第201話 決着の一撃
「よくやった――――セリカ!!」
玉座の間の壁が壊れたことを確認した俺は、薬室にありったけの魔力を込めた対戦車ライフルの引き金をひいた。
くらえ、王国で最も威力を極めた弾丸を。
1人の少女が命懸けで作り出した時間の結晶を――――!!
「『アルナブラスト』!!!」
勇者と蒼玉、俺とラインメタル少佐による究極の一撃が放たれた。
魔導士数万人分の『貫通付与』を纏い、玉座の間の勇者目掛けて音速を超えて突っ込んでいく。
「この女ッ! 謀ったな!!!」
こちらの攻撃に気づいた勇者は、巨大な魔力を放った。
「主よ、冥き海を金色の光で満たしたまえ――――――『セイクリッド・オリンピア』!!!」
「なにっ!?」
重戦車だろうが数十両は貫通するエンチャント付き14.5ミリ弾を、勇者はなんと片手で受け止めたのだ。
やはり無理だったか......、すまんセリカ。
クソッタレと叫びたくなった瞬間、俺は気がつく。
さっきまで隣にいた少佐が消えていたのだ。
顔を上げると、少佐は弾丸を受け止めている勇者の正面にいた。
まだ終わっていない、そう言わんばかりに金色の魔力を放出する。
「必要が必要であるがために! 今だけ家畜のクソ以下の言葉を叫んでやろう!! ミクラぁッ!!」
「了解ッ!!」
少佐が壁の穴から飛び込んだと同時、壊れた扉を破ってミクラさんが玉座の間へ侵入。
倒れていたセリカを柱の陰へ運んだ。
「またわたしの前に立ちはだかるのか......ッ!! お兄ちゃんの仇! 王国の勇者めッ!!!」
「お互いイカれたマーダーに魅入られた身だ、仲良くやろうじゃないか!」
少佐は両手に魔力を集約させる。
そして、心底嫌そうに詠唱を開始した。
「主よ、遥かなる旅路の果て、どうか彼の身を主の身元に――――」
「しまっ」
「導きたまえ――――『アルファ・ブラスター』!!!」
なんと、さっきまで敵の勇者が街で乱射していた高出力光属性魔法を少佐がほぼゼロ距離から撃ったのだ。
敵勇者の防御魔法にヒビが入る。
俺はライフルを捨てて地を蹴った。
今しかない! セリカと少佐、ミクラさんの動きを無駄にはできない!
「エルドくんッ!!」
「はあああああぁぁぁぁぁアァッ!!!」
あの防御魔法を破るには、通常の身体能力強化では無理だ。
壁を超えろ、無限の魔力を燃やし尽くせッ!!!
「『身体能力強化・絶』!!」
壁から超高速で飛び込んだ俺は、セリカが手放していたエンピを拾った。
「うおおおおおおおおぉぉぉぉぉぉオォッ!!!!」
――――ガギィンッ――――!!!
少佐と俺で防御魔法へ攻撃をねじ込む。
「なぜ......ッ! なぜお前らはわたしたちから全てを奪う! 家族も友達も、住処も国も! お前ら侵略者に奪われ、勇者となったわたしは絶対に負けないッ!!」
「君の正義は理解しよう、痛みも苦しみも共有しよう! だが人知を超えたクソッタレに魅入られた時点で――――」
ラインメタル少佐の瞳が一層金色に輝く。
「我々は互いの正義をぶつけ合うしかないのだ! それが勇者だ! これが総力戦だ! これこそ第二次世界大戦だ!!」
敵勇者の防御魔法が崩れる。
めり込んでいた弾丸がより奥へ進んだ。
「押し込めッ! エルドくん!!!」
「おっらああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁアァッ!!!!」
セリカのエンピを全力で押し込む。
瞬間、敵勇者を守る壁は崩壊した。
止まっていた14.5ミリ弾が亜人勇者の体を貫いたのだ。
崩れ落ちる敵勇者。
玉座の間には、光の破片が降り注ぐ。
少女の金色だった瞳は、その光を失った。
遅ればせながら200話突破しました!
完結目指して頑張りますので、引き続き応援のほどよろしくお願いしますm(_ _;)m