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第164話 ホムンクルス製造工場の責任者

 

 ――――魔法学院地下 ホムンクルス製造工場。


「おや、来ましたか......」


 薄暗い通路で、ローブを纏ったスキンヘッドの魔導士は立っていた。

 彼の名はヒューモラス、魔王軍最高幹部の1人でありこのホムンクルス製造工場の責任者でもある。


 そんな彼は、やって来た1人の青年の到着を歓迎した。


「お待たせしましたヒューモラス様、『霊集積装置』のメンテナンスは終わりました」


 青年の顔は、フードに中にある。


「おぉ素晴らしい、大変結構ですよ"セルンさん"。1秒でも早く工場を稼働させたかったところです」

「いえ、僕は僕の目的のため最善を尽くすだけです。それ以上でもそれ以下でもない」

「それでも多くの生物が幸せになる選択です、あなたの協力がなければこの工場の今日中の稼働は不可能でしたからね」


 ヒューモラスはタトゥーの入った顔を不気味に吊り上げた。


「ちょうど連邦軍が上で王国軍と戦っている頃でしょう、私は『母なる宮殿』の稼働に向かいます。あなたも来なさい」

「王国軍の足止めはいかがされるので? 彼らの侵攻ペースは早い、おそらくギリギリのラインですよ」

「心配には及びません、ちゃんと手駒は用意してありますよ」


 ヒューモラスが指を鳴らす。

 その瞬間、通路の影から人型のそれが浮き上がり、徐々に形作っていったのだ。

 出来上がったのは人間、弓を装備した冒険者にも見えた。


「クロムくん、君の宿敵たる王国軍がかつての想い人と共にやってきています。是非あなたに足止めをお願いしたいのです」

「......」

「おぉわかってくれますか! では『霊集積装置』のある大広間にて迎え撃ってください。連中はすぐにでもここへやって来るでしょう」


 クロムと呼ばれた冒険者は、無言でその場から立ち去った。

 彼の纏う空気は異質そのものであり、セルンも若干だが困惑を隠せないでいた。


「あの、ヒューモラス様......。彼は一体?」

「クロムくんですか? 彼はとても不幸な方でしてねぇ。ある女性に恋をしたんですが結局実らず王国軍兵士に返り討ちにされた過去があるんです。不幸ですねぇ」


 不幸という単語が2回もでたが、それもヒューモラスという存在の特徴なので気にせずセルンは話を続ける。


「信頼は置けるのですね?」

「彼はただのマリオネットです、ご心配なく。それより急ぎましょう。連邦軍もいい加減もたないでしょう」

「はい、ヒューモラス様」


 2人はゆっくりと歩き出した。


「我々はもうすぐ本物の"天使"を見ます、それは美しく優雅で燦然さんぜんたる輝きを持った存在です。素晴らしい! 素晴らしい!!『母なる宮殿』から生まれる天使をなんとしても見届けなくてはなりません!」


 興奮気味のヒューモラスに続いて、セルン――――かつてエルドと同級生だった彼も口を開く。


「はい、必ずや魔導士の栄光のために! この身をもって捧げさせていただきます」


 2人の魔導士は早足で通路の奥――――闇の中へ消えていった。


セルン君については、第1話で登場しているので「誰だっけこいつ」となった方は是非1話目を読んでいただけると幸いです

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