表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

331/380

第331話 VSヴィゾーヴニルⅡ

 

 神域と呼ばれる場所で、俺とヴィゾーヴニル。

 片割れ同士の戦いが始まった。


「そらエルドよ! 逃げるだけじゃ勝負にはならんぞ!」


 俺が突っ走った後ろを、炎と氷の濁流が同時に飲み込んだ。

 振り下ろされる雷の乱打が、周囲の花びらを美しく散らす。


「っ! 好き勝手言いやがって!」


 戦闘が始まってすぐ、ヴィゾーヴニルはありとあらゆる属性魔法を繰り出した。

 彼女自身も、見れば炎と電気を体にほとばしらせている。


 走りながら土に刺さっていた剣を抜くと、俺はその場で切り返した。


「『身体能力強化オリオンレイド』!!」


 全身に魔力を纏って、俺はヴィゾーヴニルに突っ込んだ。


「はっ!」


 彼女もまた、手に持っていた剣で俺の攻撃を受け止めた。

 何度か斬り交わす、再び鍔迫り合いになった時にヴィゾーヴニルの端正な顔が俺を睨んでいた。


「身体能力強化系エンチャント......! 常人なら3秒で魔力を枯らす禁じ手ではないか......!」

「そりゃお前の片割れだからな、そっちだって無茶苦茶な魔法の乱打しやがって......! そんなに魔力残ってんのか?」

「ほざけ青二才め、残ってないとしても教えんわ!」


 距離を取った俺へ、ヴィゾーヴニルは地面に手を触れながら魔法を発動した。


「『グランドロード』!!」


 土から飛び出した大量の柱が、俺へ目掛けて襲い掛かる。

 全周からの面制圧......、なら!


「『炸裂魔法付与ブラスト』!!」


 エンチャントした剣をぶん投げ、正面から迫っていた柱群を爆発で吹っ飛ばす。

 俺はそのまま前方へダッシュすると、空いた隙間から一気に抜け出た。


「ちっ! あれを避けるか!?」


 舌打ちするヴィゾーヴニル。

 だがこのままじゃ拉致があかない、配られたのがこんな前時代的な武器じゃお話にならん。


 なにか、なにか決定打を......!


「たかが尾羽根ごときに、ワシが本気を出さねばならんとはな!!」


 彼女は魔法杖を手に錬成した。

 そうか、ここはアイツの世界。創られる武器は全てアイツの意思に則っている。


 アイツの世界、アイツの意思......。

 だったら......!


「はっ!!」


 手近にあった斧を投げ飛ばす。

 真っ直ぐ飛翔したそれは、しかしヴィゾーヴニルにアッサリ弾かれてしまう。


 俺はその場に立ち止まった。


「っ? 血迷ったか? エルド・フォルティス......」

「へっ、さぁな。てめぇで考えてみろ」

「まぁよい......長期戦は不利なんでの、決着をつけさせてもらうぞ!」


 俺を雷の猛撃が襲った。

 全身の感覚が麻痺し、筋肉が硬直する。


 クッソきちぃ、鬼いてぇ......!! だが、十分だ!!


「これで決着じゃぁッ!!」


 トドメとばかりに、俺を猛炎が包み――――――大爆発を起こした。

 花びらが宙を舞い、周囲に刺さっていた武器が消し飛ぶ。

 黒煙が晴れると、ヴィゾーヴニルは信じがたいものを見る目でこちらを向いていた。


「タフなヤツじゃ......、だがこれでもう武器もない。チェックメイトじゃて」


 ボロボロになり、額の血を拭った俺は――――


「そうかな?」


 笑みを思わずこぼす。


「なんじゃと?」

「さっきお前は魔法杖を錬成したよな? ここに落ちてた武器もそうだ。全部お前が創った」

「......それがどうしたと言うんじゃ」


 俺は大きく息を吸った。


「お前は俺だっ! ここがお前の世界だって言うんなら――――俺にとっても同義だ!!」

「ッ!!?」


 幼ない顔が焦りに満ちる。

 だが――――――もう遅い。


「お前が最初から剣を配置してたのは、この世界の構造を隠蔽するためだ。剣や斧しか使えないという固定観念を植え付けるために」

「ぐっ......!」

「お前は剣しか知らないもんな、まして"銃や砲の構造"なんて」


 右手を横に出し、俺は叫んだ。


「お前の想像力が干渉するなら、片割れである俺も例外じゃない!」


 脳みそをフル回転させる。

 思い出せ、思考しろ! 俺が知ってる最強の兵器を―――――今この場へ現出させる!


「バカ......なッ!?」


 後ずさるヴィゾーヴニル。

 俺は空中に浮かんだそれを見て、成功と正解を確信した。


「覚悟はできたか? 世界樹の管理者」


 名を――――"88ミリ高射砲"。

 無骨な鉄の塊、でも剣や斧とは比較にならないチート級兵器。

 弾は既に装填済みだ。


「ぐっ......、ッゥ!!!」


 それまで見向きもしていなかった巨大な武器、本気の象徴であるハルバードへ彼女は1〜2秒逡巡した後――――急いで手を伸ばした。


「喰らい――――――――やがれえぇッ!!!!」


 ――――ドガオオォォオオンッ――――!!!


 爆音と共に発射された砲弾は低空で飛翔、ヴィゾーヴニルの構えたハルバードでは迎撃が間に合わない。


 砲弾が彼女に触れた瞬間、俺はつぶやく。


「『爆裂魔法付与エクスプロージョン』」


 ヴィゾーヴニルを中心に、世界を揺るがす大爆発が再び花びらを上空に舞わせた。

 視界の先で、一輪の花が燃え落ちる。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] ヴィゾーヴニルって確か雄……なるほど。
[良い点] ハトがアハトアハトくった [一言] 最強はアハトアハトじゃねー円匙だ!
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ