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第245話 魔王VS最高幹部

 

 魔王城地下――――ホムンクルス製造工場。


「うっわ〜、気持ち悪いわねここ」


 魔王軍最高幹部であるエルミナが、桃色の腰まで伸びた髪を揺らしながら周囲を見渡す。


 そこはまるで神殿のように真っ白で、巨大な柱が広大な面積に渡って広がっていた。

 さらに言えば――――――


「うわぁ......柱にもたれかかるようにして"繭"が集合してる......、キモォ」

「時間がない――――エルミナ、ブレスト将軍。作業は1時間以内に済まそう」


 リーダーのアルミナが、亡命仲間2人に指示を出す。

 作業とは単純明快......このホムンクルス製造工場の"

 大爆破工作"だ。


 3人掛かりで素早く炸裂魔法を設置し、逃げる瞬間と同時に起爆してやるのだ。


「しかしアルミナ様......、凄まじい数ですよ。この繭を全部爆破するのに間に合いますかね?」

「大丈夫よブレスト将軍。おそらく魔王や他の将軍、最高幹部ヒューモラスは気づいていない......。ただ」

「ただ?」

「わたしたちの"社長"が出てきたら終わりね」


 この言葉の意味を、ブレスト将軍は回転の早い頭ですぐに理解した。


「女神アルナ......ですか」

「えぇ、神話では"世界を見下ろす目"すら持っていると言われてる。そんなのを敵にするわけだから時間なんてホントは1分もない」


 エルミナとブレスト、少し離れてアルミナが素早く作業を進めていく。


「うげぇ......動いてるし、ホントなにに使うつもりなのかしら」


 気味悪がりつつも、エルミナは誰よりも素早く炸裂魔法を"繭"の傍に設置していった。

 さすがに最高幹部2人と将軍、3人共かなり能力が高いので工作は順調に進んでいった。


 もう半分ほど作業を完了した頃だろう、次の繭に移ったブレスト将軍は慣れた手付きで魔法を設置しようとした。


「次はこれですね、って......えっ!?」


 予想外の光景に固まるブレスト。


「なに、どうしたの? チャッチャと作業しないと女神にバレ――――――」


 エルミナも顔を青くした。

 2人の視線の先には......内側から破られて空になった繭があった。

 それも1個ではない、一柱のグループである4つ全部が空になっていたのだ。


「こりゃ完全に出ちゃってるわね」

「ど、どうしましょうエルミナ様......」

「確認したけどこの部屋にはいない、今はお姉ちゃんの言うとおりに作業を進めましょう」


 気がかりではあるが、今は無視することにした。

 だが――――――


「あれ、こんな魔力あったっけ」


 空間内の魔力が1つ増えたのだ。

 それはこの場の誰よりも巨大、さらには作業中だったアルミナの真横に湧いたのだ。


「転移魔法ッ!?」


 時間切れであった。


「貴様ら......ッ! どういうつもりだぁ――――――――――――――――!!!!!」


 魔王の間から転移してきたペンデュラムが、凄まじい勢いで大剣を横に振った。


「ぐぅ......あッ!?」


 寸前に氷を形成してガードしたアルミナだが、そのまま吹っ飛び後方の柱に激突した。


「んあっ......! くッ!」


 瓦礫と一緒に崩れ落ちるアルミナ。

 彼女の予想通り、この計画は女神によって完全にバレていた。

 魔王ペンデュラムが血相を変えてこの場へ飛んできたことが、なによりの証左だった。


「お姉ちゃん!!」


 魔王軍最強の身体能力を持つエルミナが、ペンデュラムへ強烈な蹴りを浴びせる。

 くらえば盾を持った重装歩兵が彼方に吹っ飛ぶ威力だったが、ペンデュラムは声すら出すことなく剣で受けていた。


「ッ......! さっすが魔王様!」

「その様子だと......全てを知ったようだな。エルミナ」

「えぇ! だからこそ疑問です!!!」


 続けて攻撃を連打するエルミナ。

 そこへ、リカバリーしたアルミナが氷槍を持って左右から挟撃する。


 氷槍は脇腹を狙ったが、黒鎧はヘコみもしない。


「貴方ほどの方がなぜ! 女神などという存在の下僕になっているのですか!!」

「それはこの世の摂理だ、アルミナ」


 最高幹部である吸血鬼姉妹の攻撃を、ペンデュラムは軽くいなす。


「遥か昔から脈々と続くシステムは全てアルナ様のため、歯車として生きるのが我々魔族なのだ!」


「ぐぅッ!?」


 肘打ちを受けたエルミナがよろめく。

 ペンデュラムは睨みつけてくる彼女の頭を掴むと、柔らかい腹部に膝蹴りを叩き込んだ。


「ガッハ......!?」


 全身が砕けそうな一撃に、エルミナは口から血をこぼした。


「ッ......!」


 やはり魔王には勝てない......!

 すぐさま悟ったアルミナは、氷槍をペンデュラムへ投擲した。


「無駄なあがきを......! っ!?」


 魔王がガードする一瞬の隙をついて、アルミナは戦闘不能のエルミナを掻っさらった。

 向かう先は――――


「お2人共! 早く!!」


 転移魔法を準備していたブレストだ。


「ブレスト貴様! お前もこの摂理に反発するのか......!」

「魔王様! 私は女神などという存在に忠誠を誓った覚えはありません」

「だからなんだ! 貴様の使命は魔王軍への献身だ!」


 アルミナとエルミナが魔法陣の中へ入る。


「はいっ! だからこそ私は――――この後に【亡命政府】を樹立し、連合国軍との講和を目指します!!」

「ブレストォッ!!! それがなにを意味するのかわかっているのか!!!!」

「わかっています! ですがこれが魔王軍を救う最後の望みなんです!!」


 仕掛けられた炸裂魔法が一斉に起爆する。

 3人の姿が消えた瞬間、ホムンクルス製造工場は大爆発に覆われた。


 大量にあった繭の、実に半数が消滅する威力であった。

 爆炎の中で、ペンデュラムは防御魔法を張りながらつぶやく。


「亡命政府か......やれるものならやってみろブレスト、アルミナ、エルミナ。貴様らに......世界そのものに等しい存在を相手できるのならばな」


 ペンデュラムはグシャリとヘコんだ部分の鎧を触る。

 さっきの攻撃でできたものではない......、それはリーリスが遊び半分で魔王を殴った時に簡単にできたものだ。


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