第320話 2つのコンビ
エンジン音を響かせて、セリカの運転する車は部屋の外へ勢い良く出ていった。
「じゃあ僕らも行かせてもらおう。頼むよ、エルミナくんにアルミナくん。まぁ一応数人残しておくよ」
「ふん、サッサと行きなさい。ヒューモラスが起き上がってくるわよ」
ラインメタル少佐たちレーヴァテイン大隊も、車へ続くように外の回廊へ出ていく。
さて、今からまた戦いだ......と身構えたエルミナたちの後ろから、叫び声が聞こえた。
「なんで俺たちが残されてんだよぉ!! 相手敵の最高幹部じゃねえか!」
ステアーが頭を抱えながら膝をつく。
「知りませんよそんなの、クビにならなかっただけマシと思いましょ」
「いやでもさシグ兵士長! もうちょっとなんていうかさ、手心ってもんがあるだろ! 見ろよ!」
この部屋にはエルミナとアルミナ、そしてレーヴァテイン大隊員はステアーとシグしかいない。
つまり、そういうことだ。
「10人は残すべきだろ! なんで俺ら2人だけなんだよ!」
「どうせ少佐の気分じゃないんですかね、俺らへの罰を兼ねてるとか」
「ああぁ!! 間違いないねぇっ!! 絶対そうだまずそうだ、やっぱ怒らせるべきじゃねーわあの人!」
悲観しまくっている2人の兵士を背に、エルミナは心底思った。
――――うるさい......。
「ねえお姉ちゃん、ヒューモラスの前にあいつら黙らせていい?」
「ダメ」
「む〜......、ねぇ男共っ!!」
「「はい!!?」」
ステアーとシグは同時に気をつけの姿勢を取った。
「そんなに嫌だったら先に上行ってていいのよ、こっちはこっちでやっとくから」
「ありがてぇ! っと......言いたいところだが。おい」
「へへ、了解です」
シグ兵士長が合図で手榴弾を手に持った。
振りかぶり、山積みの瓦礫からウニョウニョと出てきていた"影"へ目掛け投擲する。
「ぬおおっ!!」
影に潜んでいたヒューモラスが、爆風で吹っ飛んだ。
「くっ! なぜわかった!?」
「今どき闇属性魔法なんざ古いんだよ、スキンヘッド野郎め」
「まさかお前たちは......」
「せいかーい。俺たち2人は元冒険者ギルドランキング1位所属だった魔導士だ、王国じゃ結構有名なんだぜ。当然闇属性魔法なんて知り尽くしている」
動揺するヒューモラスの方を向いたアルミナが、2人に質問する。
「驚いた、あなたたちそんな経歴があったのね」
「魔法に飽きてたところをラインメタル少佐に誘われて軍隊に入ったんですよ、こんな世界の危機に駆り出されるなんて思ってませんでしたが」
「もう一度言うけど、別に逃げてもいいのよ」
「......これ以上持ち場を放棄したらマジでクビになりかねんから、頑張って戦う!」
「あっそ......」
呆れ気味のエルミナの声を最後に、4人は目の前の敵へ正対した。