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第336話 エルドVSリーリス・ラインメタル

 

「ヴィゾーヴニルの力!? ッ......!! なんでアイツが......! ありえないありえないありえないありえない!!」


 急降下してきたリーリスを俺は正面からエンピで迎撃。

 少しの鍔迫り合いをした後に眼前の天使目掛け、空いた右手で顔にパンチをめり込ませる。


「ぐぶあっ!? がふっ」


 転がった天使から、血と一緒に歯が欠け落ちた。

 力が無限に湧いてくる、ただのパンチですらリーリスにかなりのダメージを与えていた。

 だが......。


「オオミナトの、アイツの痛みはこんなものじゃないぞ」


 怒りと共に、再び炎と雷を身に纏う。


「なんでお前がその力を......! それはわたしが一番欲しかったものなのに! なんでお前なんかがッ!!」

「さぁな、でもこれは俺1人の力じゃない」


 床を蹴ると同時、雷光のような速度でリーリスの側頭部へエンピを叩き込んだ。


「これは、俺とヴィゾーヴニルの合作だっ!! クソッタレなお前らを止めるためのなぁ!」

「ぐっ......あぁ! 合作だと!? そんなものを、そんなたやすく崩れるものを選んだだと!? ふざけるなッ!!」


 リーリスの羽根から無数のレーザーが放たれた。


「はっ!」


 地面へ手を付くと同時に、氷壁を展開。

 強固なそれは至近距離からのレーザー群をアッサリ防いだ。


「氷属性魔法だと!? しかも他の属性魔法を使いながら同時に使用している......!」


 その様子を見ていたペンデュラムが叫んでいた。


「あれはもはや勇者......いや、神の領域ではないか!!」


 大量の氷を地面から発現。

 津波のようにリーリスへ向かわせる。


「ッ!!」


 空中へ待避するリーリス。

 そうだよな、羽根に頼ってばかりのお前なら絶対に上へ逃げる。


「やはりお前は――――――」


 右手に炎、左手に氷を巻きつけて斜めの氷壁を駆け上がった。


「ただのクソガキだ」


 燃え盛るエンピでリーリスを叩き落とす。

 氷の床が木っ端微塵に粉砕し、天使は頭や口から血を流しながら氷塊をどけて顔を出す。


 まだだ、もっと力を制御できるはずだ!


「『上位雷属性魔法レイドスパーク』!!」


 流星群のように、イカヅチの群れがリーリスへ降り注いだ。

 ユグドラシルの頂上部が、激しい爆発に覆われる。


『まだじゃ! あの程度では天使はくたばらんぞ!』


 紋章から聞こえるヴィゾーヴニルの声に「わかってるよ!」と返しながら着地。

 足元の氷を全て溶かすほどの爆炎を纏う。


『おぬしはワシと同一の存在じゃ! 初めてだろうと関係ない! フルスロットルで属性を解放しろ!! 今までの無能の烙印を返品してやれっ!』


 豪炎に続いて、さらに雷を周囲にほとばしらせる。

 無限の魔力と、全能を誇るヴィゾーヴニルのなせる技。

 今まで"外れ"だと思っていたスキルを、俺は遂に完成させた。


 目標は天使、目的は排除。

 軍隊ならこれでいい!


「いっけええぇええ!! エルドさあぁんッ!!!」


 セリカの声を背に受け、俺は魔導士にして数万人分以上の魔力を手にエンピを握りしめた。


「うおおおおぉおおおおお――――――――――――――――――ッッッッ!!!!!!」


 エネルギーを溜め、俺は一気に砲弾顔負けの速度で突っ込んだ。


「くっっそぉッ!!!」


 怒りに身を任せたリーリスが、光の剣を超高速で飛ばしてくるがエンピを叩きつけて地面ごと全て消し飛ばす。


 俺は空中で回転すると、リーリスの脳天へ踵落としを浴びせた。


「がぁ......うッ!?」


 端麗な顔から床にめり込む。

 ひび割れ、ユグドラシル全体が大きく揺れた。


「ゲホッ! ふざけるな......ふっっざけるな!!! わたしが欲した力で、わたしの道を邪魔するなぁッ!!!」


 リーリスが魔力を高める

 なにもない空中に現れた魔法陣から、オオミナトを貫いた光の剣が俺へ何本も突き刺さった。


「がっ!?」


 血がこぼれ落ちる。

 ゆっくりとそれらが消え、傷口だけが残った。


「エルドさん!!!」

「キャッハッハッハ!! バーカ! お前も異世界人同様ガラ空きだったわよ、いくら属性魔法が使えるようになってもしょせん人間、これでチェックメイ......っ!?」


 リーリスの言葉が途切れる。

 なぜかって、そりゃ俺が天使の腕を掴んだからだ。

 金色の瞳は、人外を見るような目をしていた。


「なんちゃってな」


 俺の足元に世界樹模様の紋章が浮かんだ。


「『ユグドラシル・ヒール』!」


 散々俺たちを苦しめた、女神アルナの使っていた回復魔法で俺の傷は一瞬で治癒する。

 初めて眼前の天使の顔が恐怖で歪んだ。


「それは......! アルナ様が世界樹の力で会得した魔法! そんなものまで......」

「ヴィゾーヴニルは、これが女神に使われるのがしゃくだったんだとよ、だから俺が奪い取ってやった」

「お前は......、お前は何者なの。そんなの、人間が手にしていい力じゃない!」

「じゃあ神なら良い理屈がどこにある」


 エンピをリーリスの腹へ、さっきのお返しとばかりにめり込ませた。


「ガッハ!」

「神だの天使だの、人間の自由意志を阻む権利はない!」


 足裏でブレーキをかける天使。

 俺は全魔力をエンピに集中させた。


 炎が絡みつき、渦を巻く。


 冷気が漂い、足元を白い霜で覆う。


 走るイナビカリが、エンピに纏わりつく。


「ッ......!! エンジェル・リンク! コード3――――」


 させない!

 超極魔法エンジェルブレイクを発動しようとしたリーリスへ、俺は刹那の時間で肉薄した。


「俺たちは――――――自由だッッ!!!」


 炎、雷、氷を合わせた23連撃が彼女の体を、羽根を凍てつかせ、焼き落とし、女神の下までぶっ飛ばした。

 焦げた羽根が舞い落ちる......。


 転がったリーリスから金色の魔力が、力尽きたことを示すように四散した。


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[良い点] 最後は円匙か
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