家庭が複雑らしいから」
よって、今回は俺とセリカ、オオミナトさんの3人パーティーということになった。
フィオーレとももっと話したかったが、こればかりは仕方ない。
新しい弾倉を銃に押し込み、俺たちは再び歩き出す。
「でも意外でした、この世界にも銃ってあるんですね」
「そりゃもちろん、オオミナトさんの国の銃はどんなのッスか?」
「実はわたしのお父さんが自衛か......、まぁこっちでいう軍人さんで、すこし教えてもらったくらいだけど......」
聞けば、"ハチキュウシキ"だとか"ロクヨンシキ"だとか、妙な名前をしていた。
どこの国かは未だよくわからないが、その国ごとに差はあるもんだな。
「おぉー! この川すっごく綺麗ですよエルドさん!」
そうこうしていると、透明な小川にたどり着いた。
小ぶりの滝もすぐそばにあり、この周囲はとても涼しかった。
「よし、ここらで少し休憩にするか」
銃を下ろし、傍にあった岩へ腰掛ける。
「ショットガンに弾込めしないとな......、お前らも休めよー」
「了解、じゃあ自由時間ってことですよね」
「一応そうだが......って、えっ?」
セリカはいきなりプリーツスカートと上着を脱ぎ捨てると、中に着ていた薄手のシャツに短パンという格好になった。
「せっかくの大自然、満喫しなきゃ損ッスよエルドさん!」
どうやら、水遊びする気満々のようだ......。
アサルトライフル×ショットガンという、ソフトターゲット絶対殺すマン装備良いですよね〜♪