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第258話 天使と女神

下請け相手に調子乗ってイキってたらドジってお説教くらう子のお話です

 

 ――――魔都ネロスフィア。


「くっっそぉッ!!!」


 天使リーリス・ラインメタルは、自室の壁を勢いよく殴った。

 バラバラと破片が崩れ落ち、彼女の憤怒を伝わらせる。


「まさか勇者の魂を適合させた第2世代ホムンクルスが負けるなんて......、ありえない! 人間ごときがッ!!」


 怒りのあまりベッドを蹴り上げる。

 吹っ飛んだそれは机に当たり、粉々に砕け散った。


「なにが正統政府よ......! アルナ様に反逆した愚かな魔族めっ!! 媚びへつらってしか生きていけない下等種族! ロンドニア戦でわたしに助けられたのも忘れたか!!」


 声を荒らげる。

 彼女の不機嫌は最高潮だった。

 予定ならば自慢の新兵器で裏切り者を抹殺し、連合国軍の鼻先をぶん殴るつもりだったのに。


 それがどうだ、結果はこのざまだ。

 ホムンクルスは倒され、正統政府を自称する裏切り者が逃げおおせている。


 あまりに不都合が重なったリーリスは血管がブチ切れそうだった。

 だが言ってしまえば、全ては生産が終わったばかりの新兵器を逐次投入した彼女のミスが原因である。


 キチンと数を揃え、綿密な奇襲計画の下に運用すれば打撃は与えられただろう。

 それもこれも、女神に成果を誇りたかった故の結果だ。


 息を荒く吐くリーリス。

 そんな彼女の耳に声が響いた。


【随分と粗末な結果に終わりましたね......リーリス】

「ッ!!?」


 思わず振り向いた先には、1枚の羽根が落ちていた。


「あ、アルナ様......ッ! ち、違うんです! これは......」

【言い訳はいいわ、焦ったわねリーリス】

「も、申し訳ありません......」


 頭を垂れるリーリス。

 普段魔王ペンデュラムを虐げている彼女の顔は焦りでいっぱいになり、全身から吹き出した汗が服を濡らしていた。


【大勢に影響がないとはいえ、貴重な第2世代を浪費した責任は重いのよリーリス】

「......!」

【信仰が減りつつある今、連合国軍の侵攻を止めるリソースは僅かでも惜しいというのは......わかっているはずだけど?】

「ほ、ホムンクルスは裏切り者であるわたしの兄......ジーク・ラインメタルの部下たちによって殺されました。連中が亡命希望者を保護しに来ているなんて想定外でして......」


 羽根から魔力が溢れ出る。

 その勢いに、リーリスは数歩後ずさった。


【ペンデュラムに任せておけないから私はお前に一任した、想定外というのは嘘つきの吐く言葉よ。まさか無能な魔王と同じ言葉は繰り返さないわよね?】

「し、失礼しました!! ですがチャンスを......挽回のチャンスをください! 必ず裏切り者共を抹殺し、勇者を葬り去ってご覧にいれます!」

【やれるの?】

「軍魔都グランスフィア前面に、第2世代ホムンクルスを含めた大軍団を配置します! 必ずやここから起死回生の連勝を上げて見せます!!」


 しばらく黙る女神。

 リーリスの額からボタボタと汗が垂れ落ちた。


【いいわ......、世界樹誕生に必要なそれ以外のリソースを全て一任する。必ず連合国軍を食い止めなさい】

「はい!! 我らが主! 最高神アルナ様のために!!」


 役目を終えた羽根が黒ずむ。


 息をついたリーリスは、急ぎ将軍会議室へ走った。

【軍魔都グランスフィア】前面に部隊を集結させるべく......、それが全て王国軍の思惑通りに進んでいると知らずに。


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― 新着の感想 ―
[良い点] これが「勝ったな。風呂入ってくる!」なんですね。 そして愚痴るオバチャンの図。 [気になる点] だから何で兵器の対策とか根本的な事を考えない会議を「まだ」やっているのかw 殺な生物で無け…
[良い点] たたかいはかずだよあにき どっちが多い
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