21・王国海軍VSエルロラ潜水艦隊
「全艦! 対潜戦闘用意っ! 指定海域へ制圧攻撃を開始せよ!!」
超戦艦グリフィスの側面構造物へ載せられた筒状の発射機から、王国の最新対潜ミサイル『V7対潜弾』が撃ち出された。
ロケットブースターにより目標へ高速で飛翔し、弾頭を空中で分離。
パラシュートによって海面へ着水したアスロック群が、海底で一斉に爆発した。
ミキサーのようにかき混ぜられる海を、海賊潜水母船『アークロイヤル』は必死にいなす。
「クソッ……!! なぜバレた!? 我々3隻は潮流に乗って無音潜行していたのに……っ」
「敵のソナーはこちらの予測を上回る性能です……!! サーナ船長、指示を!!」
「“対艦粉砕魚雷”の発射を中止! 魚雷発射管3番および4番に注水しなさい! ダウントリム10°、進路このまま!!」
エルロラ潜水艦隊は、この海域でアンブッシュを行っていた。
無音で潜み、横っ腹から敵に魚雷を浴びせる算段だったのだが……。
「敵艦隊増速! 同時にアクティブ・ソナーで補足されました!!」
魔甲障壁のほんの僅かなノイズを探知され、攻撃チャンスを奪われてしまった。
だが本島には行かせない……、忌々しい艦隊は必ずここで止める!
女神の代弁者たるエルロラ様が、神に成り代わるために!
「海賊にしては良い判断だ……訓練されている、元軍人かな? これは楽しめそうだ」
潜水艦隊の動きをプロットに起こしながら、ラインメタル大佐はすぐさま指示を出す。
「駆逐艦『スノー・ウインド』、ならびに『ゴッド・ウインド』は我が艦に続け! その他の艦艇は海域を離脱せよ!」
あくまで3対3の勝負へ。
対潜水艦戦において、物量作戦はタブー………よくわかっていると艦長はほくそ笑んだ。
「敵潜水艦隊3隻が転進! 進路130、内1隻は方位240!」
「我々を左右から挟み撃ちにする気だな……両駆逐艦は本艦を中心に東西へ展開! 10秒のインターバルで短魚雷を3発発射せよ」
散開した王国艦隊は、敵の頭を押さえる形で航行––––回復したソナーを頼りに攻撃を開始した。
海賊団側もすぐ察知する。
「高速推進音多数接近! 駆逐艦からの魚雷攻撃です! 船長!!」
「面舵いっぱい!! アップトリム15°! 回避せよ!!」
通常の魚雷であれば、十分にかわせる距離……ナーシャが問題ないと思ったその時だった。
「魚雷から無数の探信音……!? 船長!! 敵魚雷は通常にあらず! アクティブ・ホーミングです!!!」
「なんだと!?」
王国はこの2年で、更新分の魚雷を誘導装置付きに変えていたのだ。
最初のアスロックが無誘導だったので、完全に油断を突かれた形である。
「左舷海中より爆発音ッ!! 2番艦が轟沈しました!!」
「クソ! 敵魚雷は!?」
「ノイズ多数……いえっ! 推進音接近! 雷数3!! 本艦へ接近中ッ!」
秒も使わずサーナは判断を下した。
「3番の囮魚雷発射! 起爆と同時にマスカー(※潜水艦全体を泡で覆い、音を消す装置)を展開して!!」
「デコイ発射! ただちにマスカーを展開します!!」
『アークロイヤル』のエンジン音がインプットされた囮魚雷が航走。
ホーミング魚雷は、泡で消音された艦を通り越して彼方に消え去る。
「やはり機関音は知られていたのね……、洋上の艦隊は!?」
「超戦艦が取り舵30°、駆逐艦Aは25ノットへ増速、現在我々を東西から挟むようにして回頭中……待ってください! 洋上に着水音!!」
「爆雷よ! 機関最大ッ!! このまま突っ切って!!」
『アークロイヤル』の進路へ、次々に駆逐艦搭載の爆雷が投下される。
周囲を爆発に揉まれながら、潜水母船は増速でなんとか生きながらえていた。
「動きを完全に先読みされている……、王国の対潜戦闘レベルがここまで高いなんてっ……ダメージは!?」
「魔甲障壁によって致命打は回避できました、第2居住区に浸水発生、隔壁閉鎖します!」
「こちらソナー! 海面で斉射音、感12! 超戦艦のアスロックが西へ離脱中の3番艦へ向かいます!!」
今度は機関音をインプットしたアスロックが、同じく駆逐艦の攻撃で満身創痍だった3番潜水母船へトドメを刺す。
「そんな……」
けたたましい爆沈音が、海中へこだました……。
「このままだと全滅するわ……、一か八か……賭けるしかないッ! 1番2番、“対艦粉砕魚雷”発射用意!!!」
刺し違えても構わない! 超戦艦さえ撃沈すればヤツらは撤退する。
ダリスとエルロラ様は絶対殺させない!!
「”高速DSRV(深海救難艇)“、全機射出ッ!! アップトリム20°ッッ!!!」




