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第339話 イマジナリー・ブレイク

 

 最終決戦が始まった。

 180度から女神へ一点に撃ち込まれる曳光弾が、世界を賑わすように放たれる。

 アサルトライフル、スナイパーライフル、汎用機関銃が弾を残すまいと撃ちまくっていた。


「行くぞッ!!」


 俺とセリカ、少佐とペンデュラムが一丸となって突っ込む。


「キカアアァアアアッ!!!」


 巨大化したアルナの瞳からレーザーが発射される。

 床を溶断し、一直線にラインメタル少佐と魔王ペンデュラムの方へ向かった。


「よっと!」

「むっ!」


 高出力なそれは、しかし空を切る。

 低空で飛翔してきた王国軍ワイバーンが、2人を寸前のところで助けて上空へ救い上げたのだ。


「脇が留守だぜ女神さんよ!」


 隆起した地面を踏み越え、ミクラさんがPTRD1941対戦車ライフルを撃ち込んだ。

 反動をものともせず、すぐさま次弾が発射される。


「せやぁッ!!」


 俺とセリカが、エンピでもって斬撃を浴びせた。

 まだだ、全然浅い......! こんなのでは皮膚の薄皮を破くのが精一杯だ!


 もっと、もっと火力を!


「こっちだエルド! セリカ!」

「はいッス!」


 勢いそのままに転がる。

 着地点には、ヘッケラー大尉たちレーヴァテイン大隊員が展開していた。


「最後の弾だ! ぶっ放せェッ!!!」


 黒煙を引いて発射されたのは、重戦車すら貫く対戦車無反動砲パンツァーファウスト

 特製のHEAT弾が、女神の胸のコアをえぐった。


「行くぞペンデュラムくん!」

「俺に指図をするな勇者ッ!!」


 急激に錬成された氷を踏み台に、ラインメタル少佐とペンデュラムが攻撃を仕掛けた。


 ――――ドゴオォンッ――――!!!


 魔剣と銃剣が叩きつけられる。

 勇者と魔王のダブルアタックに、アルナはたまらず仰け反った。

 強い、さすがの威力......だが。


「くそっ! まだ足りん!!」


 ペンデュラムが叫ぶ。

 転倒寸前で踏ん張った女神が、目を赤色に輝かす。


「セリカ! 来いっ!!」

「はい!!」


 俺は炎と雷を纏って飛び出す。

 少佐とペンデュラムを助けるためではない、そっちにはもっと適任がいる!


「行くよ! お姉ちゃん!」

「うん! わたしたちの全てを――――ここでぶつけよう!」


 少佐たちの後方で、魔力が爆発した。

 吸血鬼エルミナ・ロード・エーデルワイス、アルミナ・ロード・エーデルワイスが全身全霊の魔法を発動したのだ。


「『カオス・エクスプロージョン』ッッ!!!」


 空中の少佐たちを掠めて、合体魔法はアルナへ直撃した。


「キイヤアァアアアアアッ!!」


 甲高い、機械音のような獣の断末魔が響いた。

 間違いなく効いた! 彼女たちが繋いだバトンをここで落とすわけにはいかない!


「行きましょう! エルドさん!」

「あぁっ!!」


 女神が聖剣を地面へ突き刺す。

 それを起点にして、大量の巨大な鎖がヘビのように俺たちへ向かってきた。


「させるか!!」


 真横から飛び込んできた対戦車ライフル弾と、ワイバーンの火球が直撃コースのそれらを撃ち落とす。


「クソビッチに浴びせろっ! エルドくん! セリカくん!」


 まだ大量に残っていた鎖群を、ラインメタル少佐の光属性魔法『アルファ・ブラスター』が一気に消し去った。

 くっそ......、これで少佐の魔力は一気に減ってしまっただろう。


 これは総力戦だ、女神と俺たちの!


「ぶち込め!! セリカ!!」


 最後に残った鎖を俺が叩き落とす。


「はあああぁぁあああああああ――――――――――――――ッッッ!!!!」


 軍人か、はたまた元近接職の意地か。

 彼女が3秒間で放った剣舞の数は、驚異の74連撃だった。


 女神の胸のコアにヒビが走る。


「セリカっ!!!」


 着地したセリカに声を放つ。

 ヤツを倒すにはここで決める以外ない、それにはなんとしても彼女の協力がいる!


「わかってますよエルドさん! 一体いくつの戦場を一緒に走ってきたと思ってるんですか!!」


 彼女は自分のエンピを真上へ放り投げると、両手を握り合う。

 そうだ、俺たちはもう数え切れないほどの戦いをくぐり抜けている。


 デスウィング、クロム、エルミナ、アルミナ、ウォストピア、亜人勇者、魔王軍、ヴィゾーヴニル――――そして天使。

 全員がとんでもない強敵だった、でも俺たちは全部倒してきた。眼前の神を打倒するために!


「『身体能力強化オリオンレイド』!!!」


 セリカの両手をジャンプ台にして、俺は思い切り跳び上がった。

 太陽の陽光が照らし、蒼空が眼下に広がる。


 セリカがさっき投げたエンピを空中で握ると、俺は全身に属性を絡みつかせた。

 ヴィゾーヴニル、お前が最後に俺へ言った願いを――――果たさせてもらうぞ!


「全員! 女神から離れろぉッ!!」


 少佐の一声で、戦場の戦士たちが後ろへ下がる。

 やっぱり最高の上官だ、俺のやることを一瞬で理解したらしい。


「女神アルナ、お前にだけは――――――」


 急降下しながら使用可能な全ての魔法を発動。

 俺は隕石のごとく相手へ指向した。


「負けてたまるかぁッッッ!!!!」


 迎撃が展開される。

 弾幕となった光属性魔法をかわし、俺は全身全霊の一撃を女神へ叩きつけた。


『決めるのじゃ! エルド!!』


 これは平和の防衛なんかじゃない、安寧への挑戦だっ!!


「滅軍戦技――――『イマジナリー・ブレイク』ッッ!!!」


 女神アルナを真っ二つに割った一撃は、これまでの戦いを支えていた世界樹ユグドラシルごと、頂上から根っこまで一気に砕き散らせた。


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[良い点] 特撮の悪の親玉みたいに残った幹部を共食いして巨大化しやがった(フラグ)! [気になる点] やったぜ!(棒) もう生きてはおるまい(棒)
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