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第247話 低気圧襲来

 

 ――――王国軍第21駐屯地。


【竜王国跡地】への本格侵攻を行っていた連合国軍だが、突如現れた巨大な低気圧によってその足を止められていた。


「ひどい嵐だな......、予報大ハズレじゃねえか」


 駐屯する第52歩兵連隊の連隊長が、コーヒーを片手に野戦テントの中で愚痴を漏らす。

 それもそのはず、気象予報官の言い分だと気温の低下次第で雪まで降るかもしれないということだった。


 王国軍は雪中行軍用の装備が実は足りておらず、彼らが冬季攻勢を行わなかったのは雪を嫌ったからだ。


「こんな変な低気圧は初めてですよ連隊長、まるで魔法のようだ」

「ほぉ、っつか天候操作なんてそもそも魔法で可能なのか?」

「魔導士を10万人くらい集めれば......擬似的には可能でしょう、ですがこんな規模で嵐なんて作れませんし、そもそも魔王軍にはもう数えるほどしか魔導士が残っていないはずです」


 不可解な話である。

 とりあえずこの場で出せる結論は"異常気象"ということだけだった。


「リーパー1より通信です、本駐屯地が低気圧の直下なため迂回。――――ワイバーン部隊は予定を変更して第13駐屯地へ向かうとのことです」

「空からの偵察もしばらくは休みだな......、っとなると彼らが心配だ」


 連隊長は席を立った。


「戦闘団長はどこにいる?」

「はっ、砲兵大隊長と低気圧通過後のスケジュールを話していたかと......」

「どうにも嫌な予感がする、各歩兵大隊を臨戦態勢で配置しろ。俺は戦闘団長に野戦砲と戦車中隊の準備を進言する」

「えっ、敵は確認されていませんが......」

「バカ野郎! あのトラブルメーカーで有名なレーヴァテインが亡命希望者を保護しに向かったんだ。絶対になにか来る、追加でMMG(汎用機関銃)も設置しておけ!」


 ◆


「ひゃ〜凄い豪雨ッスね」


 竜王国跡地にある建物内で、カッパを着たセリカが外を見ながらつぶやく。

 ここは元々城下町だったらしく、雨風をしのげる建物があちこちにあったのだ。


「しかし軍の天気予報では快晴だったはず......、なぜいきなりこんな大嵐に」


 外を伺っていたヘッケラー大尉が、険しい顔をする。


 そう、俺たちは亡命希望者との待ち合わせ場所に来ていた、もう3分もすれば約束の時間である。


「オオミナト、誰か見えたか?」


 屋上で警備していたオオミナトに聞くと、カッパをずぶ濡れにしながら降りてきた。


「いやー誰も見えませんね、っていうか凄い雨ですよ〜。これじゃ遅れるのも無理ありませんねー」


 彼女の言うとおり、どうも向こう側が遅れているようだ。

 予定ならばもう姿が見えていてもおかしくない。

 確か将軍が1人と吸血鬼が2人......、少佐はよくもまぁ主要人物を引き抜けたもんである。


 最も、その少佐はスケジュールの都合上ここにはいないのだが。


「とはいえここはまだ制圧できていない地域だ、あまり長居したくないな......」

「そうッスね〜、まぁそうなったら魔王軍をこのエンピでしばき回すだけですが」


 ドヤ顔でエンピを構えるセリカ。

 こいつはもうライフルは持たず、エンピと腰にハンドガンだけ携行するスタイルのようだ。


「あっ、じゃあわたしがちょっと出て周囲を見てきましょうか?」

「お前迷子にならないか......?」

「この建物大きいんで、一応大丈夫だと思いますよ。それにわたしならスピードパラメーターもこの中でトップですし、服装も動きやすいですので」


 彼女は相変わらず、カッパの下はちょっとの上着と短パンなのでまぁ濡れた軍服の俺たちよりかは機動性があるだろう。

 合理的......か。


「ではオオミナトくん、ちょっと周囲を見てきてくれるかい? もし亡命希望者を見つけたらこの建物まで連れてきてくれ」

「了解です、ヘッケラー大尉」


 窓から飛び降りたオオミナトは、とても素早い身のこなしであっという間に見えなくなった。

 一応通信機を持たせてあるので、最悪迷ってもなんとかなるだろう。


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― 新着の感想 ―
[良い点] >ドヤ顔でエンピを構えるセリカ。 > こいつはもうライフルは持たず、エンピと腰にハンドガンだけ携行するスタイルのようだ。 最強装備だ
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