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第22話 VS影の執行者

 

「久しぶりだな勇者ジーク! 5年経っても変わらんようだ......この戦争狂め、今では愚かな国家の犬に成り下がったか」


 全身をローブで覆った長身の男が、先頭に立つ少佐と向き合った。

 敵の数はスカウトの報告通り"2"、どちらの顔もよく視認できない。


「君まで復活していたとはね、ここまで大きく出たということは――――新生魔王軍とやらも遂に始動したのかな?」

「少佐、あいつと知り合いなんッスか?」


 背中にエンピを担いだセリカが、サブマシンガンを油断なく構えながら少佐に近付く。


「ヤツの名は"デスウイング"、旧魔王軍の最高幹部だった闇を司る王だ。隣の少女はわからんがね」

「デスウイング!?」


 その名は聞いたことがある。

 5年前の戦争で、魔王城の攻略に挑んだ上級冒険者ギルド8個を、造作もなく葬ったという伝説級の化け物だ。


 こいつも少佐が勇者時代に倒したはずだが......。


「エルドさん、あの少女が持ってるの......ルナクリスタルじゃないですか?」

「だな......、あいつも魔王軍か?」


 莫大な魔力を持つという結晶、それらが敵の目的だと聞いている以上、衝突は不可避――――


「残念ながらルナクリスタルは渡せん、魔王様による"浄化"のためにな! いでよ『ファントム』!!! 盲目的な操り人形共を消し去れッ!!!」


 瞬間、床から次々に真っ黒な影が浮き上がった。

 前に記録で呼んだデスウイングの能力、最上位闇魔法『影の執行者』が発動されたのだ。


 人型のそれは、こちらの数よりずっと多かった。


「そこそこいます、どうしますか少佐?」

「こうなったらやるしかないだろうエルド君、さぁゾロゾロ湧いてきたぞ! 国家の力をもって薙ぎ払え!! レーヴァテイン大隊に告ぐ――――新生魔王軍を撃滅せよ!!」


 半方位していた部隊が一斉に発砲。


 瞬く発射炎マズルフラッシュ

 白兵戦に近い状況下で、レーヴァテイン大隊は浴びせるようにサブマシンガンで射撃した。


 壁に弾痕が乱れ、装飾が弾け飛ぶ。

 部隊の攻撃を受けて、まず前線のファントムを矢継ぎ早に撃破していった。


 見れば、あの少女は柱の裏に隠れているようだった。


「チッ!!」


 弾幕を抜けて襲いかかってきた敵へさらにサブマシンガンを掃射、続く正面からの攻撃を防御魔法で防ぎ、またトリガーを引く。

 事務的に、効率的に銃は敵を減らしていった。


「総員突撃!! 我に続けェッ!!!」

「「「「「うおおぉぉぉぉぉぉぉッ!!!!」」」」」


 数十体を一瞬で葬り去った大隊は、少佐を先頭にだだ広い保管庫の床を蹴った。

 迎え撃つ後衛のファントムからすればまさに地獄だろう。


 エンピを操った近接職のセリカが踊るように敵を殴り倒し、着剣した隊員はそのままファントムの壁を突破。

 少佐に至っては両手に9ミリ拳銃を携えながら、敵軍を突き抜けていた。


「ちっか!!!」


 ほぼゼロ距離、セリカを掩護するように射撃。

 100近くいたファントムの最後の1体が、銃剣に貫かれて消滅した。


「かつてのパーティーだったら、君の魔法によってこちらも危なかっただろう。だが今君たちが相手しているのは国家権力だ。大人しく投降したまえ」


 銃口、銃剣を向けて降伏を促す様は、もうどっちが勇者なのかわからなくなりそうだった。

 だが、仮にも元魔王軍最高幹部がこれで終わるなどという楽観的な考えは、誰も持っていなかった。


「リーリス、ルナクリスタルを渡せ」

「でも、今ここで使用回数を消費したら......」

「負ければ同じだッ! 早く渡せ!!」


 こちらの射撃と同時に、デスウイングを真っ黒な何かが覆い隠したのだ。

 銃弾がそこで止められる。

 巨大なそれは木のように上へ伸びながら大量の触手を動かし、保管庫の天井をブチ抜いた。


「あいつ、まさかルナクリスタルを使って......!?」

「1班を先頭に後退! 上へ戻るぞ!!」


 ステージをシフトするべく、レーヴァテインは降ってくる瓦礫を警戒して後退。

 一瞬振り返れば、木のように真っ黒な根っこが保管庫を埋める中。


 少女の姿は消えていた......。

 しかし今は気にしていられない、この直上たるコロシアム闘技場へ部隊は駆け上がった。



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