第248話 魔王城から追ってきたなにか
もう1年半もこの作品書いてるんですね......。
当方飽き性なんですが、いつも感想をありがたがってつい書いちゃいますね
「はあっ! はぁっ! 頑張って将軍、もう少しでレーヴァテイン大隊との合流ポイントに着く」
転移魔法で魔王城から逃げてきたアルミナ、エルミナ、ブレストは雨の中必死で合流地点を目指していた。
周囲は夜の闇と大嵐が重なり、とても足元が良いとは言えなかった。
「はぁっ、申し訳ございませんお二人共......。私の足が遅いばかりに」
「そんなの気にしないでよね、アンタのおかげで魔王城から脱出できたんだから。さぁもうひと踏ん張り!」
互いに励まし合う。
なんとしても魔王軍を救うため、亡命政府を打ち立てねばならない。
それには生きて王国へ行くことが絶対であった。
だが......。
「ッ!?」
後方からブレスト将軍を押していたエルミナが立ち止まった。
「ど、どうしました?」
「静かに......」
緊張が漂う。
戦闘において相当の自信を持つ彼女が、ここまで警戒を露わにするのは珍しかった。
「もしかしてエルミナ......魔王が追ってきた?」
「いや、魔王の魔力じゃない......。これは......」
魔力の質を測ったエルミナは、思わず歯を食いしばった。
「魔王じゃない......『勇者』!?」
その言葉に全員が取り乱す。
「それは......、ジーク・ラインメタルのこと?」
「違う! でも明らかにおかしいの! こんなの存在していい力じゃない!」
エルミナから魔力が噴き上がった。
それは炎のように全身を包む。
「何をする気!?」
「お姉ちゃんはブレスト将軍を連れて早く先へ!! わたしが時間を稼ぐから!」
「......それほどまでの何かが近づいてるってことね?」
「うん、だからお願い......早く!」
歯を食いしばったアルミナは、ブレスト将軍を引っ張った。
「あ、アルミナ様!?」
「急ぐわ将軍! 走って!!」
2人の離脱を確認したエルミナは、真っ暗な闇へ正対した。
その瞳は紅眼に染まっている。
「さて、何分持つかしら!」
魔力を右腕へ集中させたエルミナは、突き出すと同時に全て解放した。
「滅軍戦技――――『ブラッディ・ノヴァ』!!!」
かつてロンドニアで時計塔を消滅させた技を、森へ向かって放つ。
効力射も顔負けの魔法による面制圧攻撃に、視界外の木々までことごとく薙ぎ倒された。
後には嵐の音と暗闇だけが残った。
エルミナはその中で自身の魔力により煌々と輝いていた。
「はぁっ、はぁっ......!」
全身全霊の一撃を、迫っていた"何か"にぶつけた。
しかしエルミナの背筋は凍ることになる。
「ッ......!!」
へし折られた木々を通りぬけて、"それ"は何事もなかったように姿を見せた。
「やっぱり......、魔王城の地下で抜け殻になってた繭の正体がアンタね」
エルミナの正面に現れたのは、紛れもなくウォストピアで死んだはずの獣人。
猫耳を生やしたキャット・ピープルの少女――――勇者サーニャ・ジルコニアだった。
「ここから先には行かせない、掛かってきなさい"勇者モドキ"」
「ハッ、アハッ! アハハハハハハハハハハッ!!!」
勇者モドキの瞳が"金色"に染まる。
滅軍戦技が直撃したはずのその体はほとんど無傷だった。