第227話 作戦準備
ドラゴンがトロイメライを占拠して5日後――――、王国軍は街の奪還作戦を本格的に開始した。
「急げ急げ! なんとしても作戦に間に合わせるんだ!!」
《強襲揚陸艦レッド・フォートレス》に、続々と兵員や物資が詰め込まれる。
さらに、王国海軍基地をあらゆる水上艦艇が出港していった。
タグボートによって離岸したダイヤモンド級戦艦2隻が、コローナ湾から王国東海岸へ向かう。
沖合では他の艦隊も待機しており、市民は王国旗を振ってそれを見届けていた。
また、奪還作戦の準備は王国全土で展開される。
大陸とトロイメライ市を分断するアクローノ海峡、その大陸側沿岸地域にも王国軍の姿が見られた。
「こちら第2、第4戦略ロケット大隊、現在部隊展開中。送れ」
「了解、展開が完了次第、射撃準備態勢に移れ。送れ」
今回の作戦は大きく3つのフェーズに分けて行われる。
まず第一フェーズ――――――
『こちら第1戦隊旗艦ロング・ゲート、我々の任務は"遠距離飽和攻撃"を行うことである。主力戦艦は艦対地砲撃を想定、"3型榴散弾"をドラゴンに浴びせ、徹底的に釘付けにせよ』
トロイメライ市を占拠したドラゴンは翼を痛めており、魔力充填のためしばらく動かないというのが王国情報部の出した結論だ。
そのため、対空火器が有効でないドラゴンを地上にいる内に叩くことこそ作戦の要。
また、敵は高出力レーザーによって接近した飛翔体を撃墜することが確認されており、『V−1』の着弾をより容易にするため当初渋っていた艦砲射撃を行うこととなった。
この第1フェーズは、砲弾を旧コロシアム周辺にのみぶつけることが望まれる難易度の高いものである。
そして第2フェーズ――――――
『"V−1"本体のロック完了、全発射台射出準備よし!!』
『魔力供給システム、電気系統、注水装置、オールグリーン』
アクローノ駐屯地の演習場で、いくつもの発射台に『V−1』が設置されていた。
この第2フェーズこそ、新型飛行爆弾によるドラゴンへのピンポイント攻撃である。
上空の各チェックポイントに展開した魔導士が、ワイバーンに乗って誘導を開始。
リレー方式で『V−1』編隊をトロイメライ上空まで運ぶのだ。
そして終末誘導はというと――――――
「っということで、任せたよエルドくん」
「.....はい?」
――――王国軍 アクローノ陸軍航空基地。
ズラリと並んだワイバーンの前で、エルド・フォルティスはサラッと無茶振りを上司から告げられた。
「なんだ聞こえなかったかい? 『V−1』の終末誘導は君が一緒に降下しながら行うんだ」
無限の魔力を持つ魔導士――――エルド・フォルティスによって行われる。
ちなみに第3フェーズは飛行、迎撃能力を喪失したドラゴンを強行突破して揚陸部隊がトロイメライ海岸に上陸。
海峡側と艦隊側から上陸した重火器、戦車部隊とレーヴァテイン大隊がドラゴンにトドメを刺す。
もし、これら作戦が失敗したなら王国は戦略的判断の下トロイメライ市を放棄。
接近した王国海軍艦隊と、海峡沿岸地域に展開した戦略ロケット連隊が街ごとドラゴンを全力射撃にて葬り去ることが決定した。
感想300件突破ありがとうございます。
記念に番外編『ジーク・ラインメタル少佐のある朝』を書いたので、このあとがきの下にあるリンクからぜひお読みください。
珍しくラインメタル少佐視点のお話となります