第243話 招集
「っで、オオミナトがこうして拉致られてきた感じですか......」
王国軍コローナ駐屯地の一室で、俺は部屋に放り込まれたオオミナトを見て呟いた。
目の前にはヘッケラー大尉が立つ。
「そういうことだ、何分緊急の要件だったんでね」
「なんなんスか? その要件って」
エンピを人形のように抱きしめながらセリカが聞く。
「俺は報告でしか知らんが、君らは"ホムンクルス"と聞いて思い浮かぶものがあるだろう?」
「あ〜......、あのよくわからないやたらタフだった自称天使ですか」
「そうだ、ホムンクルス製造工場で戦ったその亜種が前線に現れたらしい」
ヘッケラー大尉いわく、そのホムンクルスはウォストピアの亜人勇者と同じ見た目をしていて自爆攻撃をしてくるとのこと。
自爆しかできない勇者をホムンクルスとして量産しているあたり、魔王軍は倫理観をかなぐり捨てて戦争をしているらしい。
「参謀本部の見立てでは、そいつの不死属性に対してオオミナトさんの魔法が有効だとしている」
「えっ、じゃあオオミナトさん1人を最前線に送るんスか!?」
セリカの問いに、ヘッケラー大尉は首を振った。
「そんな無茶は大隊としても許容できん、だから我々が招集されたのだ」
「なるほど、じゃあ大尉やセリカさん、エルドさんが護衛してくれるという感じですね!」
「そういうことだ、最前線には我々4人で行く」
4人......、ふと俺は思ったことを口にした。
「ラインメタル少佐はいないんですか?」
「少佐はなにか用があってか今、東ウォストピアにいる。まぁ気が向けば合流してくれるだろう」
「東ウォストピアって......今王国領の?」
「あぁ、一応自治政府があるらしいが実質植民地だ。そんなところでなにをしているのやら......」
「魔王軍に負けじと、倫理観を捨て去った実験をしていたり......ですかね? まぁ冗談ですけど」
「はっはっは! ありそうだ」
笑うヘッケラー大尉へ、セリカが手を上げた。
「でも、いくら効果的だからって前線がたった4人の増援で変わりますかね? さすがに限定的では......それならもういる前線から小隊引っこ抜けばいいじゃないッスか」
セリカとしては、母親が入院中の王都からできるだけ離れたくないというのが本音だろう。
だが、大尉は答える。
「その件に関してはごもっともだ、だがセリカ・スチュアート1士。我々の任務はその限定的な地域の防衛にある」
「防衛?」
首をかしげる俺たちへ、ヘッケラー大尉は口を開いた。
「我々はこれより――――魔王軍からの亡命希望者を保護しに向かうのだ」