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第301話 残りの灯火を全て......!

 

「ッ!!」


 攻撃を受けたアルミナは、即座にギガントアイスゴーレムの腕を振るった。

 連中が勇者になったのは明白であり、非常に厄介極まりない。


 そしておそらく、本人たちは気付いていないのだろうと踏んだ。


「このバカ......! なんでそんなことを」


 氷の巨腕が振り下ろされ、家々が吹っ飛ぶ。

 そんな攻撃を、勇者化したジェラルドはたやすく避けていた。


「なんでですと......? そんなことはわかりきっている!!」


 腕を跳躍したジェラルドが、ギガントアイスゴーレムの胸を再びぶん殴った。


「ぐはっ!」


 勇者化による凄まじいパワー。

 その衝撃に、操縦者のアルミナは咳き込む。

 巨体がゆっくりと膝をついた。


「この戦いはもはや他の追随を許さないのです! だからこそ! 私とジェラルドは魂を売った! その身を焼き尽くす覚悟で女神の傀儡となったのです!! そうしなければ存在することさえこの場では許されない!」


 瞳を金色に染めたミリア将軍は、その杖から強力な爆裂魔法を放った。

 発射されたそれは一直線に飛翔し着弾、氷の巨人の左腕を吹っ飛ばした。


「ぐぅっ......! ああぁッ!?」


 巨人と感覚を同期していたアルミナへ、そのまま腕をもがれる痛みが襲った。

 しかしその目から闘志は消えない、彼女はミリアの叫びに叫び返す。


「だから全てを女神に捧げたって!? そんなのは甘えじゃないっ!」


 巨人を操作。

 市街地を踏みつぶしながら肉薄、残った右腕でジェラルドへ拳を叩きつけた。


「ぐぅおあっ!!」


 吹っ飛んだジェラルドは民家へ突っ込んだ。

 アルミナは痛みを無視しながら、ミリアの方を向く。


「あなたたちが忠誠を誓ったのは誰っ!? 何っ!? 魔族のことを使い捨ての紙程度にしか考えない女神なの!?」


 ミリアの足元から氷柱が勢いよく突き上がった。アルミナの氷結魔法だった。


「くっ!」


 間一髪避けるも、氷は次々に出現してミリアを追い立てる。


「あなたたちは偉大な7階級将軍、選ばれし魔族のリーダーだった。それがこんな無様な姿になって! 本当にそれでいいの!?」


 起き上がったジェラルドが、ギガントアイスゴーレム目掛けて突っ込む。


「なら我々はどうすれば良かったのだ!! 勇者に蹂躪され、女神の駒に過ぎぬと知った我らの気持ちなど、裏切り者にわかるわけがないだろう!!」

「そんなのわかるわけない! わかってたまるか! わたしたちは女神の傀儡から魔族を解放するためにこの道を選んだ! 勝ち取って――――――」


 巨人の拳とジェラルドの右手がぶつかった。


「道を選んで見せてっ!!」

「ぬかせっ! できるわけがなかろう! 我々にもはや猶予はないのだ! 女神に全てを売った以上、選択肢などない!!」


 激しいぶつかり合いの末に、巨人の右腕が破壊される。


「ぐぅっ......!!!」


 度し難い激痛に襲われながらも、アルミナは魔法を発動した。


「だったら――――!!」


 巨人の全身が崩壊を始める。

 同期を解除したアルミナは、頭部を破壊しながら上空高くへ飛び出す。


 そして、めいいっぱい叫ぶ。


「選択肢を作って見せろっ! わたしたちの......仲間になることで!!!」

「なにっ!?」


 全く想定していなかった言葉に、ジェラルドは硬直する。

 仲間......? ありえない、魔王軍を裏切れというのか?

 いやとジェラルドは思考を回転させてしまう。


 この場で戦って、一番得をしているのは誰だ......?

 それは自分たち魔族ではない、わけもわからない天界の連中に他ならないのだ。


 自分は選ばれし7階級将軍、魔族のために戦うことが正しいというのなら。

 今の自分なんかよりも......。


「アルミナ様たちこそが......、魔族のために戦っているのでは......?」

「ジェラルド!! ちっ!!」


 静止してしまったジェラルドを見て、ミリアは同時攻撃を諦める。

 アルミナを仕留めるなら、無防備な空中にいる今しかない。


 再び爆裂魔法を起動しようと、ミリアは杖に魔力を込めた。


 ――――バビュビュンッ――――!!


 突如飛んできた弾丸が、ミリアの手を撃ち抜いた。


「がっ!!」


 見れば、座礁した戦艦ダイヤモンド――――その艦橋部分からレーヴァテイン大隊員たちが銃口をこちらに向けていたのだ。

 弾みで手放してしまった杖が、通りへ落ちていく。


「しまっ......!!」


 時既に遅し。

 氷槍を錬成したアルミナが、落下速度を味方にしてミリア将軍へ突っ込んだ。


 氷槍の一撃は屋根を消し飛ばし、後方に衝撃波が走り回る。

 攻撃は――――ミリアの横僅か1ミリという距離でずらされていた。


 目の前には、わざと槍を外したアルミナが水色の瞳を向けている。


「一緒に女神を倒しましょう、それがあなたたち7階級将軍の......最後にやるべき仕事だから」


 奪われてもおかしくなかった命を胸に、ミリアは膝をついた。

 そこへ、ジェラルドもやってくる。


「ミリア将軍、我々はどうやら......自ら選択をする時が来たようだ。誰のために尽くすべきなのか、なんのために使命を全うするのか。魔王軍の将軍として......魔族として」

「......そのようね、ジェラルド将軍」


 立ち上がったミリアを見て、アルミナは手を差し出す。


「戦いましょう、もはや女神に支配された魔王軍はいない。魔族と人間の共生――――天界からの独立を目指すわたしたちの新生魔王軍に......力を貸して」

「......」


 出された手をしばらく見つめた両将軍は......。


「わかりましたアルミナ様、この第3級将軍ジェラルド。貴方たちの新生魔王軍に――――残った灯火の全てを預けます!」

「同じく第4級将軍ミリア! 新生魔王軍と共にあることを誓います! 全ての魔族のために!」


 その手をガッチリと握った。


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― 新着の感想 ―
[良い点] 手強い敵は見方になると足を引っ張る? [一言] 完結まじか もうちょっとからが長い DBZ
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