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【完結済み】外れスキルの不遇魔導士、ゴミ紋章が王国軍ではまさかのチート能力扱いだった〜国営パーティーの魔王攻略記〜  作者: たにどおり@漫画原作
第ニ章【トロイメライ祭】

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第25話 人生で1番気張れ

 

 習得した付与魔法の名は『貫通ショット』。これならデスウイングの体を貫いてコアも撃ち抜けるだろう。

 だが、相応に問題もあった。


「くそッ!!」


 新たに迫る触手を、俺はもう弾が残り少ない拳銃で迎撃。

炸裂ブラスト』で爆発を起こし、すぐさま最後の弾倉マガジンを拳銃に入れる。


 そう、俺の付与魔法は現在2つ同時には使えない。

誘導ホーミング』なら照準は合うだろうが、おそらく弾は届かない。


 よって、唯一可能性のある『貫通ショット』を使うなら完全自力での照準が求められた。

 だがいくらアーチャー職とはいえ、狙撃など俺にはまだできない。


 頭の中に一か八かの賭けが浮いては消える、そして葛藤の時間は不意に奪われた。


「エルドさん! 前ッ!!」

「っ!?」


 デスウイングの触手が、俺の乗る女神像を破壊したのだ。

 宙に放り出された俺へさらに無数の巨大な触手が迫ってくる。

 もうこうなったらヤケだ! 人生で1番気張れッ!!


「うおおぉぉぉぉぉぉぉッ!!!」


 空中で体勢を立て直した俺は触手の上に着地、一心不乱に駆け出した。

 真っ黒なスライムの触手を道代わりに、駆け下りるようにデスウイングへ迫る。


「道を――――開けやがれッ!!」


 最後の拳銃弾を連射、突っ込んできた触手攻撃を全て粉砕すると同時にホールドオープン。

 つまり、拳銃の弾が切れたのだ。


「エルドさん! 今ッ!!」


 俺は両手にスナイパーライフルを握ると勢いをつけてジャンプ、デスウイングの脳天を半長靴ブーツで踏みつけた。

 銃口を真下に突き付け、コッキングレバーを引いた時点でやることは1つ――――!!


「『貫通ショット』!!!!」


 全自動式のライフルを撃ちまくった。

 狙撃できないならゼロ距離で、貫けないなら真上から付与魔法付きのライフル弾をぶち込めばいい!


 猛烈な銃撃音が響く。

 最後の弾を撃ち込み、薬莢やっきょうが地面に落下したのとそれはほぼ同時だった。


「グモッ......ゴギュボボボボボッ!!?」


 デスウイングの体が下から崩れ出し、あれだけ暴れまわっていた触手も全て消滅していくのだ。

 どうやら成功したらしい......。


「おお! 溶けていくぞ!」

「マジかよ! あの新入りやればできるじゃねえか!!」


 古参の下士官方が銃を掲げて喜んでいる。

 なんとか、与えられた仕事はこなせたらしい。


「エルドさん!!」


 闘技場へ降りてきたセリカとハイタッチを交わす。

 彼女もまた、命を張って掩護してくれた功労者だ。


「お前の掩護と、そのスコップさばきのおかげだ」

「わたしは近接職ッスよ、パーティーの壁くらいいつでも任せてください。良い射撃でしたよ」


 セリカの見せたそれは、心なしか今までで1番清々しい笑顔だった。


「銃の威力は不足していた、でも得意の付与魔法エンチャントと大胆な戦術でヤツのコアを撃ち抜いた。賞賛に値するよ」


 後ろから来たのはラインメタル少佐。

 勇者モードは解けているものの、外傷は1つも負っていないようだった。


「さて、これで終わったと思いたいが諸君。まだ気を抜くなよ」

「えっ?」


 少佐は黒い水たまりを見つめると、ニヤリと微笑んだ。


「まだ生きてるのだろうデスウイング? 芝居はやめてさっさと出てきたまえ」


 真っ黒な水たまりがせり上がったと思いきや、そこには先程よりずっと小さなスライムが1匹。

 まさか......。


「勇者め......、まさか5年でここまで強力な組織を作っていたとはな。だがここまでだ」


 全員が銃を構える。

 現れたデスウイングからは、黒い瘴気のようなものが出ていた。

 ヤツは俺たちを一瞥すると、赤い目を光らせた。


「どうせだ国家の犬共よ!! 今日ここで死ね!」


 瘴気が溢れ出し、一帯に充満していく。

 まさかこいつ――――――


「闇属性最終魔法『ワールド・ブラックミスト』。私の命と引き換えに、トロイメライごと貴様らを葬ってくれよう」


 デスウイングが仕掛けてきたのはありきたり、だが最悪の一手である――――自爆攻撃だった。


「あと30分で、この街は瘴気に飲み込まれるだろう! ヒャッハッハッハッハッハ!!!」


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