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第324話 オオミナトVSリーリス・ラインメタル

 

「人間の分際で主の仰ぎし空を舞おうなど、愚か者めっ!!」


 ユグドラシルを中心とする空中で、金色の魔力と銀色の風が激しくぶつかり合っていた。

 轟音と衝撃波を伴いながら、オオミナトとリーリスは一歩も引かない戦いを見せる。


「だあぁッ!!!」

「はぁっ!!」


 突き出される右手、互いの頬に拳がめり込んだ。

 とびかけた意識を繋ぎ止めたオオミナトは、リーリスの胸ぐらを掴むと思い切り頭突きをくらわせる。


「がぐぁッ......!!」


 飛び散る鮮血。

 彼女ら2人は、もうずっとこのような泥臭い戦いを続けていた。


「くっ......どうして邪魔をする!! アルナ様は世界の不幸を全て取り払おうとしているのに、なぜお前ら人間は邪魔をする!」


 加速したリーリスが旋回中だったオオミナトに追い付くと、彼女の上着を掴んだ。

 そして、さっき受けた頭突きのお返しと言わんばかりに膝蹴りを彼女の柔らかい腹部に叩き込んだ。


「げほっ!?」


 たまらず口内の唾液を吐き出す。

 リーリスは苦痛に喘ぐ彼女の服から手を離すと、両拳を合わせてオオミナトへ振り下ろした。


「ずあぁッ!!」


 渾身の一撃は、しかし何もない宙を切る。


「しまっ!?」


 高速移動で、逆に背後からリーリスは首筋に蹴りをくらう。

 落下する天使を、オオミナトが追撃した。


「プライドか! 人間っ!! 傲慢で自己中心的な貴様らでは世界を運営することなどできない! あのクソ兄貴に付き従ってなんになる!!」


 リーリスが錬成した光の剣と、オオミナトの風の剣が雲と同じ高さで鍔迫り合う。

 凄まじい魔力のぶつかり合いによって、周囲は風が吹き荒れた。


「どうして少佐を......! 自分の兄をそこまで憎んでるんですか!!」

「愚問だな! アイツはわたしを捨てた! あのクソ勇者は敵を殺すことにしか興味がないマーダーだ! たった1人の家族すら愛せない妹不孝のクソ兄だっ!!」


 見る者全てを魅了するかのような剣舞で、2人は意思をぶつけ合う。


「そんなことありませんっ! 少佐はわたしや皆の恩人です! エルドさんやセリカさん、わたしやレーヴァテイン大隊、多くの人を導いてきた勇者なんです!」

「それが憎いって言ってるのよっ!! アイツはいつも周りばかりで、一番近くにいたわたしを見てすらくれなかった!!!」


 剣を弾いた両者は、再び高速で機動しながら剣をぶつけ合う。

 一気に急降下し、ネロスフィアの崩壊した市街地を低空で飛翔した。


「孤独に殺されかけたわたしを救ってくれたのは、アルナ様だけだった! お兄ちゃんがわたしを放置したから......クソ兄貴が家族を無視した結果がこれなんだ!!!」


 大量の光属性魔法を繰り出す。


「お兄ちゃんがわたしを見てくれないから!! お兄ちゃんの代わりにアルナ様が手を差し伸べてくれた! その期待に応えることのなにが悪い!!」


 シャワーのように降り注ぐそれらをかわし、オオミナトは半壊していた時計塔に足裏を叩きつけた。


「そんなの......!」


 時計塔が崩れるほどの勢いを込めてジャンプ、弾幕をかいくぐってリーリスに肉薄した。

 目を丸くする彼女へ向け、オオミナトは拳を握る。


「ただのブラコンじゃない!!」


 顔面に容赦なくパンチを浴びせる。

 吹っ飛んだリーリスを追いかけ、再び互いに掴み合う。


「さっきから聞いてりゃなに!? 兄のせいだ放置しただ、いつまで赤ちゃんじみたこと言ってんのよ! お兄さんの苦労も察せないヤツが、自分勝手ばっか言ってんじゃないわよ!!」


 再びさっきのお返しとばかりに、リーリスへ腹パンを叩き込む。


「がっは......!!」

「あなたは知らないでしょうね、ラインメタル少佐が勇者として戦ったのはあなたを養うためだったって」

「なっ!?」


 この作戦の出撃前に、少佐から聞いた事実をブラコン天使にぶつける。


「少佐は言ってた。必死で戦って、必死で稼いだお金で買ったご飯を持って帰ったら――――あなたはもう家にいなかった。女神にそそのかされて天使なんかになってた! それがどれだけ辛かったことか」


 再びリーリスを殴り飛ばし、追いついてはさらに拳を叩きつけた。


「兄不孝はあなたよ!! 働く苦しみも知らないガキが勝手に被害妄想膨らませてんじゃないわよ!!」

「黙れ黙れ黙れッ!!! 部外者が好き勝手言わないでよっ! わたしは天使、選ばれし存在だ! クソ兄貴のことなんか知ったこっちゃないのよ!!!」


 両者は加速。

 ユグドラシルに沿って上昇するオオミナトを、リーリスが追いかける形となった。


「消し炭にしてやる......! お前も勇者も! この世界樹を墓標にしてやるッ!!」


 一気に追いすがるリーリス。

 だが、それが彼女にとって最大のミスだった。

 眼前に迫ったオオミナトが、手から吹き出す風をスラスター代わりにして突如真横へ避けたのだ。


「えっ!?」


 オオミナトが避けた直後、直上から真っ黒な軍服を着た、リーリスと同じ色の髪を持った男が降ってきた。

 彼女は理解する、オオミナトの目的は自分をここまで誘導してくることだったのだと。


「クソ兄......貴!」

「やぁリーリス、元気そうでなによりだ」


 ユグドラシルから飛び降りてきたラインメタル少佐は、右手を振りかぶっていた。


「今は下に落ちていたまえ」


 強烈な隕石がごとしパンチをくらい、リーリスはネロスフィアの市街地へ激突した。

 巻き上がる煙を見ながら、落下していた少佐はすぐさま王国軍のワイバーンに拾われる。


「良い連携だったオオミナトくん、これであのバカ妹もしばらく大人しくしているだろう」

「ありのままの気持ちをぶつけただけです......。少佐こそ、よくユグドラシルから飛び降りようなんて思いましたね。普通怖くて無理ですよ」

「"家族を失ったあの日"から......頭のネジなんて外れている。さぁ、本命を倒しに行こうか!」


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― 新着の感想 ―
[気になる点] まあラインメタル少佐がここまでした事情はまだ分からないけど、絶対あの厚化粧女怪獣が悪いんだろうなー。 [一言] 前にも思ったんですけど宗教的には別に悪い事してないんですよね。 魔族は殲…
[一言] くだらないケチを付ける生ゴミみたいなヤツの小学生みたいな感想文に負けず、完結まで頑張って下さい。
[良い点] ブラコんこじらせて敵になるか 裏切って一緒に戦うやつ?
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