第231話 王国海軍第1戦隊VSハルケギニア
WW2クラスの戦艦VSドラゴンのガチ殴り合い回があるのは多分本作くらいです
「第3戦速、面舵いっぱーい! 戦闘! 右砲ー戦!!」
「よーそろー! 第3戦速!!」
トロイメライ沖に展開した王国海軍第1戦隊は、左舷側面をハルケギニアのいる陸地に向けるため一斉回頭していた。
上空から来る"本命"を確実に当てるための、捨て身の攻撃だ。
「全艦主砲照準よし! 射撃用意よし!」
「発射用意よし!!」
35.6センチ砲に加え、41センチ砲が旧トロイメライコロシアムに向けられる。
電文が打たれ、艦首が白波を切った。
これら第1戦隊は、ウォストクローナ沖海戦で圧勝した王国海軍の決戦艦隊だ。
参謀本部は彼らにしかこの任務はこなせないと踏んでいる。
「主砲3型弾!! 攻撃開始――――――――――――――ッッ!!!!」
主力である《ロング・ゲート級戦艦》、及び《ダイヤモンド級巡洋戦艦》が、次々と主砲を撃ち放った。
凄まじい衝撃が海面を走る。
第1フェーズ、飽和攻撃が開始されたのだ。
この『3型榴散弾』は、元々飛行中のワイバーン等対空目標に対し撃つことを想定している。
それでも、対空兵器というのはその火力から大抵が対地攻撃に転用可能だ。
一定高度で炸裂してシャワーのように浴びせられる砲弾は、魔導士100人分にも等しい面制圧攻撃ができるのである。
「弾着まで10秒!! 次弾装填急げ!!」
2門のうち発射を行った1門が装填のため水平に戻され、もう1門が仰角を取る。
「第2射、撃――――――――――――ッ!!!」
再び爆風が吹き荒れた。
このように主砲を交互に撃つことによって、絶え間なく砲弾をハルケギニアへ浴びせるのだ。
「第1波弾着まで3、2――――――炸裂、今ッ!!!」
砲撃音を警戒していたハルケギニアは、突如空から降ってきた砲弾に襲われた。
「ゴアアアアァァア――――――――――ッ!!?」
空中で炸裂した3型榴散弾は、花びらのように開いて子弾をばら撒いた。
雨のように面制圧攻撃が降り注ぐ。
飛行しようとしたハルケギニアは完全に地面へ釘付けとなった。
「第2波着弾! 観測手より艦橋! 砲撃効果認む!! 同一諸元! 効力射!!」
戦艦隊から再び榴散弾が撃ち放たれた。
大口径の戦艦が行う対地攻撃はまさしく最強の制圧力を誇り、この攻撃だけで魔王軍の基地なら2、3個吹き飛んでいるだろう。
それでも、制圧力をカバーしている分3型榴散弾ではドラゴンに致命打を与えられていなかった。
ハルケギニアは砲撃の合間、一瞬の爆発の隙を狙って大口を開けた。
「ガアァッ!!!!」
極太のレーザーが慟哭竜ハルケギニアの口から放たれる。
その光は艦隊からもよく見えた。
「観測手より艦橋!! 閃光視認! 目標の魔法攻撃です!!」
「回避運動! 取ーりかーじ!」
艦隊は一斉に舵を切るが、あまりにも高初速のそれはあっという間に着弾した。
「《フォッグ・アイランド》被弾! 速力低下!!」
艦橋要員が双眼鏡で艦隊後列の《フォッグ・アイランド》を捉える。
レーザーは艦後部をえぐっており、火災まで発生していた。
「《フォッグ・アイランド》より入電!! 我、後部砲塔に被弾! 航行の支障軽微なれど即時の次弾発射は不能!!」
「チッ......!!」
主力艦の被弾により、弾幕は一気に薄くなった。
「観測より艦橋! 第2射来ます!!」
「面舵いっぱーい!!」
再びトロイメライより伸びてきたレーザーは、《ロング・ゲート》を掠め後方の駆逐艦をぶった斬った。
「駆逐艦 《ブリザード》大破! 現在総員退艦中!!」
「後衛を救助にあたらせろ! 戦艦隊は引き続き射撃!!」
壮絶な撃ち合いが展開された。
このままのペースでいくと艦隊が壊滅しかねない。
まだか、まだ来ないのか......。
全員が祈ったその時、電探員より報せが入った。
「電探に反応!! 高速で飛翔する物体25機を探知! 前衛に誘導要員のワイバーンも確認――――来ました!! 新型兵器『V−1』です!!」
艦隊の捨て身の囮によって、『V−1』編隊はトロイメライ上空にまで撃墜されることなく到達していたのだ。
「転舵しつつ射撃!! 王国の一撃をトカゲに喰らわせる最初で最後のチャンスだ!! 絶対に飛び立たせるな!!」
王国の望みは、トロイメライ上空に辿り着いたレーヴァテイン大隊の精鋭に託された。