表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

173/380

第173話 かつての学友の前で

 

「待っていましたよ国営パーティーの皆さん! なんという不幸な巡り合わせ、なんという不幸な因果、貴方たちは天使の御前にひれ伏すでしょう!!」


 建造物の上に、ローブを纏った男が立っていた。

 スキンヘッドの頭と、顔にはタトゥーが入っている。

 俺はその男に見覚えがあった。


「魔王軍最高幹部......、ヒューモラス!」


 あぁ覚えているさ、覚えているとも。

 王国が魔王軍と開戦する直前、俺が冒険者クロムと戦っている間に現れたクソ野郎だ。


「天使と言ったな? この異形がかい?」

「いかにもです勇者ジーク・ラインメタル、これこそ天使そのもの! 神の思考の具現化! 偉大なる大天使の守護者なのですよ!」

「相変わらず訳わかんないッスね......、これが天使とか――――」


 エンピ片手にヒューモラスへ肉薄するセリカ。


「神話見直してこいってんですよ!!」


 天使を大きく飛び越え、ヒューモラス目掛けてスコップを振るう。


「天使よ!! 我が身を守りたまえ!!」


 ヒューモラスが叫んだ瞬間、天使がセリカの前に出て攻撃を代わりに受けた。


「このッ! なら天使ごと――――――」


 彼女は魔力を集中させる。


「ぶっとべええッ!!!」


 剣士スキル『ソード・パニッシャー』が炸裂し、天使ごとヒューモラスは壁に激突した。

 やっぱこいつ銃持つよりこっちの方が強いんじゃね......?


「手応えは?」

「駄目です少佐、ありましたが多分効いてません」


 土煙が晴れたそこには、やはりというか天使とヒューモラスが立っていた。

 異形の翼が、バサッと煙を払う。


「なるほど流石は勇者パーティー、相当にお強い。だが貴方がたにはこいつを殺せません」

「殺せない? 古今東西物理攻撃で殺せないものなんてねーよ」

「いえエルドさん、あなたには絶対殺せません」

「じゃあ聞かせてくれよ......、なんで殺せないのか」


 俺の問いに、ヒューモラスはニヤリと笑った。


「人間というのは同胞殺しを嫌うのでしたね! なればこそ! これを見なさい!」


 天使の顔がムクムクと変化する。


「なッ!?」


 ドンドン形成されていった顔は、俺がこのレーヴァテイン大隊へ入る前に見知っていた顔。

 王立魔法学院のランク上位魔導士――――


「セルン......なのか?」

「えっ、エルドさん天使と知り合いだったんスか!?」

「いや、あいつは俺の学院時代の同期だ。なんでセルンが......」


 あの顔は間違いない。

 俺の同期、軍に入ることで別れた学友。


「フッフッハッハッハッハ!! どうですかエルドさん! あなたには学友を撃てまい! この天使は彼が同化することで誕生したのですから!」


 セルンとの思い出が蘇る。


『よおエルド、お前今日で"退学"になるんだってな』


 あいつ、なにやってんだよ。


『聞いたぜ――――進路希望に"王国軍"と書いて学長に激怒されたらしいじゃん。せっかくのエリートコースがもったいないねぇ』


 俺はゆっくりと天使へ歩み寄る。


「エルドさんダメです! いっちゃいけません!」

「そうです! それで良いのです! 貴方の学友はここにいるのです!」


 外野の声を無視し、俺はトレンチガンのハンドガードを掴む。

 セルンとの.....思い出。


『この戦争好きめ.....!』


 至近距離まで近づいた俺は、そのツラへ銃口を向けた。


「思い出なんてあるわけねえだろうがぁッ!」


 炸裂魔法ブラストを付与されたバックショット弾が、近距離から天使の――――セルンの顔へ撃ち込まれた。


「なっ、なんということを!? お前はかつての学友をなんと思っているのですか!」

「うっせぇ! こっちは散っ散こいつに嫌がらせされてきてんだ! 誰が撃てないだ!? 上、等! 身内の裏切りは絶許! 何発でも撃ち込んでやらぁッ!!」


 スライドを引いてすぐさま次弾を装填する。


「ハッハッハッハ!! さすがはエルドくんだ! 安っぽい王道主人公じゃなくて安心したよ!! 始めよう! 殺戮を! 続けよう! 天使狩りを!!」


 鳩が豆鉄砲を食らったような顔のヒューモラスと天使へ、俺たち3人は意気軒昂に突っ込んだ。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ