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第181話 お見舞いとやつあたり

 

 病院というところはいつ来ても慣れない。

 特に王国の病院はこれでもかというほどに清掃されていて、消毒液の匂いが充満している。


 隣を歩くセリカの顔も心なしか強張っていた。

 まぁ、言っても今日はただのお見舞いなわけだが......。


「入ります」


 中の人間から了承を得て病室を開けると、そこにはベッドで寝たままこちらを向くオオミナトと、その親友であるフィオーレがいた。


「あっ、エルドさんにセリカさん! お久しぶりですー」

「お久しぶりッス! やっと面会許可が出たので来ましたよ。あっ、これお見舞いの果物」

「わぁ~ありがとう!」


 ニッコリ笑顔を見せてくるオオミナト。

 だが、先に来ていたフィオーレは若干不機嫌な様子だった。


「よ、ようフィオーレ......久しぶり」

「......お久しぶりです」


 なんだ、めっちゃ不機嫌だぞ。

 俺らなんかしたか? 気づかない内になんかやっちゃったパターンか?


 そんな俺の動揺を察したのか、オオミナトがクスクスと笑う。


「あーフィオーレのことは気にしないでください、その子わたしが入院したのをエルドさんたちに若干やつあたり気味なんですよ」

「やつあたり?」

「うん、なんでわたしを守んなかったんだーって」


 なるほど。

 まぁ身を預かっているレーヴァテイン大隊で任務中大怪我したのだ、親友である彼女が怒るのは道理だろう。


 ただ、一応理由があったことは話さないとな。


「フィオーレ、オオミナトから聞いたかもしれんが、あれは彼女の戦いだった。俺たちが手を出していいものじゃない」

「ッ......」

「弁解はしない、だが彼女のことをみんなが大切に想って任務についていたということは留意してほしい」


 オオミナトは副作用のキツイ試作品の『魔導ブースター』を3本同時使用したらしい。

 それだけ激しい戦いだったのだろう、その判断を俺が責めることはできない。


 ただ知ってほしい、全員オオミナトを信用していたからこそあの場を任されたのだ。


「彼女はもう、平和ボケした人間じゃない。キチンと現実に立ち向かえる強い人間だ」

「......! わかってるわよ」


 グッとスカートを握りしめていたフィオーレが、もの凄い勢いでポーチからチラシを出した。

 それをよーく見ると......。


「流行りの抹茶スイーツ?」

「そうよ! ミサキが退院したら連れてきなさい! もちろん奢りで」

「結構安いやつあたりだな」

「女神アルナ様のように寛大な心を持ってたわたしに感謝してよね、これで手を打つ」

「りょうかい」


 とりあえずフィオーレの気はこれで収まったらしい。

 まぁ退院祝いしてくれという意味なのだろう、それくらいは出費してもいい。

 まっ、戦争中に流行りのアイスを楽しめるくらいには王国の国力もまだまだあるというのがわかったし。


「ところでオオミナト、お前その怪我でどうやって地上まで戻ったんだ?」

「えーっと、それはですね――――」


 彼女が言い淀んだところで、病室の扉がノックされた。


「それは我々の方から話そう」


 入ってきたのはラインメタル少佐と......、どこかで見たことある黒髪の男。


「あれ少佐、参謀本部に行ってたのでは?」

「軍議はさきほど終わったよ、今日は紹介したい人がいてね」


 ラインメタル少佐が手を男に差す

 確かこの人は......。


「あー!! 前に抹茶アイスくれたおじさんじゃないですか!!」


 セリカが病室にあるまじき声で叫んだ。

 アイス屋のおじさんが前に出てくる。


「久しぶりだね2人共、改めて自己紹介しよう。俺の名前は御蔵ミクラ、日本国陸上自衛隊の自衛隊員をやってた者だ。こっちではしがないアイス屋のおじさんだ」


 日本、その国には聞き覚えがあった。


「オオミナトの......、国?」

「あぁ、このミクラという男はオオミナトくんと同じ民族――――つまり日本人だ。戦争も佳境に入った今――――君たちにも教えておこう」


 ラインメタル少佐はお見舞いに手を出すと、目にも止まらぬナイフ捌きでリンゴを綺麗にカットした。


「我が国と地球という星の......関係性について」


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