25・超戦艦の艦砲射撃
「前部甲板作業員は至急退避せよっ!! 繰り返す、作業員はただちに退避!!」
「艦長より通達!! これより艦対地制圧射撃を開始する!! 前部砲門開けっ!!」
超戦艦グリフィス艦上に、けたたましいサイレンが響き渡った。
王国が国力の粋をかけて建造したこのこのグリフィス級は、世界最大の46センチ3連装主砲を搭載している。
地球から転移した元横須賀、佐世保海軍工廠の技術者が中心になり、設計から建造までを行った。
1940年代、地球の大日本帝国海軍において運用されていた大和、武蔵からはさらに改良が進められている。
空調や魔導設備の強化、一部対空砲をミサイルシステムへ換装。
さらには後部カタパルトを、V-1ミサイル発射台へ改造していた。
「砲術長、前部主砲2基を用いての“斉射だ」
「了解、こちら既に諸元調整完了しています」
「結構、ただちに攻撃準備! 後部甲板はレーヴァテインの射出を急がせろ」
前部主砲が右へ旋回––––陸上までの距離は、安全マージンを考慮して23キロ。
これは、艦橋から伺える水平線までの距離である。
「艦長……島の迎撃設備は魔導砲、および旧式のロケット砲と思われます。射程はどれも10キロに届きません」
「よろしい、5型特殊砲弾装填! 最終調整!!」
島の迎撃設備が火を吹いた。
グリフィスの前方15キロで、水柱が上がっているも届く気配はない。
これは世界の命運を決する砲撃だ、チンケな模造品で抗うことがいかに愚かか、連中に思い知らせてやろう。
国家が有する最強の組織––––国営パーティーの一撃をもって、神の復活を阻止する。
「グリフィス、攻撃始めッ!!!」
海面が大きくへこんだ。
太陽を思わせる発砲炎と、圧倒的な衝撃波からなる爆音が轟いた。
発射された46センチ砲弾は、放物線を描いて島の沿岸部へ着弾。
「今っ!!!」
巨大な火球が海賊島に膨れ上がる。
発砲時に負けない衝撃と熱が、陣地の砲台を薙ぎ払う。
あまりの破壊力に、まるで小型の核兵器が落ちたようだった。
「特殊砲弾の起爆確認、作動良好です!」
「初めて撃ったが……燃料気化弾がここまでの威力だとは!」
5型特殊砲弾とは、王国が配備する最新の兵器––––名を“サーモバリック砲弾”。
気化燃料を用いた蒸気雲爆発による大規模攻撃で、通常弾頭を遥かに上回る破壊力を持つ。
魔王大戦時から研究されており、実用化に漕ぎ着けたのはつい最近の話だ。
「次弾、修正諸元に従って発射せよ!!」
再びの発射。
ハイペースで叩き込まれるサーモバリック砲弾によって、島は地獄の様相を呈していた。
通常の爆裂魔法を上回る攻撃が、数十発と落ちてくるのだ。
とても耐えられるものではない……。
「最終弾、弾着––––––今ッ!!」
城に近い森へ砲弾が落下。
ジャングルは燃やし尽くされ、トーチカですら跡形もない。
46センチ・サーモバリック砲弾は、島に展開していた海賊のおよそ8割を殲滅してしまった。
「島の対空および対艦装備、漸減を確認っ!!」
「今だ!! 後部甲板作業員へ連絡!! V-1ミサイル発射! 世界へ対する叛逆の剣を撃ち込めッ!!」
「了解!! レーヴァテイン大隊––––射出します!!」
後部レールから、3発のV-1が発射された。
特殊なパルスエンジン音と共に、レーヴァテイン大隊3名が島へ突っ込んでいく。




