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第175話 パラシュート無しの空挺降下

 

「おわあああああああ!!!??」


 俺たち4人は落下していた。

 即座に張った防御魔法で爆発こそ免れたものの、大広間が崩れて空中の回廊からも放り出されたのだ。


 ちょうど東の空から日が昇ってきており、すぐ近くには朝焼けに照らされた王都が見える。


「いやはやどうしたもんかねこの状況、まさか空間が壊れて上空から落とされるとは」

「呑気に言ってる場合ッスか少佐! 落ちる落ちてる落下してる〜!」

「なんだセリカくん、高所恐怖症かね? いずれ君を空挺部隊に研修させようと思ってたんだが」

「パラシュートも命綱もなしじゃそりゃ絶望するッスよ! あぁ〜! 死ぬ前に海軍カレーお腹いっぱい食べたかったー!!」


 以前どこかで聞いたことのあるセリフでセリカが叫んでいる。

 ルシアに至っては恐怖で目を回しながら落下していた。


 やべえ......いよいよ俺たち死ぬのか?

 死因が落下死とか嫌すぎる......。


「エルドくん! 魔力をめいいっぱい周囲に撒き散らせ!!」


 少し下にいた少佐が振り向いていた。


「魔力ですか!?」

「そうだ! 無限の魔力を持つ君にしかできない! 急げ!!」

「りょ、了解!!」


 魔力? 魔力なんてばら撒いてどうなるというのだろう。

 だが今は、この勇者を信じるしかない。


「はあああぁッ!!」


 俺はすぐさま魔力を許す限りばら撒いた。

 それは波動となり、魔導士ならば誰もが肌で感じるほどの勢いで周囲を駆け巡った。


 今頃、王都の魔導レーダーが俺の魔力をキャッチしている頃だろう。


「魔導......レーダー?」


 そこまで考えて気づく。

 なぜ少佐は魔力をありったけ溢れさせよと命じたのか、俺の脳裏に最近編成された航空部隊の名が浮かんだ――――――


「ギュラアアアッ!!」


 落下し続ける俺たちに上空から何かが追いついてくる。

 大きな翼、しなやかな体躯。

 俺も実によく知っている召喚獣だった。


「ガルム・ワイバーン!?」


 装具に付いた国旗と所属を見れば1発でわかった。

 王国陸軍第1航空師団、そのワイバーン部隊だ......!


「レーヴァテイン大隊の皆さん! 早くこちらへ!!」

「来てくれたか、救援感謝する」


 乗っていた竜騎兵が、俺たちを手際よく回収していく。

 少佐が俺に魔力を振りまくよう命じたのは、上空警戒任務に就いていた彼らにこちらの場所を教えるため。


 魔導レーダーに引っかかるほどの魔力なら、ワイバーン部隊にだってすぐわかるだろう。


「セリカ!」

「はっ、はい!!」


 最後にまだ落下途中だったセリカの手を握り、俺は彼女をワイバーンの背に引っ張り込む。


「回収したな!? 上げるぞ!!」


 全員の回収を終えたワイバーン部隊は、姿勢を水平に保った。


 暖色が基調の王都市街地を抜け、海軍基地上空を旋回。

 駆逐艦の上を通り過ぎた俺たちは、もうとっくに朝を迎えた【王立魔法学院】前へ着陸した。


「しょ、少佐殿!? エルドくんにセリカ、プリーストの子まで......」


 仮設の司令部から駆け寄ってきたのは、レーヴァテイン大隊の副官ヘッケラー大尉だった。


「ホムンクルス製造工場に突入したはずですが、なぜ上空から......?」

「やぁ大尉、まぁ話せば長くなるんで後でゆっくり説明しようじゃないか。オオミナトくんは戻ってきてるかい?」

「はい、なにやら緑の迷彩服を着た男が連れて来ました。意識不明の重体だったので現在は軍病院の方へ搬送されています」

「そうか、ご苦労だったな大尉」


 ワイバーンを降りる。

 振り向くと、そこには半壊したかつての古巣――――敵拠点と化していた魔法学院の姿があった。


「こりゃ教員も含めて、校舎もなにもかも総入れ替えだな......」


 一言呟いた俺の横をラインメタル少佐が通る。


「諸君ご苦労だった、まだ不明だがひとまずホムンクルス製造工場は無力化できたものと考える。作戦終了! 後は近衛師団、第1歩兵連隊、レーヴァテイン第4中隊で確認作業を行う!」


 王都に巣食っていたシロアリは無事駆除された。

 だがこれで終わりではない、後方の脅威を始末した今――――再び俺たちは西の敵国と戦うのだ。


これにて【ホムンクルス製造工場制圧編】はとりあえずの終わりとなります。考えてみれば5月からやってたんですね......。

次回より、西の国家ウォストピアとの最終戦争編が始まりますので引き続き本作をよろしくお願いします!

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