第32話 次世代の武器・アサルトライフル
「では聞こう! 我々はいったいどういう組織だ?」
新型の武器――――名を自動小銃と言ったか? を右手に持った少佐が、俺たち目掛けて空いている左手を向けた。
「はいはーい! 国民国土、そして国家主権の防衛を目的とした国営の武装組織です!!」
ノリノリで手を上げるセリカが、意気揚々と答えていた。
「そのとおりだセリカ・スチュアート1士、ではその守るべき国民の敵とは?」
「魔王軍、および敵性国家です」
「簡潔に言えばそうだ、ではそれら脅威がこのアルト・ストラトス王国へ牙を剥いたらどうするエルド君?」
えっ、俺!?
急な振りに俺はたどたどしく答えた。
「せっ、政治的交渉が不可能ならば、国家の暴力装置として機能します......」
「素晴らしい! つまり今回僕がここへ新兵器を持って来たというのは――――――」
いきなり弾倉を装填した少佐は、アサルトライフルの引き金を絞った。
連続して響く乾いた音が演習場の空気を叩き、的の中心部が高速で撃ち抜かれる。
「"そういう事態が"起こったということだ」
機関銃とライフルを合わせたような外見の銃は、その性能もかなりのものであることがわかる。
これを使う相手が現れたとなれば――――
「先程言っていた『新生魔王軍』......ですか」
「なにも不思議じゃないさ、思い出したまえエルド君。このレーヴァテイン大隊の名を」
ふと入隊試験の時を思い出す。
あぁ......そういえば"対魔王独立機動部隊"とか言ってたっけ、なぜ魔王はもういないのに対魔王だなんて付いてたのか不思議に思っていた。
「なるほど......、あの災厄たる魔王ペンデュラムはまだ"生きていた"のですね」
「情けない話だがそうだ、仲間だった魔導士と聖職者を殺され、僕のみの火力ではあと一歩のところで足りなかったのだよ」
伝説の勇者パーティーは、勇者本人を除いた全ての者が戦死したと記録されている。
無念であることなど容易に想像できる。公式には討伐となっているが、現実に魔王は復活した。
だが少佐も魔王は復活すると睨み、この国営パーティーを作り上げた。
資金はギルドのクエスト報酬から防衛予算へ――――
武器は街の武具屋から国の兵器工廠へ――――
勇者パーティーは選ばれし仲間から数十万の軍隊へ――――
国力を糧とし、少佐はここまで備えてきたのだ。
死んでいった仲間たちの仇を今度こそ討つために。
「王の末裔共に教え込んでやろうじゃないか! 鉄と鉛の怨嗟を! 勇者の剣などまだ生ぬるかったんだという現実を!! これから始まるは"国営パーティーの魔王攻略記"だ!」
毎度のことながら、この人が元勇者であることを俺は信じられない。
だからこそ――――
「了解です!! 全力をもって我らが敵を殲滅します!」
戦うことでお金を貰う者となった以上、拒否権など存在しないのだ。
社会的に1度死にかけた俺は、改めて軍での意志を示す。
「と、ところで少佐......。わたしもうその新兵器を試したくて試したくてしょうがないんッスけど......!」
思わずズッコケる。
ったくこのミリオタは......、相変わらず武器には目がない。
「もちろん良いとも、ほら」
「うわっはー! この重厚感最高ッスよ! しかもこれ単発と連発の切り替えができるんッスか!? なんて画期的!!」
子供のように――――っというか年齢的にはまだ子供だが、セリカのテンションはぶち上がっている。
せっかくなので俺も少し――――
そんな銃を持った俺たちへ、少佐は思い出したように呟いた。
「そうだ2人共、1つ助言をしておこう――――――もしストーカーがいたなら決して容赦しないことだ」
意味深な言葉は、しかしこの後実践することとなった。
しつこい求婚を避けるために交わした彼女との約束を前に、俺は銃の引き金を引いた。
【アサルトライフル】
機関銃とライフルの中間が欲しい! そんな軍隊さんの要望に答えて造られたのがこれ。
中間弾薬という反動はライフルより少ないけど威力も結構あるよという弾を、単発と連射両方で撃てちゃう