第233話 宴会
――――王国軍 アクローノ駐屯地。
戦闘を終えた俺たちは、参謀本部の指示で手近だったここに集められた。
「ヘッケラー大尉、皆さん! ご無事でしたか!」
駐屯地の食堂に着いた俺たちは、先に着いていたヘッケラー大尉たちレーヴァテイン大隊の先輩を見つける。
良かった......、まさかあの絶望的な戦況を耐え抜いてしまうとは。
大尉いわく、俺たちがハルケギニアを討伐したのと同時に魔王軍は撤退してしまったらしい。
もう3分戦闘が続いていたら犠牲が出ていただろうと言う。
無事の再会を喜んでいると、ラインメタル少佐が前に出てきた。
「諸君、任務ご苦労だった! 今日をもって我々レーヴァテイン大隊には誉れ高きドラゴンスレイヤーの称号が輝くだろう。各員の奮戦と奮闘、挺身に感謝する!」
少佐の声と同時に、大量の食事と酒が机に並んだ。
どれも食欲旺盛な軍人なら誰もが好む味の濃いやつだ。
「我らが参謀本部は、諸君らの健闘を讃えて奢ってくれるそうだ! 好きなだけ喰らい、可能な限り飲み干せ!!」
「「「「「うおおおおおおおおおぉぉぉおおおおッッ!!!!!」」」」」
みんなが一斉に食事をがっつき始めた。
あの伝説と呼ばれた慟哭竜を仕留めたのだ、場は一気に宴会モードになる。
「お前らはジュースだな、ほれ!」
「あ、ありがとうございます」
アルト・ストラトス王国ではお酒は18歳からである。
なので俺とセリカ、オオミナトはブドウジュースを頂いた。
「ワッ、このジュースすごく美味しいです......」
オオミナトがほっぺを押さえる。
「ヘッケラー大尉いわく、王国のブランドワインを造る過程で生まれる、高級なブドウジュースらしい。味わい深さはワインと変わらないんだと」
「へ〜、初めて飲んだかもです」
ゴクゴクと夢中で飲むオオミナト。
向こうではセリカがヴルストの食べ比べをしている。
すっかり盛り上がった食堂だが、俺は肝心の人が見当たらないことに気がついた。
そういえば、少佐はどこに行ったんだ......?
宴会開始から早々に立ち去ってしまったようで、その姿はどこを探しても見当たらない。
あぁなるほど、こういう時に上官がいると部下が羽目を外しにくいと配慮したのかもしれないな。
さすが分かっておられる。
俺はなにも知らないままそう解釈し、ジュースを喉に流した。