第279話 再会
「ん? あれってオオミナトさんじゃないッスか?」
海軍カレー本舗に着いた俺たちは、さっそく席に座ろうとしたところで見慣れた人間を発見した。
「ホントだ」
中央の楕円形テーブルでカレーを頬張っていたのは、日本人少女オオミナト ミサキだった。
腰まで伸びた黒髪を揺らし、端正な顔は食事の幸せをいっぱいに噛み締めている。
服装は相変わらずの上下体操着、暑いのか長袖を腰に巻いており、半袖にクォーターパンツとかなり薄着だ。
「おーいオオミナトさーん!」
セリカが手を振ると、驚いた表情でオオミナトがこっちを向いた。
「ひゃれ、エルドさんにセリカさん!?」
口いっぱいのカレーを飲み込みながらしゃべる。
っていうか結構大盛りなの食ってんだな。
「よおオオミナト、相席いいか?」
「どうぞどうぞ! わたし1人でちょうど寂しかったんですよ」
俺たち4人は、ゾロゾロとテーブルを囲んだ。
「あ、エルミナさんにアルミナさん。お久しぶりです!」
「ひ、久しぶり」
「どうも」
あっ、そうか。
オオミナトとは竜王国跡地以来、会ってないんだったな。
当然、レーヴァテイン大隊にこいつらが入ったのをオオミナトはまだ知らない。
っというか、連絡がつかなかったので教えようがなかった。
「オオミナトさん、紹介します! この2人は新たにレーヴァテイン大隊へ入隊したんッスよ!」
セリカが切り出す。
当のオオミナトはというと、普通に驚いているようだった。
彼女はスプーンを置き、昔の記憶を掘り起こす。
「いやー頼もしいです、ロンドニアでお互い血を吐きながら殴り合ったのが懐かしいですねエルミナさん!」
「そうね......、あんたのパンチはなかなか効いたわ」
飲食店でするには物騒過ぎる会話が響いたので、俺はすかさずメニュー表を広げた。
「まぁまぁ! 再会の喜びはじっくり味わうとして、何食うか決めようぜ」
「おーそうしましょう! わたし腹ペコなんッスよ〜」
どうにか誤魔化せたか。
俺はチラリとオオミナトを見た。
「そういえばお前ずっと連絡つかなかったけど、なにやってたんだ?」
「あぁすみません、ちょっとギルドの仲間と特訓してたんですよ」
「特訓?」
注文が決まり、店員さんにオーダーをする。
「そう、ちょっとした特訓です。あっ、すみません~お冷ください」
店員が注文を纏め、オオミナトの空のコップに水が注がれる。
「向上心があって結構だな、どんな特訓をしたんだ?」
「え〜知りたいですかー?」
一足先にカレーを食べ終わり、口元を拭きながら彼女は笑みを浮かべた。
「すっげー知りたい」
「じゃあ決まりですね! 明日の昼――――わたしと手合わせしてください!」
「はっ!? お前と手合わせ!?」
「はい、ただ見せるだけなんてつまらないじゃないですか」
まいったな、正直こいつめちゃくちゃ強いのに銃なしでどう立ち回ればいいんだか。
俺が逡巡していると、それを聞いていたセリカが手を上げた。
「はいはーい! じゃあわたしがオオミナトさんと戦いたいです!」
「お前が行くの!?」
「はい! 1回オオミナトさんの実力を確かめて見たかったんッスよ!」
ものっすごい意気込み。
これは止める理由もないし、まぁいいだろう。
「じゃあセリカさんが相手ですね、場所は王都近くの『悠久の滝』がある森、午後1時に会いましょう!」