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【完結済み】外れスキルの不遇魔導士、ゴミ紋章が王国軍ではまさかのチート能力扱いだった〜国営パーティーの魔王攻略記〜  作者: たにどおり@漫画原作
第ニ章【トロイメライ祭】

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第27話 脱出! トロイメライ・コロシアム

 

「さぁ諸君! 砲撃エリアからエスケープだ!!」

「エスケープもなにも始まっちゃってるじゃないッスかぁ! 35.6センチ砲弾で跡形もなく死ぬなんて嫌ですよぉ!!」

「ワッハッハッハッハッ!! 重巡洋艦もおまけでいるぞ! 突っ走れェッ!!」


 まだ修正射の段階だろう、地面を揺らす着弾音はそんなに多くない。

 だが、もし効力射が始まったら――――――


「少佐! 街の住民は!?」

「住民なら砲撃エリアのずっと外だ、冒険者たちも体勢を立て直して今は反撃と避難誘導をしている。撃ち込むのはもう使わないこのコロシアムのみ! 元魔王軍最高幹部様を盛大にふっ飛ばしてもらおうじゃないか!!」


 海に面した連絡橋へ差し掛かると、沖合に巨大な艦隊が浮かんでいるのが見える。

 これから彼らがここへ盛大に撃ち込むのだろう。


 その前になんとしても逃げなければ......!


「ッ! 正面に敵影!!」


 連絡橋の先に、10体程のゴブリンが伺えた。

 まだ残っていたか......! こんな時に!


「蹴散らすぞ!! 総員突撃せよッ!!!」


 弾なんてもうほとんど残っていない、ライフルに銃剣を付けた隊員と、エンピを構えたセリカが中心となって突進。

 その衝撃力をもって、さながら槍が紙切れを突き破るように正面突破。


 返り血を浴びながら、俺はコンバットナイフで飛びかかってきたゴブリンを切り裂いた。


「少佐! 徒歩じゃとても間に合いません!!」

「心配ないよエルド君、とにかく正面階段まで行くことを考えたまえ」


 俺は焦っていた。

 まばらに1発づつ落ちてきていた砲弾が、コロシアムのほぼ中心に着弾したのを最後に飛んでこない。


 それすなわち――――修正が完了し、全力射撃の寸前に来たことを意味しているのだ。


「あぁ――――――!! 死ぬ前にコローナ海軍カレー本舗さんでお腹いっぱい海軍カレー食べたかったッスー!!」


 セリカに至っては絶望的だと言わんばかりに、悲壮感を放っている。

 だが、大階段を降りた俺たちの前に希望は現れた。


 こだますエンジン音、そこには複数の兵員輸送車両が待機していた。


「迎えに来てやったぜレーヴァテイン大隊! 乗りなッ!」


 デスウイング達を監視、追尾していたあのスカウトが、先に出て車を持ってきてくれたのだ。

 真後ろを警戒しながら車両へ近付く。


「1班から順に乗車! 急げ急げッ!!」


 少佐に言われ、俺は機関銃の操作についた。

 その瞬間、コロシアムより大量の影が姿を現した。


「"影の執行者"か......! デスウイングの最後のあがきだな、総員乗車しつつ応戦! 機関銃班は撃ちまくれ!!」

「了ッ!!!」


 人型の影へ向かって、俺は兵員輸送車上部に備えられた銃口を向け、引き金を一気に引いた。


 凄まじい発射音が響き、大量の鉛弾が撃ち出された。

 次々と湧いてくる影を弾幕で薙ぎ倒し、部隊の撤退を掩護。


「各班長、乗車確認!」

「よし行くぞ! 出せ出せ出せッ!!!」


 全員の乗車を確認すると、輸送車隊は一斉に発進した。


「海軍より通信!『我、これより全力射撃に移行せり』とのこと!!」


 雷と地響きを合わせたような発射音が、海の向こうから聞こえた。

 頼む......間に合え!!


「弾着まで3、2――――1......今!!!」


 コロシアムが爆煙に包まれる。

 雨のように降り注ぐ砲弾が石組みごと影の執行者を吹き飛ばし、やがて連中の姿も瘴気も炎へ消えた。


 火の粉が頬を撫でるほどにギリギリのタイミングで、我々は脱出に成功したらしい。

 安心した反動か、銃座で一気に脱力する。


「お疲れ様ですエルドさん、初仕事にしては上出来でした」

「ありがとよ......、でもまあしばらく休みが欲しいな。さすがに疲れた」

「同感ッス、では帰りましょう――――王都へ!」


 後にトロイメライ騒乱と呼ばれることになるこの事件。

 表向きはモンスターによるただの暴走事件で終息したが、裏では『新生魔王軍』を名乗る組織の台頭。


 さらには檻が簡単に破壊できるよう細工されていたこと、ルナクリスタルを奪われた件も含め、第二次魔王戦争への引き金となったとされる。



修正射しゅうせいしゃ

本命の大砲撃のために、1発ずつ撃って少しずーつ弾着点を近づける作業。


効力射こうりょくしゃ

上の修正射が終わった後に行う、敵を絶対ぶっ殺すという気概に満ちた大砲撃。

直撃しなくても、炸裂した砲弾の爆風や破片で敵をバラバラにして倒せるので、とにかく撃ちまくる。

(奇襲のため、修正射しない時もある)

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