第288話 リベンジ・ホムンクルス
「オッラアアアアァァァアアアア!!!!」
既に艦砲射撃でボロボロになった街を、さらに灰塵へ帰さんがごとく2人の吸血鬼は暴れていた。
道を阻んだ警備部隊は、エルミナによってことごとく薙ぎ倒されるか――――――
「『グラキエース・アイシクルライン』!!」
アルミナの氷結魔法によって氷漬けにされていた。
総力戦で擦り減った魔王軍に、もはや彼女たちを止めるだけの力は残っていない。
「エーテルスフィアに動きは!? お姉ちゃん!!」
魔王城上空には、巨大な赤色のクリスタルが浮かんでいた。
あれこそが、『超高出力魔導砲 エーテルスフィア』である。
彼女たちに課せられた任務は、あれの無力化ないし弱体化だ。
「まだ! けれど時間はない......『ランサーユニット』の到着までになんとかしないと!」
「タイムアタックってやつね、上等!!」
踏み込んだエルミナへ、魔王軍警備部隊がシールドを横隊に構えて迎え撃つ。
「っらあぁ!!!」
一撃粉砕。
その言葉のように魔王軍の防御ラインを強引に、豪快に突破。
もはや彼女たちを止められる者などいないかのように思えた時――――
「エルミナ!! ストップ!!」
「ッ!!」
進撃する吸血鬼姉妹の正面に、クレーターが出現した。
すなわち、何かが落下してきたのだ。
「いーけないんだーいけないんだー」
「アルナ様に言っちゃーおー♪」
クレーターの中心、そして屋根上に現れたのは全く同じ外見を持つ亜人の少女。
ウォストピアの勇者の見た目をした化物――――
「第2世代ホムンクルス......」
「結構早いじゃない、しかもなんか増えてるし」
この第2世代ホムンクルスに、前回エルミナは完敗している。
それもそのはず、これは勇者の魂を再利用して生まれたクローン。
強さをほとんどコピーしている上に、かなりのタフネスを誇る魔王軍の切り札だ。
「ヒューモラスのやつ、相当焦ってるわね♪。いいわ!!」
魔力を吹き上がらせたエルミナは、瞬間移動と見紛う動きで肉薄した。
「相手が魔族じゃないなら、遠慮なくぶっ殺せる!!」
クレーターの2体へ、衝撃波が付随するほどの蹴りを浴びせた。
砲弾のように飛んだホムンクルスは、戦時食糧庁の建物をブチ抜いて反対側の通りまで突き抜けた。
亜人勇者の見た目"だった"肉塊へ変える。
「どっからでもかかってこい!!!」
「ガアァッ!!!」
屋根上でも戦闘は発生。
ホムンクルスの攻撃をサッと避けたアルミナは、直上へと跳躍した。
「1、2、3、4――――」
上空からホムンクルスを補足したアルミナは、手に魔法陣を浮かべる。
「『グラキエース・インパクトグングニル』!!」
音速で投擲された氷の槍が、建物ごとホムンクルスを貫いた。
発生したソニックブームの爆音が、槍に遅れて響く。
「次っ!」
再び投擲。
避けることのできない氷槍が、矢継ぎ早に投げられた。
「ギッ!!?」
あっという間に4体のホムンクルスが、葬り去られた。
着地するエルミナ。
「ふぅ......まだまだいるわね」
一瞥すると、周囲にはまだ概算で10体はいる。
さてどうしようかと思ったアルミナの目の前で、ホムンクルスの頭が消し飛んだ。
「ガっ......!!?」
遅れて大きく鳴った銃声に、彼女はすぐさま理解する。
「さすがに仕事が早いわね、ミクラ」
後方にそびえていた塔で、再び発砲炎が輝いた。
音速の3倍という速度で飛翔してきた弾丸が、再びホムンクルスを貫通した。
さらに、立て続けに3体が狙撃される。
「フゥ~......!」
塔の最上階――――鐘の真下で、ミクラはバイポッドで立った得物の薬室へ弾丸を挿入した。
反動で下がりきったボルトをコッキングハンドルで前へ押し、次弾を装填。
アイアンサイトをゆっくり覗き込む。
「さて、仕事の時間だ」
ミクラの構えていたそれは、銃としてはおそらく最大最強の物――――――
《PTRD1941》、14.5ミリ対戦車ライフルだった。
「少女のガワをした化物を撃つ趣味はないが......こっちも大事な日本人の運命を賭けてるんでな。恨みっこなしだぜ」
50万文字突破しましたよ......、これは褒められる所業じゃないかと自分に言い聞かせてます、はい。