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第182話 第二次世界大戦

 

「地球? なんですかそれは?」

「端的に言うと、我が王国の技術や文化を数次元先のレベルまで押し上げた圧倒的な科学文明の栄える、こことは違う世界だ」


 ラインメタル少佐は続けた。


「オオミナトくんとミクラは、その地球という星にある日本という国から来た人間だ。ここからは彼が話す」


 椅子に座った少佐は、モシャモシャとリンゴを頬張り始めた。

 その様子を特に気にも留めなかったミクラさんは、まずオオミナトの傍へ寄った。


「彼女をホムンクルス製造工場から運び出したのは俺だ、ラインメタル少佐から情報提供を受けて応援に向かったところ発見した」

「情報提供? つまり軍の近況も全て知っていたと?」

「あぁ、そういう契約だからな」


 契約とはどういうことだろうと思った次には、ミクラさんから答えが出される。


「俺はこの世界に迷い込んですぐ、ラインメタル少佐と出会い他にも様々な地球人が来ていることを教えられた。つまり俺以外にも日本人がいる可能性は大いにあった」

「そこで、少佐と密約を築いたと......」

「そういうことだ、俺はラインメタル少佐の手駒となる代わりにこの世界へ迷い込んだ日本人の保護を要請した」


 なるほどそういうことか。

 なぜもう冒険者ギルドに所属するオオミナトを少佐はわざわざ軍に引き入れたのか、これでハッキリした。


 オオミナトを目の届くところに置くには、自分の隊に入れて働かせるのが一番いい。

 その上で、ミクラさんとの契約を守っていたんだ。


「まっ、少佐こいつは徹底的な合理主義者だからな。働かせるにしてもわざわざ能力を引き出させるような運用をしてたと聞く」

「ハッハッハ! せっかく高い能力を持った人間を隊に入れるんだ。育てなきゃ損じゃないか」

「そのせいでウチの国民が何度も瀕死になってるんだっての」


 タメ口でのやり取り。

 どうやら少佐とミクラさんは付き合いがそこそこあるらしい。


「っというわけだ、ちなみに君たち王国軍やミハイル連邦の使う兵器もモデルは地球産だ」

「えっ、マジっすか!?」

「色々な地球人が来てるって言ったろ? どうもこの国の兵器系統は第二次世界大戦時のドイツと日本に酷似している。ミハイル連邦はまんまソ連と言ったところか」

「ドイツ......? ソ連......?」


 聞いたことない国にセリカが首をかしげる。


「アサルトライフルはSTG44、重戦車はティーガー1、サブマシンガンはMP40、巡洋戦艦や駆逐艦は金剛型や陽炎型あたりだろう」

「じゃ、じゃあ王国軍が前大戦後に大きく力を付けたのって......」

「少佐が俺と同じように、地球人と契約して装備をトレースしたんだろうな。それが王国軍の急激な発展の秘密だ」


 少佐がニッコリと笑う。

 確かに考えてみればおかしかった。

 ちょっと前まで魔法と勇者が主力だった国が、今や砲と銃、師団を運用する軍事大国だ。


 ありとあらゆる武器や戦術、文化を知らぬ間に引き継いでいたのだろう......。


「ちなみに地球はこの世界より80年ほど進んだ文明らしい、なんでも飛行機というのがあるそうだよ。まだ王国じゃ作れてないが」

「飛行機?」

「空を飛ぶ乗り物だ、ワイバーンや飛行船より早く長く飛べる」

「なにそれすごっ! 乗ってみたいッス!!」


 ミリヲタなセリカが興奮している。


「まぁウチはウチのやり方で航空兵器の運用を行うさ、ちょうどいい......窓の外を見てごらん」


 少佐が促した先の空には......。


「なっ!?」

「え!!?」


 全員が驚きのあまり声を出す。

 当たり前だ、王都の空を覆い尽くすほどのワイバーンが飛んでいたのだから。


 数百......いや、あの分だと1000騎は余裕で超えてる。

 形容しがたい大編隊は、続々と雲間に消えていく。


「最初に言ったろう? 戦争はもう佳境に突入したと」

「まさか......あれ全部――――」

「あぁ、ウォストピアを空爆しに向かう航空師団だ。それだけじゃないぞ」


 立ち上がった少佐は、両手を広げた。


「既に王国、連邦、スイスラスト共和国の3ヶ国連合軍253個師団はウォストピア首都を目指している! 海軍は先日第1機動艦隊を抜錨した、圧倒的な物量と技術レベルでぶん殴るためにだ!」


 そうだ、この大陸は戦下にある。

 地球の兵器を使い、これまで天敵だった魔王軍をたやすく葬る大戦を行っている。


「ズル? チート? 魔王軍の連中がどう言おうが知ったことではない、だがこれこそ国営パーティーの真髄だ! 我々は我々の戦争を行う」


 地球の言葉で今の現状を表すなら――――


「さぁ諸君、各自準備を進めたまえ――――――戦争を続けよう!」


 第二次世界大戦、その真っ只中だ。


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