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第183話 東西戦線

 

 12月1日。

 冬も盛りに入ろうとする頃、連合国軍総司令部はウォストピアへの冬季大規模侵攻作戦を開始した。


 これは、先日まで起きていたホムンクルス製造工場制圧作戦と、その材料とされていた幽霊による騒動がアルナ教会王都支部支部長ルシア・ミリタリアスによって収められたことが起因となる。


 ――――ウォストピア南部 軍港都市ウォストパシフィック。


 連合軍はウォストピア海軍の誇る戦列艦――――および海軍工廠を目標とし、大規模航空攻撃を実施。

 この地方は空襲の被害がこれまでなく、市民たちはいつもどおり朝食を摂っていた。


 ――――カーンカーンカーンカーン――――!!!!


「空襲だー!!」

「子供を守れ! 家から逃げろー!!」


 30隻以上の戦列艦が集結していたこの街は、市街地まで攻撃目標に割り振られていた。

 人類連合軍は600騎のワイバーンと17隻の爆撃飛行船を投入。


 王国陸軍第2戦略航空師団が、先鋒としてウォストパシフィック地方への空爆作戦を開始した。


「魔法攻撃急げー! 市街地は後回しでいい! とにかく船を守るんだ!!」


 亜人たちは艦隊決戦のため戦力を集めていたところに、奇襲される形となった。

 制空権が既に首都まで後退していることに、全く気が付かなかったのだ。


「工廠に着弾! 急げ! 取り付いているワイバーンを攻撃せよ!」


 なけなしの対空砲火が上がるも、空を埋め尽くすほどのワイバーンの群れには、全くもって効果がない。

 停泊中だった50門級戦列艦が、大量の火球の直撃を受けて大爆発を起こす。


「戦列艦『ドリアム』大破!! 隣接する『コルン』にも火災発生! 港湾施設の被害甚大!」

「消火急げ! ここで戦列艦を失えば逆転の望みは――――――ぎゃああ!?」


 ウォストパシフィック軍港は、瞬く間に火の海となった。

 また市街地には爆撃飛行船艦隊によるナパーム弾投下と、機銃掃射が行われた。


 この無差別都市爆撃は苛烈を極め、市民1人1人を戦闘員とみなした為に犠牲者数が跳ね上がる。

 さらに対空陣地は全て港を守る配置になっており、市街地は二の次であった。


 王国軍ワイバーン12騎編隊が、バリスタを放つ戦列艦へ突っ込む。


「風属性エンチャントを付与! 射程延伸よし!」

「撃て!!」


 エンチャントにより強化されたバリスタが撃ち上がるも、高速飛行するワイバーンにはまるで当たらない。


「ゴアアァッ!!!」


 並列して停められていた30門級戦列艦4隻が、火球を甲板に受け炎上。

 艦隊決戦のため砲弾を満載していたことが加わり、港湾内は戦列艦の爆発で覆い尽くされた。


 ウォストピア海軍は、再起不能と判断されるほどにその軍事的アセットを失った。


 ――――翌12月3日、ミハイル連邦戦略空軍がウォストピア西部全域において無差別爆撃を開始。民間の列車や飛行場などが優先的に破壊された。


 また、西部戦線における連邦軍はこの時点で230個師団を超えており、救援として駆けつけた魔王軍第6軍団を半日で跳ね返している。

 残されていた戦闘記録によると、第6軍団のゴーレム部隊は連邦戦車部隊およそ600両と交戦。


 連邦第1戦車親衛軍の圧倒的物量を前に、後退を余儀なくされた。


 さらに数日後――――連合軍はウォストピア全土の基地に対して3000騎を超えるワイバーンと100隻の飛行船で空爆を開始。

 主要都市は瞬く間に灰燼かいじんと帰し、残されたウォストピア軍は捕虜にされることなく銃殺された。


 これは後に兵站へいたん上しかたなくやったことであり、また当時の国際法には抵触しなかったことが結論づけられている。


 ――――12月15日、ウォストピア政府は『祖国奉仕法』を可決。

 15歳〜80歳の男性亜人全てを兵役に就かせ、また女性についても軍需工場での奉仕が義務付けられた。


 このほぼ民兵同然の徴兵軍団は『民族防衛隊』と呼ばれ、東部の王国・共和国戦線。並びに西部の連邦戦線へと投入されることとなる。


 それでも東西から挟み撃ちにされたウォストピアは、凄まじい勢いで国土を失陥。

 南方海域から魔都ネロスフィアへの国民大脱出計画が画策された。


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