第208話 セリカの胸の内
とりあえずギャン泣きしていたセリカが落ち着いた頃、俺たちは机を囲んだ。
んで、まず事の経緯を聞く。
「なるほど、外出中たまたま親に会って最近ケガ続きだったのがバレた......と。親としては正常な言動だわな」
「まぁ大方そんな感じです、はぁ......しかしあんなにアッサリ嘘を見抜かれてしまうとは......」
うつむくセリカ。
「君にポーカーフェイスなんて、まだまだ無理ということだよセリカくん。どうせなら今度は演技力も訓練してやろうか?」
「けっ、結構です! もう嘘つきませんので!」
セリカはブンブンと首を振る。
「だけどお前らしくもない、進路を決めるのは自分だろセリカ。親に言われてなんてそんな性格だったか?」
「えーっと......わたしって昔ギルドを追放されて路頭に迷っていたことがあったんですよね......」
「そういえばそうだったな」
まぁ、そのセリカを追い出した【アルナソード】はもう俺たちに殲滅されて存在しないわけだが。
「親に心配なんて極力させたくなかったんで、少佐に誘われて冒険者辞めて、王国軍に入ったのを結構長く秘密にしてまして......」
「それが外出時にバレた......と?」
「はい、わたし自身は王国軍にいたかったんですが、やっぱりケガをしたわたしを見た時の母親の顔があまりに辛そうでし――――わぶっ!?」
傍観していたオオミナトが後ろからセリカに抱きつく。
「とっても親想いなんですねセリカさんは! それでラインメタル少佐に嘘をついて挑んだんですね?」
「はい......、まぁ結果としては惨敗だったわけですが」
なるほど、大方理由はわかった。
親の心配をモロに受けてしまったセリカは、後先考えずに辞表を作ってしまったんだろう。
ホントにかなりの親想いなんだな......。
俺になにができるなんて考えるのは傲慢だろうか、いや......ここは同じミリ友として動かないなどありえない。
「少佐!」
「ん? なんだいエルドくん」
「今から我々でセリカのご両親へ直に説得へいきませんか?」
「なるほど、確かにセリカくんの現在のメンタル状況は彼女1人の手には余る......いいだろう!」
立ち上がる俺と少佐。
「えっ、ならわたしも一緒に――――」
「セリカくんはさっき自分で蹴飛ばしたライフルの整備点検でも行いたまえ、どこか壊れてたら大変だ」
ニヤつく少佐。
「ちょっ! 踏むように促したのは少佐じゃないですかぁ!」
「セリカくん、もう一度言う――――大隊長命令だ。監視役はオオミナトくんに任せる」
「これが軍隊の闇......! 権力のらんよ――――――はぷっ!?」
「えっへへー、そんな嫌がらずにわたしとお留守番しましょうよー」
後ろからオオミナトが羽交い締めにする。
「ちょっ、このー!!」
「エンピも持たないセリカさんが素手でわたしに勝てるわけないじゃないですかー、エルドさん、少佐、どうぞごゆっくり面談してきてください」
「あっ、あぁ......頼むよ」
オオミナトに取り押さえられるセリカを背に、俺と少佐は軍の黒いコートを纏って雪の降る市街へと出た。