第252話 警戒態勢発令!
――――王国軍第21駐屯地。
亡命希望者保護の情報を聞いてスタンバイしていた王国軍は、自らの備えの良さに感心することとなった。
「戦闘団長、レーヴァテイン大隊より通信です!」
「読み上げろ」
駐屯地の主力であるアトモス戦闘団の通信士官が、傍に座る戦闘団長へ通信を読む。
「我、亡命希望者の保護に成功。されど敵軍の追尾を受け現在交戦中、第1種警戒態勢の発令とただちの救援をもとむ!」
「そらみたことか! あいつらこっち目掛けて突っ込んでくるつもりだ」
戦闘団長は椅子を蹴った。
「俺の読みが大当たりだったな、あいつら俺たちごとこの事態に巻き込むつもりに違いない。噂通りのウォーモンガーだ......歩兵大隊長!」
「はっ!!」
側にいた士官たちを一瞥する。
「部隊の展開はどの程度進んでいる?」
「MG42機関銃班を中心に、第3警戒陣地への配置を行っています。ライフル分隊も既に警戒監視の任に着いています」
「よろしい、レーヴァテインを見つけたら装甲車ごと駐屯地に突っ込ませろ。敵は想定通り十字砲火での殲滅を目指せ」
「はっ!!」
緊急警戒用の警報を鳴らす。
これにより王国軍は夜戦への突入を開始した。
「砲兵中隊長!」
「ご心配なく、既にオルトナ川周辺への支援砲撃準備は完了しています」
「重砲を惜しむなよ! 効力射での徹底殲滅を心掛ける!!」
「了解!」
戦闘団長を含めた士官たちは、各々の準備に取り掛かる。
「戦闘団長! さきほど上空にいた低気圧が通過したようです......第1航空師団のワイバーン部隊にCAS(近接航空支援)を要請してはどうでしょう」
「よろしい、その旨を師団本部へ送れ」
「了解!」
士官たちと戦闘団長はテントを出る。
そこで、敷地内のあるものに目が行った。
「あれは88ミリ高射砲か?」
「はい、基地防空用として昼に設置が終わりました。まぁ制空権を確保しているので使わんでしょうが......」
「普通ならそうだろうな、だがここは最前線だ......なにが起こるかわからん。防空警報を発令せよ!」
「はっ!!」
高射隊の人員が88ミリに取り付く。
既に雨は止み、月がライトだらけの基地を照らしていた。
命令を受けた戦車中隊が、オルトナ川手前の警戒陣地へ展開する。
基地から伸びた探照灯の強烈な明かりが、夜の闇を裂いていた。