第303話 一瞬で終わっちゃいますよ
少し魔法だとかそっち系のキャラたちの出番が多くなる。
やっぱウチの読者的には近代兵器好きそうだしそっち系統も早く出したい
「ッ......!! あの吸血鬼め! 謀ったな!!」
魔王城――――玉座の間で、女神アルナはその美貌にあるまじき憤りを見せていた。
使い潰すつもりだったジェラルドとミリアが、なにをどう転んだのか敵の吸血鬼に誑かされてしまったのだ。
結果、連中は打倒天界を掲げる新生魔王軍に助力。
あろうことかこの自分を、気高く崇高で唯一絶対の存在である女神に牙を向こうとしている。
許さない、この代償は高くつくぞとアルナは金色の瞳を充血させた。
「もう少し......儀式さえ完了すれば、私はこの世で完全の存在になれる。なんとか時間稼ぎしないと......」
魔王城の外壁近くで、巨大な爆発が発生した。
それは見なくてもわかる惨状、勇者と交戦していた魔王ペンデュラムが現在進行系で圧倒されているのだ。
「もう少し......、もう少しよ。あと少しで『ニューゲート』が開く! そうすれば......無限の信仰が手に入る」
ワナワナと震える女神。
そこに、神話で描かれているような美しい表情はなかった。
歯ぎしりするアルナは、ふと足音がしたことに気づく。
「あなたが女神アルナさんで間違いなさそうですね」
「ッ......!!」
見れば、壁に空いた穴から1人の少女が入ってきた。
空中を飛んできたのだろう、黒い瞳に腰まで伸びたしなやかな黒髪が印象深い人間の女の子。
服装は白色のシャツに紺色の上着を重ねており、下は同色のクオーターパンツと黒いハイソックスを履いた軽装。
この世界ではまず見ない服装に、女神アルナは眼球を向ける。
「どなたかしら? 今は取り込み中でお子様に知り合いもいないんだけど」
「フッフッフッ、こっちはあなたのことをラインメタル少佐からよーく聞かされてますよ女神さん。悪辣なペテン師とね、このわたしが月に代わって......じゃなかった、天に代わってやっつけてあげます!」
胸に手を当て、自信満々に答える少女。
言動からして勇者の仲間だろう、女神アルナは情報を求めた。
「随分失礼な子ね、誰に向かって口を聞いてるかわかってるのかしら? 先にお名前を言ってくれる?」
「名乗るほどのもんじゃ......っていうテンプレ台詞はいいか、わたしの名はオオミナト ミサキ! あの戦艦に乗ってここへ殴り込んだ異世界無双系主人公です!」
オオミナト ミサキ......。
全く聞き慣れない名前、服装、珍しい髪色。
女神アルナはすぐに正体を看破した。
「なるほど......随分前から問題になってる、"異世界人"ね。違う世界の住人が私になんの用かしら?」
「用......? 決まってるじゃないですか」
玉座の間に暴風が吹き荒れた。
直後、オオミナトの髪と瞳が一気に銀色へ染まる。
「あなたをぶっ倒して、この物語を終わらせるためです」
あまりの常識はずれな魔力に、女神は思わず冷や汗を流した。
「雰囲気が変わった......!?」
「変わったのは雰囲気だけじゃないですよ、わたしは本気であなたを倒すつもりなんですから!」
女神アルナは、突然走った腹部の激痛に目を見開く。
「ガッ......!!?」
見下ろせば、一瞬で距離を詰めたオオミナトの拳が女神である自分の腹へ突き刺さっていた。
見えなかった......、女神であるわたしが、人間如きにダメージを......!
「どうしました? 本気でやらないと......一瞬で倒しちゃいますよ」
オオミナトは、笑みを絶やさずに全身へ風を纏った。