第314話 迎撃作戦発動
――――王国軍参謀本部。
「資料にありますとおり、ネロスフィアは現在この王都を目指して陸上を西から侵攻中。3時間以内にウォストセントラルに侵入する見込みです」
いくつもの符号が書かれたウォストピアの地図を見ながら、参謀次長は報告を聞いた。
「カヴール大佐」
「はっ」
「もしあの巨大な自走都市が街に突っ込んだら......どうなると思う?」
「......二度と復興できないレベルの、大損害を被るかと」
手元の資料を机に置いた西方軍司令が前のめりになる。
「ウォストピアは我々の大事な植民地だ、ここは断固として侵攻を阻止すべきです閣下!」
「わかってるよ、だからこそあんな大部隊を配置したんだ。後は私の命令1つで――――全てが始まる」
「では......」
「あぁ、作戦第3段階発動。アーチャーユニット全部隊に下命せよ! 前進開始!」
◆
――――東ウォストピア ウォストリード陸軍航空基地。
『ワルキューレ01より管制塔、離陸許可を求む』
『コントロールよりワルキューレ01部隊、第1滑走路からの離陸を許可します。幸運を』
長い滑走路から、次々にワイバーン部隊が飛び立った。
この部隊は旧エルフの森航空戦で活躍した、第1ワイバーン師団である。
2つの基地から合わせて約200騎以上の数が、編隊を組んで戦地へ向かった。
◆
『全飛行船に告ぐ、攻撃隊形03へ移行。旗艦を先頭にフォーメーションを組め』
『了解』
『しばらく出番がなかったが、今ぞ活躍の時......! 気張るぞ! 海軍の仇をとってやれ!』
ウォストセントラル上空を飛んでいたのは、王国陸軍の第7爆撃飛行艦隊だ。
飛行船の総数は12、全部が武装を搭載した重爆撃モデルであり今回は新兵器を搭載していた。
真下から見るそれはなかなかの光景であり、避難中の亜人市民たちが歓声を上げる。
「頼んだぞ!!」
「魔王軍なんかやっちまえー!!」
避難サイレンが響き渡る中、大勢が歓喜していた。
かつてその爆撃飛行艦隊こそがウォストピアを焼き払っていたのだが、戦争が終わった市民にとっては強い味方として映ったようだ。
◆
――――ウォストセントラル前面30キロ とある河川敷。
『こちらティーガー01、射撃準備体勢に移行中』
『了解、待機維持せよ』
『パンター05、こちらも全中隊攻撃準備よし!』
河川の両岸には、見たこともないほどに大量の戦車が並んでいた。
タンカラーが中心のそれらは、最新の『ティーガー戦車』並びに『パンター戦車』と呼ばれるものだった。
ロンドニアではアルミナの『ギガント・アイスゴーレム』を粉砕し、ウォストブレイドの国境大要塞攻略作戦にも動員された、ここに至るまで無敵を誇る最新戦車だ。
いずれもまだ数が揃っていないのだが、この作戦のために稼働可能な車両を全てかき集めたのだ。
その数250。
『戦闘団本部より王国軍戦車連隊へ、現在ミハイル連邦軍の戦車師団が陣地転換中』
『こちらティーガー01、共産主義者の連中――――やたら数が多くないか?』
『我々に先にネロスフィアへ乗り込まれた分、張り切ってるんだろう。車間距離はしっかり空けろよ』
やがて、敵の姿が見えてきた。
『こちらパンター02、あれがネロスフィアってやつか』
霞の向こうに、超巨大な6足歩行の都市が迫る。
しかも、なにやら大きな塔が立っており上空には謎の鏡みたいなものが広がっていた。
『まずは航空隊が威力偵察を行う! 全車そのままで待機!』
空前の規模で、迎撃作戦が行われようとしていた。
この王国――――連邦の両部隊は、陸空合わせて『ウォストピア戦闘団』と呼称された。