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第178話 連邦最高会議

 

 それは魔王城で将軍たちが会議する少し前......。

 ――――ミハイル連邦首都モスカ。


 真っ赤な旗がはためく雪に覆われたここは、共産党による絶対的な監視が行われている氷の街だ。

 そこで今、連邦の将来を決めるミハイル連邦最高会議が開かれていた。


「では同志外務人民委員、王国の主張を報告してくれたまえ」


 全体を俯瞰ふかんできる位置に座るのは、ミハイル連邦の書記長であるヨスフと呼ばれる男。

 彼はカリスマ性こそないものの、非情な大粛清によりその地位を確固たるものとしていた。


 そんな男に対し、外務人民委員の男は恐る恐る仕事を行う。


「はい同志書記長、王国側からの主張は単純明快、"潔白を証明せよ"とのことです」

「潔白とな?」


 ミハイル連邦は極秘裏に魔王軍と不可侵条約を結び、王国首都の地下にホムンクルス製造工場への入口を作っていた。

 連邦にとっては魔王軍も王国も大敵、あわよくば両方の敵情を知りたかったこともある。


 だが――――


「王国人共はウダロイ小隊の遺品、学院への物資納入データや内通者であったスパイのマルコフ、および学院長ルノアールより言質を取っているようです。言葉のみで我が連邦の関与を否定するのは不可能かと......」


 在王国大使館で、ミハイル連邦の大使は王国側の官僚に詰め寄られた。


「あの部隊はなんだ」と。

「この物資は貴国の支援する企業から送られていたぞ」と。

「死刑の決まったルノアール学院長が洗いざらい吐いたぞ」と。


 大量の証拠と一緒に突き付けられては弁解など不可能だった。


 ミハイル連邦は開戦初期から日和見を決め込んでいる。

 つまり、王国側の要求は突き詰めてみれば実に簡単だった。


「言葉ではなく、行動で示せ......ということか」


 書記長はギロリと外務人民委員を睨んだ。

 男はたまらず身を震わせる。書記長の機嫌1つで自分は写真から消えることになるのだから。


「いかが致しますか? 同志書記長」


 水を飲んだ内務人民委員長が、ヨスフに問いかけた。

 書記長は外務人民委員長に座るよう指示すると、視線を反対に向けた。


「同志陸軍人民委員長、各師団の即応状況は?」

「はい同志書記長、我らが勇敢なる戦士たちはかつての帝国主義者を討ち滅ぼした時と同様、準備万端! 意気軒昂! 指揮高々であります!」


「よろしい」とヨスフは隣の男にも話しかけた。


「同志海軍人民委員長、艦隊の状況はどうかね?」

「ハッ! 蒼海艦隊はいつでも出撃可能です。緑海艦隊もご命令あらばいつでも」


 ここまで来れば選択肢は1つ。

 王国に何もかもがバレた今、弁明する余地は一切残されていない。

 ならば行動でもって示してみせよう、我々は敵ではない。同じ人類として味方であると。


「全ての同志に告ぐ、これよりミハイル社会主義共和国連邦は魔王領へと侵攻する。全軍を出撃させよ。王国の望み通り潔白を示してやろうではないか」

「魔王軍との不可侵条約は......どう致しますか?」

「防衛線は安々と突破できんが、紙切れを破くことなど造作もない。死に体の国家に遠慮など必要ない」

「ハッ!」


 ヨスフ書記長は重々しく、その場の全員にのし掛かるような声で続けた。


「同志諸君、さらなる奮戦と奮闘、活躍と挺身を期待する」


 大陸暦775年、11月11日 12:35分――――――

 ミハイル連邦はアルト・ストラトス王国との連合国結成を要請。


 同日14:00時、即応待機中だった連邦軍128個師団が魔王領へとなだれ込んだ。


王国軍の展開している戦力が作中現在で51個師団ですので、連邦の投入した128個師団(130万人)は魔王軍にとって絶望的な数であることが伺えます

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