表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

19/380

第19話 大国パーティーは魔王軍を踏み潰す

 

「新生魔王軍......どういうことですか少佐、魔王はあなたが5年前に討ち滅ぼしたはずでは?」


 あまりに突然のことで、俺の額に汗が滲み出る。

 かつてこのアルト・ストラトスという大国を追い詰め、武装中立国家3つを滅ぼした最悪の存在が舞い戻ったというのだから当然だ。


「そのはずだったんだけどねぇ、どうもこのコロシアムに既に入り込んでいるみたいだ。いやはや束の間の平和だったよ」


 そう言う割に、少佐の口調はおそろしく軽い。

 まるで、もはや魔王軍など意に介すことでもないかのような。


「不安かねエルドくん」

「そりゃ......不安にもなりますよ」

「再び国が危険に晒されるかもと......? 否だエルドくん! ではなぜ"王国軍われわれ"が存在していると思う?」


 少佐の問いにハッと気付かされた。

 そういえば、なぜこの人は勇者から王国軍へと転職したのだろうかと。


「――――魔王襲来まで、平和を謳歌していたこの国の軍は非力でした。結果本来の役割を冒険者や勇者がこなし、魔王を倒して今に至りました」


 セリカは階段を数歩登り、少佐を見上げた。


「だから少佐は、当時より税金ドロボウと蔑まれていた軍に入ったんッス。大国アルト・ストラトスに備えを施し、来たるべき危機に備えて勇者パーティーすら上回る戦力を保有させるために」


 瞬間、橋の下からゴブリンロードの群れが湧き出て、こちら目掛けて飛び込んでくる。

 油断していた俺に鋭い爪が向けられるが、それが届くことは無かった......。


 ――――ダンダンダンッ――――!!!


 少佐の拳銃が火を噴き、俺たちの物とは違うサイレンサーの付いていないけたたましい発砲音が3度響く。

 地面に打ち付けられたゴブリンロードには、その頭に1発ずつ穴が空いていた。


 拳銃を右手に持ちながら少佐は続ける。


「魔王は必ず復活する、だからこそ僕は"国家"という最強の組織を覚醒させた。連中はいまだに我々が"勇者の剣"で挑んでくると信じているだろう」


 大量の魔力が近づいてくる。

 敵ではない、人間の魔力だ。


「だが我々はもうそんなに優しくなどない、勇者が剣を持って4人パーティーで挑む? バカみたいな縛りプレイはもう終了だ!! 工業力と経済力に裏打ちされた最強のパーティーが出来上がったのだからな!!」


 河川を飛び越えて、俺たちと同じ黒い軍服に身を包んだ同僚――――レーヴァテイン大隊の面々が続々と到着してきた。

 集まったのは40名以上、少佐は十分だと口角を吊り上げる。


「この騒乱を防げなかったことは遺憾だが、我々はこの5年で準備を続けてきた。そしてその準備はエルドくん――――君を迎え入れることで完了した」

「俺をですか?」

「あぁ、魔力無限の不器用な魔導士こそ軍で輝く。次代の英雄はここから生まれるのだ!!」


 拳銃を振り上げた少佐へ、大隊が一斉に傾注した。


「レーヴァテイン大隊に告ぐ! 敵の狙いはコロシアム地下に保管されている『ルナクリスタル』という大会優勝商品だ! 街での騒ぎは囮に過ぎん! 薬室チャンバーに弾を込めろ!!」


 銃のレバーを引き、全員が戦闘モードに突入。

 セリカの目付きも変わっていた。


「さて大隊諸君! 完全武装した40人パーティーでの攻略ミッションを始めよう。やるのは一方的な殲滅! 勇者パーティーのさらに上――――国営パーティーによる魔王軍攻略タイムアタックだ!!!」


 コロシアムへ潜入したという敵に対し、国営パーティーことレーヴァテイン大隊が一斉に突入を開始した。



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[良い点] 辛酸を嘗めてきた勇者だからこそ言える言葉ですね。 世の中の民たちが見る勇者像は得てして美化されたり、こうでないといけないという目で見てくるけど、実際にはそんなきれいなものじゃないし、実体…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ