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第187話 戦線崩壊

 

 ――――ウォストピア首都 ウォストセントラル。


 長らく住んでいた自宅で、亜人サーニャ・ジルコニアは物置からいくつかの箱を取り出していた。

 外からは、空襲・砲撃警報がけたたましく聞こえてくる。


「......あった!」


 近所の住民が逃げる中、サーニャは箱を取り出す。

 中身は鞘に入った『剣』だった。


 この武器こそ、ジルコニア家に伝わる『一族存亡の際に開けよ』とされているもの。

 サーニャは『祖国奉仕法』の適応外にあたる亜人だが、彼女とて敵軍を前に逃げようなどとは微塵も思っていない。


「ありがとうございます......ご先祖さま」


 サーニャは一言お礼をつぶやくと、真っ白なワンピースを脱ぎ捨てる。

 そして、シャツにベスト、動きやすいブラウンカラーのショートパンツに着替えた。


 彼女が初めて纏う"戦闘用の格好"だった。


 ――――ドーン......、ドーン――――!!


 連合軍によるステート高地への攻撃が始まったのだろう。

 ここからステート高地まで60キロもあるのに、砲撃音が街を揺らす。


「行ってきます......お兄ちゃん」


 伝家の宝刀である剣を持ったサーニャは、二度と戻ることのない家を後にした。


 ◇


 ――――ステート高地。


「なんて火力だ! 歯が立たない!」


 ウォストピア西部に広がるステート高地は、ミハイル連邦の大部隊による猛撃を受けていた。


 ウォストピア側は祖国奉仕法によってかき集めた『民族防衛隊』5万5000人を主力として迎え撃っていた。

 対する連邦側は、数百両の戦闘車両を有する第2戦車親衛軍、および第66打撃軍、並びに第23軍、第44軍、第52軍からなる数十万の大部隊であった。(軍というのは複数の軍団をさらに束ねたもの)。


 ――――バシュバシュバシュバシュッ――――!!!


 連邦軍の『カチューシャ多連装ロケット』が、自走砲や野戦重砲と共同で高地を更地にせんばかりに撃ちまくる。

 その砲撃は苛烈極まり、民間人でしかない民族防衛隊はたちまち壊乱状態に陥った。


「グレイプニル全機大破! 敵部隊! 対戦車壕に到達!」

「少しでも足止めするんだ! 奴らを首都に通すことは許さん!」


 ウォストピア側もただ手をこまねいていたわけではない。

 連邦の戦車を想定し、自慢の力仕事で即席の対戦車壕を作っていたのだ。


 本当なら爆裂魔法陣地を作りたかったが、人的資源の枯渇しつつあるウォストピアにもはやそこまで高名な魔導士は存在しない。

 いわゆる苦肉の策だった。


 だが――――


「なっ、おい!」

「バカなっ!?」


 連邦軍はそれら対戦車壕の存在を、航空偵察で事前に知っていた。

 戦車部隊は壕の前まで来ると、次々とその溝とも言える部分に丸太を流し込んだのだ。


 丸太を入れ終わった戦車は下がり、続いてまた丸太を持った戦車がそこへ放り込む。

 それを繰り返すと、あっという間に壕が埋まり、戦車の通れる道が出来上がったのだ。


「敵戦車、最終防衛ラインを突破! あぁ......もうダメだ......!!!」

「おい逃げるな! 最後まで戦え――――ぐあぁっ!?」


 つい先日まで民間人だった彼らは、いかに戦闘形態だろうが所詮付け焼き刃。

 突撃してきた数十両の『T−34』中戦車に蹂躪された。


「亜人は一匹も逃がすな! 全火力を集中せよ!」


 数百門の野戦重砲が火を吹き、ロケット弾が雨あられと降り注ぐ。

 ウォストピア民族防衛隊陣地は吹っ飛び、亜人たちはその数を55000〜150人にまで減らした。


 12月22日、連邦軍は首都郊外のステート高地を突破。

 とうとう首都ウォストセントラルを砲撃圏内に据えた。


 同様に、東部戦線においても王国・共和国連合軍が防衛線を突破。

 ウォストピアの防備は、近代化された連合国軍の前に粉砕された。


 この時点において、ウォストピアは領土の8割を失陥。

 魔王軍は魔都ネロスフィアまで撤退、ウォストピアはいよいよ首都決戦へと突入しようとしていた。


私も遅れて知ったのですが、本作がHJネット小説大賞2019の一次選考を突破したようです!

これからもさらに頑張っていきますので、引き続き応援よろしくお願いします!

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