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第308話 ネロスフィア足止め攻撃

 

「くそっ! すまんねオオミナトくん! ヤツの性格を考えればもう少し早く動くべきだった!」

「どういうことです!?」

「僕の忌々しい妹によって、儀式は既に終了している! ヤツはすぐにでも開こうとするだろう!」

「開くって――――うわッ!?」


 彼女の質問は、突如倒れてきた柱の土埃で遮られる。


「はっ!!」


 ラインメタル少佐は、ハードルの要領で飛び越えると着地――――また突っ走る。


「開くって、どこがどこにですか!?」

「なーに簡単な話だ、女神はこの世界の信仰に飽き足らず、別の世界の別の神への信仰すら手に入れようとしている。自身を究極の存在にするためにな!」

「それって......!」


 足場が崩壊し始めるが、ラインメタル少佐はさらにスピードを上げながら答える。


「あぁ! 女神アルナはこの世界と......オオミナトくんのいた世界――――"日本"を繋げるつもりだ。そして地球人の信仰を自分のものとするだろう、それこそが『ニューゲート計画』だ!」


 異変は、海上で監視を行っていた王国海軍艦隊も視認していた。


「レーダー室より艦橋! 魔導レーダーに正体不明の大規模ノイズ発生! 位置! ネロスフィア直上!!」


 旗艦である巡洋戦艦 《フォッグ・アイランド》へ、各艦から報告が寄せられる。

 魔王城だった場所を中心に、見たこともないくらい巨大な魔法陣が浮かんでいた。


 さらに、艦隊の時間を削る報告がくる。


「司令! まもなく連邦領、西ウォストピア沿岸にネロスフィアが上陸します! 陸に上がられれば、艦隊による支援はできなくなります!」


 この声に、戦隊司令は速やかに決断を下した。


「攻撃を繰り上げるぞ! 第3水雷戦隊に伝達! 魚雷攻撃開始!!」


 ネロスフィアには、レーヴァテイン大隊を中心に友軍が上陸しており砲撃ができない。

 そのため、海軍はこれを阻止するべくネロスフィアの機動力を削ぐための攻撃を開始した。


「第2戦速せんそーく、とーりかーじ、0度ヨーソロー!」


 単縦陣でネロスフィアの横に並んだのは、側面と魚雷発射管を向けた12隻の《ヒート・ヘイズ級駆逐艦》。


「1番、2番魚雷発射管、射撃準備よし!」

「目標ネロスフィア! 的速20ノット! 雷速52ノット 距離600!」


 水雷員が羅針艦橋で『97型方位盤1式』を使用し、諸元を算出――――魚雷発射管に指示を送った。


「全艦! 魚雷、攻撃始めっ!!」


 ネロスフィアの足を止めるべく、駆逐艦隊から大量の魚雷が発射された。

 61センチ4連装魚雷発射管が、1艦につき2基......12艦による全射線発射なので計96発。


 食らえば戦艦ですら粉微塵になるだろう。

 横いっぱい魚群のように水中を進んだ『93型酸素魚雷』は、ネロスフィア底部に突き刺さった。


 ――――ボゴゴゴゴゴゴゴォンッ――――!!!


 白い水柱が、カーテンのようにネロスフィアを隠した。


「どうだ......!!」


 水柱が全て落ちる。

 見張員が双眼鏡で覗くが......。


「ネロスフィア! 速力低下せず!! 進路そのまま! 機関への損傷......認められず!」

「ダメです! ウォストピアに上陸しますッ!!」


 魔都ネロスフィアは、巨大な6本の脚部を用いてウォストピアへ上陸した。

 超巨大な都市が陸上を歩行する様は、圧巻の一言であり......同時に海軍の出番が終わったことを告げた。


「全艦、我々の役目はここまでだ。不本意だが......あとは陸さんに任せるぞ」


 海軍は、沖合から内陸部へ進むネロスフィアを見届けた。


 ◆


 ――――王国軍参謀本部。


「急報! ネロスフィアが連邦領 西ウォストピアへ上陸! ウォストクローナ海岸からウォストセントラルを目指しているとのこと!」


 報告を聞いた参謀次長は、傍にいた西方方面軍司令官へ口開く。


「大方予想通りの位置だ、西方軍司令」

「ほぅ、閣下はネロスフィアの動きを全て予測しておられたと?」

「全てではないよ、だが連中がウォストセントラル経由で王国を目指すんじゃないかとは考えていた」


 参謀本部が喧騒に包まれる中、参謀次長はゆっくりと葉巻をふかしていた。


「恐るべき慧眼......でありますな」

「褒めても何も出んぞ、それよりも......」

「はい閣下、動員可能な機甲師団、砲兵軍団、ワイバーン師団、さらに『列車砲』は全て展開を完了しております」

「あぁ――――助かる。やはり激しくやるなら、連邦領が理想的だろう? 共産主義者コミーどもは?」

「同最終防衛ラインにて、共同展開中です。戦車250、砲門数550、多連装ロケット100両――――を確認しています」


 連合国軍は、これら全てを見越してネロスフィア攻略部隊を後方に下げていた。

 ウォストセントラル前面30キロを最終防衛ラインとし、全火力でもって自走システムを破壊するために。


「よし、作戦第3段階――――『アーチャーユニット』全部隊に攻撃準備指示を出せ。なんとしても聖杯ネロスフィアを打ち砕くぞ」


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― 新着の感想 ―
[気になる点] よりによって日本に女神が来るのか……。 とある界隈では信用してはいけない違法人体改造をそそのかす腹グロ妖怪だからね、異世界の女神ってw
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