表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

177/380

第177話 会議は進まず、されど戦局は激動する

月曜に更新できなかったのでザッと書き上げました。

今回は定番の勝つ気あるんですか?タイムです

 

 ――――魔都ネロスフィア。


 巨大な城下町を従えるようにそびえる魔王城。

 美しいきらびやかな装飾が目立つここで、今日も今日とて、彼らは蛙鳴蝉噪あめいせんそうに明け暮れていた。


 長机を6人の将軍が囲んでいる。


「アーク第2級将軍......、これは貴様の怠惰が招いた結果ではないかね? 人間ごときに手こずりすぎだぞ!」


 肘をつきながら呟いたのは、魔王軍の水竜軍団を率いるジェラルド第3級将軍。

 開幕から悪態をつかれ、派手な鎧に身を包んだ序列トップのアーク第2級将軍が思わず歯を食いしばった。


「無能怠惰の水竜軍団に言われる筋合いなぞない! そもそも貴様らが通商破壊作戦をすると聞いたからこそ兵を展開していたというのに、なぜ敵の兵站に全く負荷をかけれていないのだ!?」

「敵は駆逐艦による船団護衛作戦を実施している、そんなところに突っ込めば火を見るより明らかであろう? 現に水竜30体が敵海軍によって葬られたのだ!」

「それは陸とて同じこと! 貴様ら水竜軍団のせいで我が第2軍団は壊滅状態だ! これを水竜軍団の怠惰のせいと言わずしてなんと言う!?」


 魔王軍は全戦線で敗北していた。

 制空権を本格的に握られ始め、アーク第2級将軍はウォストピアの放棄すら考えていた。


「王都での陽動も結局失敗したと聞く、我ら水竜軍団のせいのみにしないでいただきたい。それともなにか、無謀な特攻を兵に強いるというのか?」

「港に引きこもらせるよりかはよほどマシだ、貴重な水竜をジェラルドなんぞに任せた魔王様は病んでいるのでは?」

「聞き捨てならんなロード第6級将軍! 貴様のところのゴーレム部隊も引きこもりではないか!」

「黙れ海坊主! 我がゴーレム軍団は偉大なる魔都ネロスフィア周辺の防衛任務に従事している! 機動戦力たる貴様の軍団とは違うのだ!」


 肌白いジェラルドと、色黒のロード将軍が睨み合う。

 そこへ、アークが口を挟んだ。


「しかし例の件も気になるな、ヒューモラス様はあのホムンクルスがなんなのか、不死化した冒険者がなんだったのか未だに隠しておられる」

「フンッ、序列トップの貴様が信用できんから我ら7階級将軍にお話してくださらないのでは?」

「貴様ぁ......、畏れ多くも魔王様より拝命したこの第2級将軍を侮辱するというのか?」

「侮辱ではない、真実を述べたまでだ」

「ほう、その減らず口今からたたっ斬ってやろうか?」


 一触即発の空気に染まる会議室。

 だが、ドアが勢いよく開けられることでその不穏な空気は四散した。


「報告! 水竜軍団の敵船攻撃命令をさきほど受諾! これより敵船団へ突撃するとのことです!」

「なっ!?」


 これに驚いたのは、なんと水竜軍団を管轄するジェラルド本人だった。


「私はそのような命令を出していないぞ!」

「いえ、水竜軍団司令部は7階級将軍より命令を受けたと......」


 目をそらしているアーク第2級将軍を、ジェラルドは見逃さなかった。


「貴様! 私の水竜軍団を勝手に動かしたな!? 越権行為だぞ! 皆の者! 我が水竜軍団が無断で動かされた! 越権行為だ!」

「魔王様がお決めになった統帥権の壁を逸脱するとは、貴様気でも狂ったか!?」

「証拠はあるのかね証拠は!? ジェラルド殿が無意識に命令しただけやもしれんのだぞ?」


 しらばっくれるアークに詰め寄るジェラルドとロード両将軍。


「あくまでそう通すつもりか、ならこっちにだって考えはあるぞ」


 ジェラルドが言った直後、またしても扉が開かれた。


「報告! アーク将軍の隷下れいかである第2軍団第16亜人大隊、水竜軍団基地の警備任務にさきほど着任いたしました!」

「なに!?」


 第2軍団を管轄するアークが振り返る。


「ジェラルド貴様......! 我が第2軍団を勝手に動かしたな!? 越権行為だぞ!」

「証拠はあるのかね証拠は!? アーク殿が無意識に命令したのやもしれんではないか」


 阿鼻叫喚の地獄絵図に染まる会議室。

 そこへ、勇気を振り絞ったであろう1人の手が挙げられた。


「なんだね、ブレスト第7級将軍?」

「いえ、やはりここは......」

「早く言いたまえ」


 急かされた恰幅のいい男ブレストは、恐る恐る呟いた。


「け、喧嘩両成敗というのは......」


 会議室が燃え上がった。


「どういうことだっ!?」

「なにが両成敗だ! 否はアーク将軍にあるのだぞ!!」


 いよいよ殴り合いが始まってもおかしくない将軍会議。

 そこへ、またしても扉がノックされる。


「チッ、またか......。入れ」

「し、失礼します!!」


 やたら慌てている伝令へ、ジェラルドはもう慣れたと言わんばかりに促した。


「なんだ、次はどこに命令がいったのだ?」

「いえっ緊急事態です――――」


 会議室が凍りついた。


「さきほどミハイル連邦の大部隊が越境! 我が魔王領へと侵攻を開始しました!! 繰り返します、ミハイル連邦が不可侵条約を破棄! 大規模侵攻を開始しました!!!」


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ