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第239話 VS量産型勇者

 

「中隊長より全車! これより戦車部隊の援護に向かう!!」


 突如として奇襲された王国軍部隊は、混乱に飲み込まれながらも戦闘態勢に移行した。

 一足先に渡河してエリアを確保していた装甲車が、川辺で射線を確保。


「撃てッ!!」


 戦車はとっくに爆発してしまっており、乗員の生存が絶望的なことから迷わず機銃掃射をした。

 曳光弾が泥だらけの川へ突っ込む。


「速いぞっ!!」


 全く同じ様相を持つ少女たちは、凄まじい跳躍力で弾丸をかわした。

 3体が装甲車側へ、3体がまだ渡河していなかった戦車部隊へ向かう。


「アイアンクローよりCP! 第32機械化混成連隊は現在攻撃を受けている! 敵戦力は6! 至急応援を求む!!」


 通信を行いながら、ハーフトラックがMMGを連射する。


「運転手! 全速で後退しろッ!!」


 エンジンが唸り、トラック部隊が後進を開始する。

 距離さえ開ければモンスター同様問題はない。

 そう判断したのだ。


「おいおいおい! なんて奴らだ!!」

「もっとだ! もっと飛ばせッ!!」


 だが、少女たちは無表情でトラックに追いすがってきたのだ。

 かなり速度は出ている、なのにだ。


「め、命中っ!!」


 銃身が焼き付くまで撃っていたMMGが、亜人の少女へ命中した。

 7.92ミリ弾によりその腕がもがれる。


「あと2体だ! って......なッ!?」


 腕をふっ飛ばしたはずの亜人は、顔色一つ変えずに突っ走っていた。

 それどころか、グングン距離を縮めてくる。


「化け物めッ......!! 来やがれ!!」


 中隊長が車内にあった銃剣を取り出す。

 しかし弾幕をかわした亜人のうち1体が、隣を走っていた装甲車へ飛びついた。


「うわっ!!?」


 なんと、亜人は装甲車へ張り付くとニヤリと笑い、瞳を眩い金色に染めながらその体に魔法陣を浮かべた。


「まさかッ!!」


 機銃手が悟るよりも早く、敵の亜人は体ごと大爆発を起こした。

 その爆風は凄まじく、並走していた他のハーフトラックがひっくり返るほどだ。


「ぐおあっ!!」


 とんでもない自爆攻撃をくらい、装甲車中隊はあっという間に指揮機能を麻痺してしまう。


「10(ヒトマル)各車! こちら10(ヒトマル)! 5秒後に停止! 射撃せよ!!」


 一方、まだ渡河していなかったので川へ沈まずに済んだ戦車小隊も追撃を受けていた。

 全速でバックしていた"4型戦車H型"が、射撃のために急停止する。


「弾種榴弾! 正面自爆兵指定! 小隊集中――――――撃てッ!!」


 轟音と共に榴弾が撃ち出された。

 手前に着弾した砲弾は、破片を音速で飛ばすことによりショットガンのように激しく少女たちをズタズタにした。

 しかし――――――


「ダメです! 連中止まりません! まるで不死身だ!!」

「揃って同じ顔しやがって気味が悪い!!」


 バックしながら車載機銃を撃ちまくる。


「こちら車長! 対歩兵戦闘! "キャニスター弾"装填!」

「了解! 現在装填中!」


 "キャニスター弾"とは、簡単に言えば戦車の主砲から撃つショットガンである。

 その威力はトレンチガンなどの歩兵用とは桁外れで、車両版ショットガンとだけあって当たった者をミンチに変えてしまう。


「装填よしっ!!」

「こちら砲手! 射撃用意よし!!」

「了解! こちら11(ヒトヒト)! キャニスター弾発射用意よし!! 射撃合図求む!!」 


 畑を踏みつぶしながら戦車は後退を続ける。

 突っ込んでくる亜人の身体に、爆裂魔法陣が浮かんだ。

 装甲車部隊はあれに取り付かれてやられたのだ。


「足ごと消し去ってやる! 撃てッ!!」


 ――――ドゴオォンッ――――!!


 近距離から放たれたキャニスター弾は、凄まじい密度で自爆兵を襲った。


「......ッ!!??」


 不気味な少女の皮をかぶった敵は、足から頭までまんべんなく消し飛んだ。

 当然、足がなければ距離は詰めれない。


「耐ショック姿勢!!」


 3体の亜人が大爆発を起こした。

 体に刻まれた爆裂魔法が起動したのだ。


 戦車部隊は急停車する。

 しばらくして爆風が止むと、敵の気配は完全に消えていた。

 戦車小隊長が通信を行う。


「こちら11、敵の奇妙な自爆兵は片付けた。アイアンクロー(装甲車部隊)、そっちは無事か?」

『あー......こちらアイアンクロー、こっちは爆風でひっくり返っちまった。それに1台持ってかれた』

「俺たちも渡河作業中に4台失った......、まさかあれが噂のホムンクルスか......」

『そのようだ、もう少し隣の部下の話を聞いとくべきだったよ......』


 この戦いを皮切りに、戦線各地で同じ外見をした不死身の自爆兵が目撃されるようになる。

 連合国軍はこれらの敵に対して急速に対策を強いられることとなった。


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[良い点] 勇者爆弾 自爆兵より始末に悪い [一言] あれはエンピじゃ分が悪い M79でグレネードぶち込むか
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