第35話 招かれざる客
招かれざる客、お呼びでない来訪者たちに囲まれた俺とセリカは、アサルトライフルを手に握った。
「愚かなる人殺しの道具よ! その手に持つは愚者の証か? 大人しく降伏すれば危害は加えん!」
見上げれば、屋根上にローブ姿の男が1人。
俺たちを見下ろすように立っており、その手には召喚用のアイテムが見えた。
「なーんか面倒くさそうなのがいるッスよ、召喚獣出す気満々じゃないですか」
全くだ、なんてバカバカしい茶番なのだろう。
このような正体バレバレもいいところの行動に移るとは、いやはや人間の負の感情は怖い。
「こっちのセリフだストーカー男、この場で投降すれば俺たちは危害を加えない。さもなくば容赦はしない」
空へ向かって1発、威嚇射撃をした。
「ほざけ国家の犬! 権力の傀儡が! これより先は神聖なる処罰の時間! 聖なる鉄槌をその身に浴びるが良い!!」
威嚇射撃効果なし。
アイテムから何体もの召喚獣――――2足歩行をしたワニのような鱗を持つモンスター、『リザードマン』が道を塞いだ。
ゴツい腕を見る限り、あれで殴られたらヤバそうである。
「セリカ、こういう時のROE(交戦規定)は?」
「口頭で警告してから銃口を向け、威嚇射撃をしてなお危害行動があった場合は――――」
俺はセリカが言い終わる前に、ローブ男へ照準を合わせた。
「防護のため武器使用を許可する!」
発砲炎が輝き、路地裏を照らした。
「『誘導!』」
単発で放たれた弾丸が、まずローブの男を貫いた。
案の定、そいつは血を出すどころか土になって消え失せる。
こう見えて魔導士なので大体はわかった、あの喋っていたのは土属性魔法でできた囮。
つまり本物の人間ではないのだ。
「撃ッ!!」
ストックから伝わる反動を肩で受け、猛速で突っ込んでくるリザードマンへ向けて中口径弾を連続で叩きつけた。
「リロードする! 掩護!!」
裏路地内の広場へ出た俺たちは、女神像を囲む石柵の裏へ飛び込んだ。
セリカが撃っている間に弾倉を石畳へ落とし装填、交代する形で顔を出す。
引き金をひくと同時にボルトが前進し薬室へ弾丸が送り込まれ、再び死の暴風が吹き荒れた。
「ゴアッ!?」
正面のリザードマンを粉砕。
側面から回り込もうとする敵へ、俺は柵を蹴って連中の直上へ飛んだ。
「主のためにご苦労さん、そしてさようなら」
下方向へ掃射、リザードマンに深手を与えたあたりで次の矢を撃ち込む。
「やれセリカ!!」
「了解ッ!!!」
銃の先端へ着剣したセリカが、満身創痍のリザードマンへ突撃。
鋭い刺突でまず1体、舞うような体術と合わせてリザードマンを次々に斬り伏せる。
「よっと」
倒れた敵にも容赦はしない、まだ動こうとした者には踏みつけながら銃撃を加えていた。
「クリア、これでなんとか殲滅ッスかね......こっちの損害は?」
「――――ゼロ。まったく街中での召喚獣は厄介極まるな、新兵器のテストにはなったが......」
アサルトライフル。
単発と連射を分けることができ、中口径弾によって高い威力を有していた。
扱いもしやすく、拡張性もあるようなので期待の武器だ。
「しかしこの召喚獣結構いましたね、主は少なくとも高位魔導士でしょう。まぁ......大方察しはつきますが」
ふと、演習場で聞いた少佐の言葉を思い出した。
「『ストーカーには容赦するな』......か、なるほどその通りだ」
弾倉を抜いて薬室内を空にすると、持ってきた水筒で銃身を冷やしてから再びリュックへしまう。
「広報本部へ戻ろう、荷物を取りがてら少佐へ報告に上がる」
拳銃弾を使うサブマシンガンでは、リザードマンのような鱗を持つ敵への対処は難しそうですよね〜。
ライフルなら余裕でイケそうですが、不必要な貫通や跳弾が怖い(;・∀・)