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【完結済み】外れスキルの不遇魔導士、ゴミ紋章が王国軍ではまさかのチート能力扱いだった〜国営パーティーの魔王攻略記〜  作者: たにどおり@漫画原作
【ウォストピア最終戦争編】

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第190話 ウォストセントラル侵攻

 

 まず最初に火を吹いたのは、王国軍・連邦軍の重砲兵軍団であった。


 ――――ドォンドォンドオンッ――――!!!


 大口径の榴弾砲が、各隠蔽陣地から一斉に発射。

 数千門の野砲からなる弾幕が、ウォストセントラルを守る『魔甲障壁』を直撃した。


 この突撃支援射撃を受けて、両軍の機甲部隊が東西よりウォストセントラルへと迫る。


「敵戦車出現! グレイプニル、魔導士部隊、魔導砲部隊は射撃開始せよ!」


 東部最終防衛線へ配置された亜人の兵士ホーンは、魔導砲の発射担当だった。

 ホーンは『祖国奉仕法』により徴兵され、16歳という若さで前線に送り込まれている。


 しかも、ここは魔甲障壁の外側。

 生きて帰れる可能性はほぼゼロであった。


「仰角よし、照準よし!」


 唸る戦車の轟音が、民家を揺らしながら道やブドウ畑を踏みつぶし突き進んでくる。

 あれが敵の兵器......、圧倒的な火力と防御力を誇ると噂の怪物。


「俺が全部ぶっ壊して......、母さんや妹を助けてやる!」


 照準を合わせたホーンは、祖国防衛のための第1撃を放つ。

 炎属性魔法と炸裂魔法の混合弾は、真っ直ぐ飛翔して戦車の前面装甲を直撃。


 爆発が車体へ覆い被さった。


「やった!!」


 初めての戦果に喜ぶホーン。

 だが、その歓喜を裏切るように煙の中から砲身が突き出してきた。


 ――――ダアァァァンッ――――!!!


 ぶどう畑を切り裂いて飛んできたそれは、ホーンのすぐ隣にある魔導砲を木っ端微塵に吹き飛ばした。


「なっ、なに!?」


 貫徹するどころか、なんと戦車には傷一つついていない。


「クソッ!!」


 押し寄せてくる戦車群へ向けさらに魔導砲を放つが、派手に爆発するだけで進撃を止めることすらできない。

 半ば一方的にこちらは砲撃に晒され、突っ込んだ突撃隊は車載機銃で滅多打ちにされている。


 それもそう、この88ミリ砲を有する王国軍の重戦車は前面装甲が100ミリ以上ある。

 おまけに対魔法用防護を幾重にもかけているので、もはや爆裂魔法を真下から当てない限り破壊は不可能だった。


 もちろんそんなことを知らないホーンは、いつか破壊できると信じて魔導砲を撃つ。

 もしここが突破されれば、あとは後ろの障壁だけ。

 なんとしても守らねばならない。


 発射弾数が30に達しようとした時、照準器越しに敵戦車がこちらを向いた。

 どうやらいい加減に鬱陶しくなったのだろう、砲身の中の暗闇までハッキリ見えた。


「ッ!!!!」


 殺られる......!

 確信したホーンは1人すぐさま砲から飛び退くと、走ってその場に伏せた。


「おいホーンなにを......ぎゃあああぁぁぁっ!?」


 さっきまで一緒に砲を撃っていた仲間たちが吹き飛ぶ。

 88ミリ砲の直撃を受けて、魔導砲は完全に破壊された。


「ハァッ......! ハァッ......!」


 仲間は完全に死亡している。

 だが今はそいつらに構っている場合じゃない。


「他の......、まだ生きている仲間に合流を......」


 ふと周りを見渡したホーンは、その光景に絶句した。

 凄まじい砲撃で四足歩行兵器グレイプニル、魔導砲は完全に全滅。

 敵戦車からは大量の機銃掃射が放たれ、同胞が次々と射殺されていく。


 これが戦争......、これが代償......。

 あまりにむごい光景に、ホーンは立ち上がった。


「お前らだけは......!」


 筋肉を膨張させ、牙を鋭く伸ばす。


「女神アルナ様......、せめて死にゆく俺にご加護を!!」


『戦闘形態』へ変身したホーン。

 一か八か目の前の戦車に突っ込もうと踏み込んだその時だった。


「やあ名もなき亜人くん、戦場に酔っているところ悪いね」

「ガッ......!?」


 ホーンの胸から、鋭利な刃物が生えていた。

 いや、真後ろから刺されたのだ。


「ぐはっ! ......あぁ」


 首だけ後ろに回すと、そこには金眼の男が立っておりホーンに銃剣を突き刺していた。


「こんな若者まで根こそぎ動員とは、ウォストピアの人的資源もそろそろ枯渇したかな? いやはやなんという悲惨な戦いだ、女神に祈った直後に刺される気分はどうだい?」

「きさ......まは......?」

「僕かい? 僕はただの元勇者だ。ジーク・ラインメタル少佐とでも呼んでくれたまえ」

「まさか......、魔王を倒した伝説の!?」


 なぜこんなやつが最前線に!?

 そう思考したのも束の間、剣が奥へえぐりこまれる。


「グゥッ......!」

「君は今女神に祈っていたな? ハッハッハッハッ! 実に面白い! じゃあヤツは自らの信徒1人守れない無力な存在と証明されたわけだ!」

「貴様......、アルナ様を侮辱するか!」

「いやなに、僕としては君に可能性があったからこそ早めに始末しに来たんだ。恩寵おんちょうを与えられた後では遅いからね」


 剣を抜かれ、ホーンは荒れた地面に倒れ伏した。


「勇者となりえる存在は......早めにその芽を摘まねばならない」

「クッソぉ......」


 亜人の意識が消えたことを確認した少佐は、大きく両手を挙げた。


「さぁ! 全知全能を自称するマーダーよ! 貴様が平和を愛するならこの一撃を止めてみろ! 命を尊ぶなら止めてみせろ!」


 ――――ドゴオオォォォンッ――――!!!!


 少佐の頭上を380ミリロケット臼砲が飛び越え、障壁に着弾。

 障壁は弾着点からピースの抜けたパズルのようにバラバラと砕け散ってしまった。


 東西の砲兵軍団は照準目標を変更、首都ウォストセントラルへ向けて戦略砲撃を開始した。

 民間人の断末魔が、砲撃音に紛れてここまで聞こえてくる。


「無理だろうな女神アルナ、お前にとってこの戦争は......絶好の飯の種であり。最も効率のいい信仰稼ぎなのだからな」


 頬を吊り上げた少佐は、陣地に侵入した戦車の上に搭乗。

 ウォストセントラル市街地へと向かった。


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