第20話 魔王軍攻略RTA
『こちらレーヴァテイン20、第3モンスター搬入口制圧!!』
『レーヴァテイン67より大隊長、第1階層への入口を確保、攻略を開始します』
敵に制圧されたコロシアムへ侵入したレーヴァテイン大隊は、まるで掃除でもしているかのように内部を掃討、あっという間に地下へと進撃していた。
戦闘は正しく一方的。
銃声がこだました数だけ、モンスターが射殺されていくのだ。
その地下1階、職員待機室に気配を感じた俺とセリカはトビラの横に張り付く。
「これ、中で待ち伏せしてるッスね......」
小声で言うセリカ。
「想定内だ、合図で開けてくれ」
「了解」
その脳みそで多少は考えたのだろう、数体のゴブリンが個室に立て籠もっているようだった。
まずは賢明だと称えよう、そして愚かだと言い放ってやる。
「3、2......1――――――今ッ」
「はいっ!!」
俺は手近な石ころに『炸裂』をエンチャント、僅かな隙間から室内に放り込み、再び閉めると同時に爆発。
トビラごと部屋が吹っ飛んだ。
――――バラララララララッ――――!!
一斉に部屋へ突入、爆発で瀕死になっていたゴブリンと健在だった数体をアイアンサイトの中心に合わせて連射、サブマシンガンでまとめて蜂の巣にした。
ゴブリンの持っていた剣やスコップが部屋に散乱する。
「こちらエルド、職員待機室クリア。送れ」
『了解エルドくん、引き続き敵を掃討せよ。送れ』
「了解」
事務的に連絡を済まし部屋を出る。
あの少佐のことだ、きっと待機してるだけじゃ飽き足らずどこかで戦っているのだろう。
「エルドさん、【商品保管庫】はこのさらに下にあるとのことッス。おそらく敵もそこにいるかと」
「確かか?」
「えぇ、少佐の送った偵察隊がしっかり目標をマーク。追跡しています」
素晴らしい、さすがは少佐だ。あらかじめこうなると予期して部隊を動かしていたらしい。
現に、レーヴァテイン大隊はモンスターを駆逐しながら前進、完全に敵を包囲しに掛かっていた。
「ッ!? ――――正面から敵が来ます!」
「なに!?」
銃を構えようとするが、現れた敵はグレムリン。
その素早さからとっさに照準が合わさらない。
「エルドさん、そこの"エンピ"を!!」
「おっ、おう!!」
さきほど掃討した部屋に転がっていたエンピ――――またの名をスコップをセリカへ渡すと、彼女は目にも留まらぬ凄まじい連撃を繰り出し、暗闇より現れた3体のグレムリンを一瞬でごぼう抜きにしてしまった
「......マジかよ」
軍においてはエンピことスコップも立派な近接武器だが、あざやかすぎるだろ。
「言ってませんでしたっけ、わたしの職は『剣士』。スキルレベルも57なので、そこらの冒険者よりかは近接武器の扱いもマシッスよ」
「いや聞いてねえよ! おまえ剣士職だったの!? アーチャーじゃなかったのかよ!」
「だって当時は冒険者でしたし、普通にクエストで魔剣使ってたんッスよ」
意外すぎる事実。
こいつ近接職だったのかよ......。
「意外でしたか?」
「まぁな、お前ミリオタだから遠距離職だとばかり思ってたよ」
「こう見えて元剣士ッスよ自分、おかげで銃の訓練は苦労しましたよ」
何気なく扱っているように見えて、きっと裏では相応に努力していたのだろう。
職は一度選ぶともう二度と変更できないので、銃の腕前をアーチャークラスまでするのにはかなり苦労したはずだ。
『こちらレーヴァテイン40、第2階層のトビラへ到達。増援を乞う!』
どうやら、このフロアの掃除は完了したみたいだ。
その所要時間10分。
冒険者パーティーだったら、いくら上級とはいえこうはいかない。
完全武装した40人が、とてつもない速さで敵を殲滅していた。
「次だ、行くぞ!」
「了解です」
弾倉を交換して一歩前進。
その前に、僅かに動いたグレムリンへ俺は消音器付き拳銃を数発放った。
「ゴギャッ!?」
ピンを抜くような甲高い銃声と同時、反撃を目論んでいた敵の息が絶える。
「1つ貸しだな」
「はいはい、さっさと行きますよ」
ドヤ顔を無視された俺は、少々沈みながら第2階層へと進んだ。
【エンピ(スコップ)】
軍隊の必需品で、これが無いと始まらない。
なにせ、コイツ1本で塹壕やたこつぼを掘ることができ、最強の近接武器にもなるのだから